腐敗を止める ?
認証業界の信頼性を保証する難しさについては数多くの記述があります。ここでは、インフォのAmy Holgareへのインタビューを元に、 Nigel Croftがこの業界を低迷から回復させるため、どういった新しい構想があるかを検討し、将来に向けた内部関係者の見方を示します。
私は帰化した国ブラジルの代表として、ISO/TC 176というISO 9000規格と指針書の作成を担当する委員会のメンバーを約12年間務めてきました。1999年頃に、我々は2000年度中の発行に向けてISO 9000の最新版を準備している際、この最新版には新たに導入されたコンセプトや概念が数多くあるということには気づいていました。ところが、それはサービス企業や小企業にとってはより使い勝手のよいものであったにも関わらず、技術委員会の内部では、規格そのものがその力を十分に発揮しておらず、場合によっては、適切に使用されていないため、ISO 9000の信頼性を脅かしているという不安が増大していたのです。
壁を壊す
私はTC 176からIAFへの働きかけを求められ、そこでISO 9000認証の信頼性への潜在的な脅威についての我々の考え方を示しました。ISO 9000認証はIAFが扱うほんの小さな部分ですが、我々はこれを重要議題に掲げ、ISO 9001がその約束を果たしているのかどうか、すなわち一貫した製品を提供するためにサプライヤーの能力について購入者に信頼性を与えているのかどうかについて、実際に質問をすることに決めました。
我々は何もかもがあまりにも区分され過ぎているという結論に至りました。非常に多くの機関があります。IAF、ISO/TC176、ISOの適合性評価に関するISO政策作成委員会(CASCO:適合性評価委員会)、消費者政策委員会(COPOLCO)、そしてその当時のIATCA(国際審査員・研修認証協会)です。我々はこれらのすべてをまとめて、ユーザーの観点からISO 9001認証を調査し始めなくてはなりませんでした。そこから我々が「心の避難所」と愛称をこめて呼ぶものが2002年6月のコロラド州のデンバーで生まれました。これはすべての異なる利害関係者と認証プロセスを改良するためのブレーンストーミング法とをひとつにまとめた、非常に非公式なワークショップ環境でした。
ISO 9000の諮問グループ
これによる会合から、我々はISO 9000の諮問グループを形成しました。これが担当するのは非公式の付託事項ですが、本質的にはシンクタンクです。 IAG は世界中のほとんどの利害関係者のなかの中高年者で構成されており、私とIAFの技術委員会の委員長であるRandy DoughertyがIAGの共同議長を務めています。TC176及びCASCOの規格作成者やIPCに代表される監査コミュニティに加え、認定団体、ABCB(個々の認定団体ではなく)のような認定団体協会、業界代表者など、ほとんどすべてのステークホルダーが積極的に参加しています。IRCAのディレクターであるSimon Feary も、このグループの積極的なメンバーの一人です。
ISO 9000諮問グループの最近の成果は、ISOの事務局長とIAFの上層部に提出された白書です。この白書は、グループの意見についての2つの項目を扱っています。ひとつ目は、 アウトプットの問題です。手順やプロセス、力量に関わらず、システムは行うべきことを実施し、一貫した適合製品を顧客に提供する組織の能力への信頼性をもたらしているか? ということです。ふたつ目は、認証機関は顧客の顧客について考える必要があるということです。認証機関は依頼者の顧客、すなわち購入の判断がその企業が認証されているという事実に基づいている購買者に非常に大きな責任を持っています。これらは認証機関の直接の顧客ではありませんが、最終的には支払いをする者であり、どのみち購買力をもつ最終的な認定者なのです。
IAFの会長は最近この白書に対応し、これらの問題は新しいIAFの戦略プランに組み込まれていますが、私はその実施の判断を保留しています。なぜなら、行わなくてはならない難しい判断がいくつかあると思われるからです。指針や戦略は決定されました-IAFのメンバーが、これを展開し実行できるほどしたたかで、総意が得られているかどうかを見るのは、関心をそそるところでしょう。
Auditing Practices Group(認定審査の最適実施要領検討グループ )および認定審査の最適実施要領検討グループ-実際のアドバイス
早い時期に非常に明確になったことのひとつは、ISO 9001の監査のためのアプローチには大きな矛盾があったということです。これに対応するため、2003年に我々はAuditing Practices Groupを作りました。このグループは経験豊富な専門家(ISO 19011の作成に密接に関与したことのある審査・監査員、認定者、規格作成者)で構成され、問題がしばしば生じるISO 9001版の一部について、ある程度の共通認識と、単一言語でのガイダンスを発表することを目指したものです。これらは要求事項でも推奨事項でもなく、非常に尊敬され、経験も豊富な業界内の専門家らによるグループからのアドバイスです。
とりわけ最近の展開は、審査・監査員が組織を監査するべき方法に対しては大い重視されているが、認定機関が認証機関を監査する方法に、多くの矛盾が存在しているという事実はほとんど認識されていないということが実感された結果としてもたらされました。そこで認定審査の最適実施要領検討グループが作られ、認定機関の審査・監査員にふさわしい実施要領についてのガイダンスの作成がついにスタートしたのです。最初の会議は去年の初めに開催されました。
問題は必ずしも十分なだけの人間がこのガイダンスのすべてを知っているわけではなく、したがってこれを用いる人も十分にはいないことであり、我々はこれを推進することを切に望んでいます。ガイダンスは存在しており、使用されるべき場所にあるのです。
フィードバックの促進
我々はまた、認証の有効性について使い勝手がよく明確なフィードバックプロセスがないことも発見しました。組織が認証され、顧客に製品を供給している場合、顧客はその製品について何を考えるでしょうか。ISO 9001では組織に対して顧客満足度の監視をするよう求めていますが、何か進行中の問題があり、顧客側が監視されるのを嫌がっている場合、こうした顧客がサプライヤーの認証機関とコミュニケーションをとるための使い勝手のよいメカニズムがありません。多くの顧客は、自分のサプライヤーに組織的な問題がある場合に、認証機関に通知する権利を有し、また実際その責任や義務があるということにすら、気がついていないのです。
IAGがまず始めたのは、一般の購買マネージャーを対象とし、潜在サプライヤーを信頼するためにはどこを調べるべきかということ-すなわちISO9000が保証できるもの、できないものは何か、そのサプライヤーが確認システムを持っていることを確信する方法は何か、そして、これが非常に重要ですが、事態が悪化する場合にはどうすべきか、といったことを説明する文書の準備でした。このガイダンスはISOの公式サイトに掲載されています。 (http://www.iso.org/iso/en/iso9000-14000/index.html )
米国のQSU出版も「whosregistered.com」というサイトを始めて、フィードバックそのものの不足への取り組みを試みています。このウェブサイトは、認証された組織の国際ディレクトリで、これにはリンクがあり、そうした組織のそれぞれの業績について顧客から個々のフィードバックが得られるようになっています。フィードバックは匿名にすることはできますが、当該の認証機関へ自動的に転送されます。
IS0 17021 のパート1とパート2
我々が長い間待っていた大きな構想のひとつがISO 17021のパート1です。これはISO 9000認証の信頼性についての多くの問題に取り組むことを目指してきたもので、認証機関によって健全に適用され、厳格に(しかし公平に)認定機関によって実施されるなら、大きく一歩前へ踏み出したことになります。
とはいえ、ISOの指針62、66、ISOの17021のパート1を見ると-ISO 19011、すなわち第一者審査・監査員、第二者審査・監査員および第三者審査・監査員にとってのISO 9001に関する指針であるが、あくまで指針であって要求事項ではないISO 19011が参照されているという点で-審査・監査員の力量に関する要求事項は極めてあいまいなものです。このことは、これらの指針が要求事項でなく、ただの指針であるという主張から、これらの指針を採用しないことを選ぶ多くの認証機関がいくつかあることを意味します。
このように第三者審査・監査員の力量に関する要求事項についてはある認識がありました。最終的に力量の問題を取り扱うことになるISO 17021のパート2策定の担当はISO のCASCOということになりました。基本的には、これには3つの構成要素があります。ひとつは包括的に優秀な審査・監査員を雇うことです。しかしながら、それでは十分ではありません。ISO 17021のパート2のふたつ目の部分は、これら審査・監査員の上手な用い方を扱っており、適切な監査にふさわしい適切な人間を選択して、優秀な審査・監査チームとして共に活動できるようになっています。この3つ目の部分は、この優秀な監査チームに優秀な監査を行うための必要な資源を与えることです。この点においての主な資源は時間です。つまり徹底した監査を行うのに使う時間、十分な準備し、正しく報告し、監査の間に一息つくための時間です。APGの指針書の一部を読むための時間をとってもよいのです!
もちろん、マイナス面は費用がかかることです。では、誰がこの費用を支払うことになるのでしょうか。これは認証機関の間接費なのか、それとも依頼者がその請求を支払うのでしょうか。もしそうなら、依頼者は本当にそれを支払いたいと思っているでしょうか。これは簡単には解決できない問題ですが、しかし非常に重要な問題なのです。迅速に解決できなければ、我々は数年前に自動車業界で起きた状況に直面することになるかもしれません。こうなると、顧客は(IATFに代表されるケース)問題に自分で対処する必要があると感じてしまいます。
将来
信頼性の腐敗に対する戦いを続けるために、我々は正しいことを行うための道徳的勇気が必要です。それは組織、コンサルタント、認証機関から認定団体まで、システム全体にわたるものです。
無責任な組織や認証機関は生き残ることができません。なぜなら少数派だからです。多くの非常に優秀な組織があります。これらの組織には卓越した品質管理システムがあり、立派な仕事をする優秀で倫理的にかなった認証機関によって評価されています。我々は少数派が我々すべてに害を与えていることについて業界内で怒りの感覚を持つ必要があります。文句やうわさ話ではなく、団結し行動を起こす必要があります。認証及び認定機関との明確で透明性のあるコミュニケーション経路や、購入者の声を聞くことができるよう、委員会などに購入者を招聘するなど、それを実行することができるためのメカニズムが整っている必要があります。この圧力によって、最終的にはIAFの認定機関のメンバーに力量の足りない少数派へより強い態度をとり、ゲームから退場してもらうよう、要求することができるのです。
著者について
Nigel Croftは英国とブラジルの二重国籍者で1994年からISO のTC176委員会のブラジル代表を務めています。IRCA登録の主任審査員を15年以上にわたって務めIAGの共同議長であり、審査実施グループのメンバーでもあります。Auditing Practices Groupについて詳しくは、こちらをクリックしてください。