審査における解決志向アプローチ

Marlon Heilbrunn氏が、解決志向(solutions-focus、以下SF)アプローチが品質にどのように価値を付加できるか、そして審査をより効果的で効率の良いものにできるのかを説明します。

SFのはじまり

1980年代、Steve de Shazer氏とInsoo Kim Berg氏が率いる米国のセラピストチームが、解決志向短期セラピー(solution-focused brief therapy、以下SFBT)を開発しました。SFBTは、後に解決志向アプローチとして発展し、組織が採用したSFの初期の姿です。

SFBTアプローチは、以下の2つの鍵となる原則が基礎になっています。

  • 何が悪いのかではなく、何が求めされているのかに焦点を当てる-問題のあるところには、必ず全く問題なし、または最小限に抑えられているといった例外があります。
  • できるだけ最短で結果に到達するために、セラピストとクライアントはプロセスのできるだけ早い時点で望ましい結果を構築し、共有することが重要です。

何が求められているかに焦点をあてるというSFBTの原則、そしてその簡潔さ、単純さは組織の戦略的思考に関与している人々にとっては興味深いものです。戦略プランナーたちは、考え方の中心となっている戦略とアクションプラン、そしてその結果として引き起こされる成果に利点を見出しています。さらに、SFBTの結果として立てられた計画は分かりやすく、すぐに結果を達成できるものなのです。

SFBTの主な理念は次のようなものです。

  1. 壊れていないものは修復してはいけない
  2. 機能しているものはさらに機能させよ
  3. 機能していないならば、他の方法を試みよ
  4. 小さな一歩が大きな変化につながる
  5. 解決法が直接問題に関係しているとは限らない
  6. 解決法の開発のための言語は、問題を説明するための言語とは異なる
  7. 問題が起きているのではない、有用な例外があるだけだ
  8. 未来は作るものであり、能動的に変えられるものだ

これらの理念はすべて、組織の変革や開発に適用できるものです。

SF審査の矛盾

SFはその名と性質の通り、何が悪いのかではなく、何が求められているのかに焦点をあてたものです。一方、品質マネジメントシステム(QMS)では適合性と有効性を評価するための重要なツールとして審査を利用しています。審査は本来、不適合の検出、つまり「問題」に焦点をあてるものです。また、簡潔さがSFの本質である一方、QMSは極めて複雑なものであることが多いのです。

この矛盾から、果たしてSFと品質を「結合」させることができるのかという疑問が生じます。2つの対立する考え方を結合すれば、QMSの有効性と効率を最大限まで引き出すことが可能となるでしょうか?

SFは課題を克服し、品質に関する問題への別のアプローチを引き出すための品質ツールまたは方法論を提供します。SFに基づく品質は、できる限り効果的、効率的な品質改善を可能にします。その方向性は活動や結果へと向かい、必要とされる場合は、小さなステップが有用な方向に向かうことをも促進します。

SFに基づく品質モデル

SFに基づく品質モデルは、審査員の技能を増強するために、SFの考え方を品質や審査に導入するという新しい概念です。QUALITYの頭文字で、このモデルの鍵となる原則のうちのいくつかを説明してみました。

Q(Questions – 質問):適合性の問題を超えて探求することによって価値を付加するために、SFに基づいた質問を利用する。

U(Use all possible resources –可能なすべての資源を利用する):SFに基づく審査では、効果および効率を最大限に引き出すため、有効なものは何でも(フリースタイルの審査)利用する。

A(Advice (if required) and action orientation – アドバイス(必要な場合)および活動の方向付け)-多くの審査員が「コンサルティング行為」は禁止、審査は不適合の検出活動に限定されるべき、と指導されています。しかし、審査員は審査にその豊富な経験と知識(ベストプラクティスやベンチマーキングなどの)を持ち込むべきです。この「ノウハウ」は、真に価値を付加するためには、可能な時と場合には利用すべきです。

L(Lateral thinking –水平的な思考)‐枠にとらわれない考え方により、組織は確実に審査から最大限の利益を得ることができます。

I(Interactional perspective – 相互作用的視点)‐SFに基づいた審査では、人々やシステムが相互に作用していると考えます。

T(Trust and respect – 信頼と敬意)‐SFに基づく審査では、オープンで正直な審査員と被審査者の関係が審査の価値を最適化するという考え方が重要です。

Yは、解決に不可欠なのは何か(WHY)、と問いかけることです。多くの審査では、不適合が特定された際には根本原因分析が求められます。SFに基づいた審査を行う審査員ならば、それがその解決策を実行するための最も効果的な方法なのかどうかを問い、成功に向けた根本原因を分析するでしょう。

現在、組織と共に働いているSFの専門家は、創造的で活動重視の方針を推進しています。何か別のことをやってみたいという意志のある組織であっても、正しい方向に向かうために細かい段階を踏んでいきたいという気風のある組織であっても、強調されるのは結果志向です。このような原則が審査業務に移行されるならば、SFに基づいた品質審査員が誕生し、この機知に富んだ考え方が審査に関与するすべての人々にとっての価値を最大化することを望むものです。

著者について

Marlon Heilbrunn氏は、1998年から航空宇宙業界に従事し、内部監査員および主任審査員としてのトレーニングを受けてきました。同氏は現在、主に航空宇宙向けに使用されるガスタービンエンジン用の精密部品を製造している、ある精密技術企業の品質マネジメントシステムに参画しています。 この記事は、近日発行予定の著書、‘Solutions Focus Brief Quality’(仮題)を基にしています。さらに詳しく知りたい方は、info@sfwork.comまでご連絡ください。

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