業界に特化した規格
業界に特化した規格は本当に必要でしょうか?監査の第一人者、Dedi Dharmadasa氏の、このような規格が監査をより容易にする、との主張に対し、医薬業界の規格の専門家であるAshley McCraight氏は、業界特有の規格が産業の進歩を妨げている、と述べています。ゼネラル・モーターズ社のJoe Bransky氏は、業界向けの規格はISO 9000が始めたことに決着をつけるものである、と信じています。また、フォーラムのディレクターであるRichard Morrow 氏が、このような分野における審査員が実際はどのように感じているかを調査しています。
ISO 9001が発行されたとき、すべての業種に適用される規格として歓迎されました。しかし、特別な原材料、複雑なプロセス、または人間が消費する製品を製造している業界にとってはどうでしょうか?ISO 9001の包括的な仕様は、医薬品業界や食品業界のようなすき間市場を効果的に取り扱うような品質マネジメントシステム(QMS)からは程遠いものなのです。
食品のISO 22000、医薬品のPS 9000、自動車産業のISO/TS 16949及び電気通信のTL 9000規格は、これらの業界で発生する、品質マネジメントに関する特別な問題を適切に取り扱うために、ISO 9001とのギャップを埋めるものです。

食品
ISO 22000規格は、次のような要素を含んでいます:
- 相互のコミュニケーション
- システムマネジメント
- 前提条件プログラム
- ハザード分析及び重要管理点(HACCP)の原理
規格は、調理器具の供給者や食品包装業者はもちろんのこと、漁業や牧畜業などの一次生産者から、レストラン等の最終消費者など、食品を取り扱う全ての組織に適用されます。
教育訓練及び検査機関であるSGS Lanka 社のDedi Dharmadasa氏は次のように述べています:「ISO 9001 はISO 22000を補足するものです。食品業界は、今や品質と食品安全を取り扱うための統合マネジメントシステムを構築するための努力をしなければならないところまで来ています。従って、第三者認証機関には、2つのシステムを統合した、統合マネジメントシステムの審査依頼が来るようになるでしょう。食品業界は、ISO 22000への取り組みに向けて大きく移行しています。これは、その他の様々な食品規格に基づいた二者監査の多くが、将来的に行われなくなっていくであろうことを意味しています。HACCP はISO 22000 規格の核となるものであり、小売業者や規制当局は、企業に対し、ISO 22000への認証を取得するよう要求するようになるでしょう。」
医薬品
PS 9000 は、接触及び印刷済み包材に関する2つの医薬品サプライヤーのための行動規範に基づいており、またこれらの行動規範になり代わって、1990年及び1995年に初めて発行されました。
行動指針の開発プロジェクトのリーダーであるAshley McCraight氏は、次のように述べています:「BS 5750 が発行される前は、供給者の品質マネジメントの暗黒時代が長い間続いていました。すべてを医薬品業界の草分け的な専門家数名に頼りきっており、彼らが組織の供給者を訪問し、信頼できるかどうかを評価していたのです。結果的に、専門家たちは個別に独自の規格を開発したのですが、それらの内容は互いに異なっていることが多く、供給者を混乱させていました。」
「BS 5750 の登場は、救世主のようなものでした。この規格は、品質システムをマネジメントする際にも、審査する際にも明確な基本となる枠組みを示してくれたからです。しかし、混乱はまだ続きました。BS 5750の内容は十分ではなく、このことが何が行われるべきなのかを決定するための機関、英国医薬品品質グループ(www.pqg.org)発足のきっかけとなりました。10年前、英国医薬品品質グループはISO 9002の枠組みを拡大し、基本的な薬品の製造規範(GMP)を発行しました。この行動規範から、印刷済み包材、接触包材、そして原材料という3つの業種に対する規範が策定されました。」
しかし、成功した規範もあれば、そうでないものもありました。印刷済み包材の規範は、印刷業界に急速に採用され、間もなく英国における事実上の規格となりました。残りの2つの規範は、あまり広くは採用されませんでした。しかし、McCraight 氏は行動規範の将来性に関して期待を抱いており、次のように述べています:「PQGは非常に生産的なこれらの規格を再規定するために、供給者にこの活動に加わるように呼びかけています。あるチームは「医薬品包装業のためのISO 9004 の適用」を策定したところで、これに対するEU全体からのフィードバックは大変積極的なものです。」

自動車産業
ISO/TS 16949は国際自動車特別委員会(IATF) www.smmt.co.uk/home.cfm によって、サプライチェーン及び認証プロセスの発展を目的として開発されました。この規格がいかに業界に関連しているかは、ほとんど全ての大手自動車メーカーが、取引条件としてISO/TS 16949への認証を要求していることからも明らかです。
この規格は米国のUS QS 9000やドイツのVDA6.1、フランスのEAQF、そしてイタリアのASQのような既存の自動車業界の品質システム規格になり代わるものです。TS 16949は多国籍企業や小規模業者を含む、すべての自動車関連の供給業者に適用されます。しかし、製造またはサービス用の部品が製造されているサイトのみがこの規格に従うことを要求されています。本来、この規格は全ての自動車関連製品の設計開発、製造、設置及びサービスについて規定しているのですが。
IATF は、直接自らの公認認定機関の監督を行うことを決定しました。このアプローチは、監督事務所はIATFに直接報告を行う義務を負っていることを意味しています。加えて、IATFの監督事務所は審査への立会い、審査員への資格付与、そしてウェブサイトも含めた、規格及び認定スキームに関する重要情報の管理を行っています。IATFの監督事務所では、多数の認定活動を監視するための大規模なデータベースの維持も行われています。
ゼネラル・モーターズ社のIATF への代表であるJoe Bransky氏は、ISO 9001 は素晴らしい「基本規格」であるが、さらなる専門性を必要とする業界もある、と考えています。Bransky氏は、「自動車産業、航空宇宙及び電気通信産業は特にグローバルな業種であり、大規模なサプライチェーンを取り扱っています。これらの業界は、材料、要素、相互関係、最終製品及び出来高など、非常に複雑な項目を取り扱っているのです。他の業界でも、多くの人々がその業界に特化したアプローチが必要であると考えているのを知っています。」と述べています。
問題はISO 9001規格そのものにあるのではなく、むしろ認証の信頼性に関連しています。Bransky氏は次のように指摘しています:「認証の妥当性に関しては、本当に問題があると思います。この問題は、様々な形で明らかになっています。例えば、形だけの認証を取得する組織、審査をせずに顧客と取引をする審査員、審査を実施する際、または認証の決定をする際の行動倫理に欠ける一部の審査員または認証機関、そしてあらゆる人々からの信頼性に欠ける認定機関などです。」
Bransky 氏は続けます:「究極的には、効果的な業界規格には2つの鍵となる要素があるように思います。まず、業界規格には厳格さが必要です。要求事項は業界のニーズを適切に満たすものでなければなりません。このためには、業界または部門のメンバーによる協調的で合意されたアプローチが必要です。2つ目は、同じように重要なのですが、業界や部門が満足できるような、有意義な公認認証機関の監督を含めた、信頼できる認証スキームが必要だということです。」

電気通信
TL 9000は、電気通信用製品及びサービスの設計、開発、製造、引渡し、設置及びメンテナンスのためのQMS規格です。通信サプライヤーの品質向上のためのフォーラム(QuEST)www.questforum.org/index.htmがこの規格を開発し、通信業界における改善された品質を1998年の発足以来、推し進めています。QuEST のTL 9000運営及びフォーラムの情報システムのディレクターであるRichard Morrow氏は、次のように述べています:「QuEST フォーラムでは、ISO 9001 は全ての業界の全ての組織に適用できる要求事項を含んでいるが、業界に特化した規格により、業界独特の要求事項を追加することができる、と皆の意見が一致しています。TL 9000の場合、ISO 9001に加え、通信業界に特化した製品のパフォーマンス測定のための90の要求事項が規定されています。」
Morrow氏は、全ての組織に適用されるためには、ISO 9001は一般的な内容にならざるを得ないことを認めています。また、Morrow氏は次のように説明しています:「ISO 9001はベースラインとなるシステムで、業界に特化した規格はこれを基本として作られています。ISO 9001は、忠実に実施されるならば効果的ですが、これもある程度までしか無理でしょう。ISO 9001 とその他の適合性検証システムに基づく第三者認証が抱える最も大きな問題は、審査そのものの有効性と一貫性を維持することにあります。これは業界に特化した規格が追加の要求事項の策定及び監督を実施していることとはまた別の領域の話ですが。」
明らかに、システムを実施する側、審査する側の両方にとって本当に効果的なシステムには、特定のニーズを対象とすること、そしてこのニーズにより良く対処するための方法を発展させることが必要です。ISO 9000の適用範囲を強化することで、品質規格全体の構成をさらに良くするために、業界に特化した規格はこの問題について検討した上で構築されています。
記事で登場した組織や企業に関する詳細は、以下の各ウェブサイトをご参照ください。
SGS Lanka:www.lk.sgs.com
医薬品品質グループ:www.pqg.org
IATF:www.smmt.co.uk/home.cfm
QuEST:www.questforum.org/index.htm