プロジェクト審査における

ベストプラクティス

 

Ron Basu氏とDan Keeling氏が、海峡トンネル「ハイスピード1」プロジェクトにおける、プロジェクト審査への新しいアプローチを詳しく調査し、新たなプロジェクト審査にどのように応用できるかを考察しています。

プロジェクト審査や定期検査により、組織はプロジェクトの実行にあたっての問題や懸念、課題を明らかにすることができます。プロジェクトの運営管理状況と管理プロセスを徹底的に調査することにより、うまくいっていることや改善が必要な点を知ることができるのです。

海峡トンネル「ハイスピード1」における審査および自己評価プロセスは、すべての重要なステークホルダーが関与するプロジェクト審査への新鮮なアプローチを生み出しました。この新アプローチがプロジェクト成功やEFQM(欧州品質モジュール基金)アワードの達成に寄与する要素となったかどうかについては議論の余地がありますが。

ハイスピード1

1996年、ロンドン・アンド・コンチネンタル鉄道(LCR)は、後にハイスピード1(HS1)として知られることになる海峡トンネルへとの結合線路の建設権を得ました。HS1は、英国初の高速鉄道で、ロンドンと海峡トンネルを結ぶ100kmを繋いでいます。プロジェクトには9年を要し、ピーク時には1,000名以上の作業員が雇われました。2007年11月、この58億ポンドのプロジェクトは予算内、納期内での開業にこぎつけました。

ユニオン鉄道がこのプロジェクトのクライアントで、Rail Link Engineering社(RLE)がプロジェクトマネージャとして指名されました。初期段階から、このプロジェクトに関与する人々は皆、プロセス運営に不可欠な品質を維持することを確実にしたいと考えていました。既存のベストプラクティスを基礎として立案されたプロジェクトに特有の品質上の戦略が、建設権取得から3ヶ月以内に提出されました。この戦略には4つの鍵となる領域があり、そのうちの1つは品質審査と自己評価でした。

様々な審査

HS1プロジェクトのマネジメントシステム審査を実施する際には、3タイプの審査プロセスが採用されました。どのタイプも、品質、環境、安全衛生の要素を含んでいます。

プリンシパル審査

ハイレベルなプロセスが十分に運営されていることを確実にするための調査。審査員は政府のプロジェクト責任者およびユニオン鉄道から選出されました。

レベル1審査

RLEの上級経営層および主要な契約業者に関連するマネジメントシステムの審査。審査員はRLE、ユニオン鉄道および契約業者の関連組織から選出されました。ユニオン鉄道およびRLEの内部監査員により、主に設計および調達プロセスを調査するための審査が行われました。

レベル2審査

契約業者や関連するRLEの中級経営層が関与する、マネジメント管理システムの審査。審査員は契約業者とRLEから選出されました。審査はすべての階層におけるマネジメントシステムが高品質を提供しているかどうかに主眼を置いて調査するよう設計されました。

審査プロセス

どのタイプの審査にも、3つのステージによる具体的なプロセスチャートに基づいた、明確なプロセスがあります。

  • プログラミングおよび計画
  • 実行
  • フォローアップおよび完了

 

図1:3つの審査タイプにおける重要な段階を簡略に表したフローダイアグラム

審査ではインタビュー、データの調査および活動の観察が行われました。審査員は最終会議前の打ち合わせに参加し、審査所見のレビューと合意を行い、是正処置要求(CAR)とグッドプラクティスへの観察所見を準備しました。

利点

HS1の審査プロセスは、プロジェクトチーム(RLE)、クライアント(ユニオン鉄道)、主要な契約業者および政府によって任命された責任者が関与することによって土台から強化されました。結果として、審査所見はRLEとユニオン鉄道の安全報告書にも書き加えられることとなりました。是正処置要求書で挙げられた問題が解決するよう、常に注意が払われました。また、重要な品質上の結果については、RLEとユニオン鉄道のディレクターが出席する「品質エクセレンス会議」にて議論が行われました。

審査レベルとチェックリストについては、HS1プロジェクトへの特定の要求事項を反映し、継続的改善につながるような結果を得られるように設定されました。是正処置要求書のフォーマットは、設計やプロセスを改善するための是正処置および予防処置を特定する際に非常に有効に機能し、プロジェクト委員会の注目を集めました。

ベストプラクティス

プロジェクト審査の基本理念は、複雑なプロジェクトへの特定の要求事項を満たすために、クライアントとプロジェクトマネージャ双方のマネジメントシステムを監視、評価する目的で、HS1プロジェクト用に特別に設定されたものです。今後、プロジェクト審査に取り組みたいと考えている組織は、この新アプローチから多くを学ぶことができるでしょう。また、以下のベストプラクティスを考慮すると良いでしょう。

  • マネジメントシステムを審査する必要があるかどうかを評価する
  • プロジェクトチーム、主要な契約業者および下請負業者といった適切なレベルでの審査プロセスを設計する
  • プロセスチャート、チェックリスト、審査概要、審査通知および審査用フォーマットなどを用いて、審査プロセスを詳細に設計、文書化する
  • 審査プロセスに重要なステークホルダーを関与させることにより、供給者のパートナーショップを促進し、業者がプロジェクトの品質や規格への適合性の監視、改善に積極的に関与するようになる
  • 審査プロセスをプロジェクト実行戦略、実施報告およびEFQMに基づいた自己評価に関連付ける

効果的なプロジェクト審査を行うことによって、どのようなプロジェクトも大成功を収めることができます。また、効果的なプロジェクト審査は最善の方法で実施されるべきです。質の高い慣行を行うことに専心し、HS1特有のニーズに合わせたプロジェクト審査や自己評価を行うことによって、プロジェクトチームは効果的なプロジェクト審査の実施を達成するために、すべての階層において最大限の効果を引き出すことを確実にしていたのです。

 

著者について

Ron Basu氏は、Performance Excellenceのディレクターであり、Henley Business Schoolの上級客員研究員でもあります。また、ESC Lilleの客員教授でもあります。

Dan Keeling氏は、品質マネジメントに携わる以前に土木技師としての訓練を受けています。市の建設プロジェクトの際は、海峡トンネルの作業に5年間を費やしました。その後HS1の品質マネジメント機能を率先しています。

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