品質とイノベーションのバランスを保つ
「品質」という言葉のように、イノベーションも多くの場合、どういう見地からアプローチするか、またどの意見を受け入れるかによって理解(時には誤解!)に差異が生じてきます。Anil Kumar氏は、このことがイノベーションの審査に関する議論において矛盾や意見の相違の原因となっているかもしれないと主張しています。

一般的に、品質の概念は従来の「顧客の成功と歓喜」への一致と準拠という立場から発展しているということには皆が同意を示します。そう、明示されたニーズ及び既知のニーズや期待を満たすことは組織の成功にとって不可欠です。しかし、そこで終わりではありません。従来の資源から知識資産や知識経済へ移行するにつれて、持続可能なビジネス・エクセレンスを受け入れ、検査中心の品質審査から発想の品質マネジメントへと移行する必要があるのです。素早く市場に進出することが戦略の最重要課題であるならば、どのような場合でも、「最初から、そしていつも正しく行うのだ」と繰り返し言い続けることができるでしょうか?我々が用いているほとんどすべての方針や手順が過去の問題や制約を解決するために策定されたものであり、目的を達成した後でも同じ方法を続ける傾向にあるため、コンプライアンスの問題が生じる原因となっているというのが真実ではないのでしょうか。
イノベーションとは?
欧州品質賞(EFQM)の枠組みでは、イノベーションを「新しい製品、サービス、プロセス、システム及び社会的な相互関係への実践的な思考の変換」と簡潔に表現しています。ビジネスや経済において、イノベーションは価値を創造し、発展を促すものです。イノベーションは、生活に知識をもたらすものですが、技術分野だけでなく、病院や教育施設、ソーシャルケアといった人間の活動のあらゆる範囲において起こるべきです。イノベーションを持続可能にするには、孤立した一部の秀逸性の範囲を超え、価値連鎖の枠を超えてイノベーションの成功を繰り返す必要があるのです。さらに、イノベーションは創造とは異なるということを理解する必要があります。創造の目的は新しい発想を思い付くことですが、イノベーションの目的は実践的な革新を遂げることです。
ブレークスルー・マネジメント
ブレークスルーマネジメントにおける品質の働きはすばらしいものがあります。第一に、方針/手順を見直し、イノベーションに活用しやすくすることができます。また、これは評価や測定についても同じです。これにより、組織の行動を決定することで、イノベーションを促進する環境が作られるからです。組織はその価値を重視するあまり柔軟性をなくし、共通のビジョンに焦点を置くようになるかもしれませんが、その他すべてのものは挑戦と変化を受け入れるでしょう。シックスシグマの方法論である定義-測定‐分析‐設計‐検証(DMADV)とTRIZ(発明問題解決の理論)は、どちらもイノベーションの概念と品質を両立させるものです。
審査員にとっても評価員にとっても、彼らの審査によって企業のイノベーションの成長が抑制され、社員が意欲をなくし、創造力のある環境が停滞する結果とならないように、ブレークスルーイノベーションのプロセスを効果的に学ぶことが重要です。書類やプロセスを審査員にわかりやすいものにしたいという衝動は捨てて、むしろユーザーやイノベーターにわかりやすく、すべての社員が利用しやすいものにする必要があります。
総合的な学習
品質とイノベーションの両立への最終兵器は、品質ツールに精通することではなく、総合的に学習することです。品質の専門家たちは、職を失いたくなければ、今後数年間で単なる監視役や解説者から、真の促進役やリスク軽減者となる必要があります。品質の専門家にとって、最大の功績はその役割と責任に革新的な変化を起こすことです。これにより、クライアントに付加価値を与えることもできるのです。話し手、仲介者や世話役になることが重要な役割です。願わくば、品質に対する融通の利かない考え方が定着したこの時代が早く終ってほしいものです。必要なのは、活動的で、21世紀の知識経済の需要に対応できる臨機応変な審査員です。
ブレークスルーマネジメントやイノベーションの時代であっても品質マネジメントが有意味で、不可欠なものであるということは明らかです。しかし、核となる原則を維持しつつ、概念を修正し、新しいツールや技術を導入する一方で、それ自体を革新する必要があります。イノベーションなき品質は古く、品質なきイノベーションは持続しません。
著者について
Anil Kumar氏はBHEL(インド、ラニペット)のビジネスエクセレンスの副ゼネラルマネージャーです。同氏は品質において24年以上に及ぶ専門的経験を持ち、BHELラニペットの品質及び環境マネジメントシステムコーディネーターでもあります。
Kumar氏は認定品質マネージャー/ASQの組織的エクセレンス及びシックスrシグマのブラックベルトでもあります。また、同氏はRamakrishna Bajaj National Quality Awardの審査委員でもあります。彼は自身の品質改善における模範的な活動により、2006年にQimpro Silver Standardを受賞しました。また、彼はQualityFirstのe-マガジンの中心的なチームメンバーでもあります。
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