食品安全はグローバル化するか?

食品安全規格が世界的に注目を浴びるようになり、どの規格が最も適切なのか、選択が難しくなりつつあります。Ian Dunlop氏が発行済みの規格について分析しています。

ここ10年で、消費者にとっての食品安全の重要性はますます増加しています。大腸菌やBSEによる死亡といった悲しい出来事が、安全面に問題のある食品の危険性を際立たせています。安全な食品という問題は、地球上のすべての人々に関係のある、重要なことです。

世界保健機構は、世界中で発生している食品由来の病気の深刻なマイナス影響について報告しています。「食品及び水由来の下痢は、開発途上国において病気や死の原因となり、毎年1800万人もの人々が死亡している。そのうちほとんどが子供である」というものです。

世界中における食品の製造、加工、流通及び調理の増加により、より効果的な食品安全対策への需要が高まっています。これは、サプライチーン全体にわたる組織に対する要求事項を取り扱った数多くの規格及び規制が開発され、改訂されていることからも明らかです。

共通の要素

食品安全規格は、通常、以下のような要素の1つまたは2つ以上で構成されています:

  • 規定された衛生活動(前提条件プログラム)
  • 重要リスク管理スキーム(HACCPの原則)
  • 体系的なマネジメント手順(マネジメントシステム)

次々と食品安全規格が発行されていますが、規格の内容は上記のような3つの要素に集中しているという注目すべき傾向があります。英国小売業協会(British Retail Consortium、BRC)、国際食品規格(the International Food Standard、IFS)、ユーレップギャップ(Eurepgap、現グローバルギャップ(Globalgap))、安全で品質の高い食品のためのプログラム(the Safe Quality Food Programme、SQF)、RvA(オランダ)の危害分析及び重要管理点(HACCP)、国際食品安全イニシアチブ(the Global Food Safety Initiative、GFSI)、JQA MR005(日本)、ISO 22000のような規格や指針文書、そしてその他の各国に特化した規格もこのような傾向を反映して発行されています。

このような内容の集中は、世界中の食品安全に適合する統一規格出現の可能性を示しているのでしょうか。この疑問について考えるために、共通の要素をより詳細に考察する必要があります。

前提条件プログラム

食品安全への主な危害は、自然界の微生物的、物理的及び化学的なものに由来します。前提条件プログラム(PRP)を適用し、全ての段階において衛生的に製造、加工を行い、環境をコントロールすることによって関連するリスクを除去、または最小化することが重要です。

多くの食品安全規格及び規制要求事項では、特に必要なPRPの種類及びレベルが規定されています。ISO 22000では、食品セクターに関連する60以上の実践規範及び指針文書がリストアップされています。食品小売業向けのTescoのような規格の中には、食品安全に影響を及ぼす倫理法令遵守に関する要求事項のような問題が追加されているものもあります。

多くの前提条件が適正農業規範(Good Agricultural Practice、GAP)、適正衛生規範(Good Hygiene Practice、GHP)、適正製造規範(Good Manufacturing Practice、GMP)及び適正流通規範(Good Distribution Practice、GDP)のような「適正規範」指針に関連するフードチェーン全体にわたって適用されています。また、BRCも食品包装に関連する規格を発行しており、この規格の内容の一部は食品安全問題を取り扱っています。

HACCPの原則

HACCPシステムは米国の宇宙プログラム、NASAの要求事項に適合するために考案され、現在は食品安全に最も危害となるリスクを運営管理するための基本的なアプローチとして世界中に認識されています。7つの必須原則を基本とし、HACCPスキームは危害特定から必要な管理手段が首尾よく実施されているかの検証に至るまで、危害リスクマネジメント計画のための方策を規定しています。

HACCPが特定の食品セクターの必須要求事項となっている国もあります。たとえば、米国における食肉、魚介類及びジュース類の製造には、HACCPスキームを組み込まなければならないという規則が食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)及び米国農務省によってそれぞれ規定されています。ほとんどの食品安全規格は、少なくともより深刻な食品安全リスクに対する保証を提供するために必要な範囲においてHACCPを採用しています。

マネジメントシステム

ここ数十年で、正式なマネジメントシステムを採用する組織が増加しています。特に、ISO 9000シリーズが発行されて以来、この傾向が続いています。多くの食品セクターの組織がISO 15161「ISO 9001:2000の飲食産業への適用に関する指針」を用いたISO 9001の実施を通じてマネジメントシステムを導入しています。ISO 22000の発行により、先に言及された3つの要素のすべてを統合した、世界標準の食品安全への包括的なリスクマネジメントへのアプローチが導入されました。

比較表

下図は、規格間で上記の3要素のうち、どの要素が重複しているかを示したものです。各規格がカバーしている要素の内容にもある程度の差異はありますが、関連する要素について適切な内容が伴っているのならば、肯定的な結果が得られていると言えます。顧客主義の立場から、より詳細に要求事項を規定している規格もあれば、法規制順守に最低限必要な原則を規定している規格もあります。

規格

主な地域

食品セクター

前提条件

HACCP

マネジメントシステム

BRC食品安全世界規格

英国

二次生産者/プロセス (p/p)

SQF 1000

英国で開発され、米国に進出

一次生産者

○(レベル1、2、3)

○(レベル2、3)

○(レベル3)

SQF 2000

米国

二次 p/p

○(レベル1、 2、3)

○(レベル2、3)

○(レベル3)

IFS (基礎レベル)

欧州大陸

二次 p/p

×

×

IFS (高次レベル)

欧州大陸

二次 p/p

EuropGAP (現GlobalGAP)

欧州大陸

一次生産者

RvA オランダHACCP

世界的

全フードチェーン

コーデックス HACCP

世界的

主に二次p/p

×

×

GFSI

世界的

二次p/p

ISO 22000

世界的

全フードチェーン

ISO 9001 (+ ISO 15161)

世界的

全フードチェーン

 

結論

フードサプライチェーンのグローバル化により、食品規格に統一傾向が生じています。これはGFSIなどの会員スキームを通じた様々な食品規格の相互承認の結果がプラスに働いたものです。この傾向は、二次生産者及び加工者の間でさらに発展していますが、一次生産者もこれに追随しています。最近行われたBRCの変更のように、一つの規格に複数レベルの認証を設けることを避ける傾向は、IFS及びSQF、またSQFとGlobalGAPの協調合意のように、規格間の統一をさらに促進することになるでしょう。

全ての規格を補完した「万能の」食品安全規格の登場を期待するのは未だ早すぎます。統一の傾向は将来も続くでしょう。食品セクターの大部分に適用可能な共通規格が出現する可能性があります。ISO 22000はそのための足がかりとなりますが、小売業者を含む多くの産業グループが食品安全要求事項を規定した、より規範的なアプローチを好む傾向にあります。ステークホルダー及び市場の力が引き続き規格の統一を求め、人類により安全な食品を提供できるような共通規格が生まれるのであれば、それは目指す価値のある目標であると言えるでしょう。

著者について

Ian Dunlop氏は英国及び欧州において多くの第二者監査及び第三者審査を実施しており、1986年にIRCAの主任審査員となりました。英国食品安全法(1990)の発行によりコンサルタントおよびトレーナーとしての機会を得、多くの食品企業及び規制当局を支援してきました。現在、Dunlop氏はIRCAで食品安全マネジメントシステム審査員登録及びトレーニングコースの認定業務に携わっています。

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