ISO 10018: 人的要因
ISO 9001の重要な要素である「人々」に焦点を当て、成功するマネジメントシステムにおける人的要素を説明したISO 10018が開発されています。氏が、なぜこの規格の背景にある理念が非常に重要なのかを説明しています。
審査員の大多数が、マネジメントシステムを審査する際に人々に関する側面を考慮する必要があることを認識しています。システムとは、単に従うべきプロセスや手順を説明した文書ではなく、プロセスが効果的に実施され、効率的に運用されている証拠を評価するための記録でもありません。システムとは、慣行の集大成であり、トップから最下層に至るまですべての人々の価値観なのです。
現在開発中であるISO 10018は、品質マネジメントシステムにおける人々の参画と力量について、切望されていたガイダンスを与えることになるでしょう。ISO 9000シリーズおよびその他の補助規格の発行責任を担う専門委員会、ISO/TC 176が本規格の開発を担当していますが、理念は一般的なマネジメントシステムに共通して適用できるものです。
規格がカバーする領域は?
ISO 10018の核心は、以下の4領域です。
- 8つの品質マネジメント原則
- 品質に影響を与える人的要因
- 力量の獲得および人々の参画
- ISO 9001の条項に照らした特定のガイダンス
ISO 9001の改訂版が2000年に発行されましたが、ISO 9000に説明されているように、これは8つの品質マネジメントの原則に基づいています。この原則のうち、4つが人々に関するものなのですが、ISO 9001ではこれらの原則が全く展開されていません。人々がどのようにこれらの原則に影響を与え、人々をより効果的に使うことで組織がいかに改善するかについてのガイダンスを与えるための規格の策定するワーキンググループをISOが立ち上げたのはこのような理由からです。
規格では、人的要因をより良く利用することが、ISO 9001の各条項を満足するうえでのサポートとなることについて、特定のガイダンスを与えるでしょう。
人的要因
ISO 10018は、品質に影響する人的要因をいかにマネジメントシステムの中で使っていくかについて、簡単な概略を示すでしょう。人的要因は、規格の中ではリーダーシップ、人々の参画および力量の3つのグループに分けられています。品質界のリーダーたちの長年にわたる努力により、品質の効果的なマネジメントのための推奨事項には、リーダーシップと人々の参画について盛り込まれています。3つ目の力量は、認証機関のための規格であるISO/IEC 17021に関わる問題として現在特に注目されている事項です。
リーダーシップの要因:
- リーダーシップ‐組織のリーダーの役割
- 文化および価値観 ‐リーダーはどのように、慣行と価値観を通じて組織の確立に参画するか
- 変化のマネジメント ‐文化および参画している人々などの変化を運営管理する上でのリーダーの役割
- 知識のマネジメント ‐知識を確実にするというリーダーの役割を組織内で共有し、効果的に利用する
人々の参画の要因:
- コミュニケーション‐ほとんどすべての組織での重要領域であり、悪い方向に向かいやすい領域でもあります。ガイダンスでは、メッセージを対象とし、様々なメディアの利用について取り扱っています。
- チームワーク‐企業の目標を達成するために他者と共に作業する能力は、確実に業務を遂行するための基礎となるものです。
- ネットワーク作りおよび協働‐チームワークおよびコミュニケーションと関連のある領域です。多くの専門家は、組織外の資源を利用するため、交流関係のある人々や利害関係者とのネットワークを構築しています。
- 規律‐計画されたほとんどすべての任務を確実に完了するためには、自分自身に規律を課し、外的にも規律を課すことが必要です。
- 権限の付与および責任‐規律とは表裏一体のものです。権限を付与することにより、従業者は自らの責任範囲においてはほとんど監督を受けずに働くことができます。
- 探求 ‐請け負う価値のある、適度なリスクを敢えて負い、経験から学ぶためのプロセス。
- 認知および褒賞‐仕事がうまくいったときに従業者にフィードバックを与え、必ず褒賞を与えることは、目的の達成と連動しています。
力量の要因
- 採用 ‐人々を組織に参入させるためのプロセス。
- 教育および学習 ‐知識および技能を開発するためのプロセス。
- 認識 ‐人々に、自らが従事するプロセスの重要な側面を認識させるための方法。
- 創造性および革新 ‐変化の激しい時代に、課題に対して創造的な解決策を適用する能力および迅速に革新する能力は、中核的な力量となりつつあります。
- 力量そのもの ‐上記の項目の総計。
どのような組織でも、上述したような人々に関する側面を心に留めて活動を実施したならば、積極的に関与しようとする従業員が、組織の方向性や、それを達成するためにひとりひとりができることを明確に理解することによって、パフォーマンスの改善という重要な便益が得られるでしょう。
審査と10018規格
ISO 9001の審査員の皆さんは、ISO 10018に照らして追加の不適合を挙げなければならないのではないかと心配なさるかもしれませんが、そうではありません。草案規格では、ISO 9001への追加要求事項は一切ありません。単に、マネジメントシステムの開発に参画している人々に対し、効果的なシステムの実施において、人々に関する側面について理解するためのガイダンスを提供しているに過ぎません。
規格のユーザーとして、組織のリーダーおよびシステムの開発と実施責任を担っている人々が想定されています。しかし、審査員もISO 10018について詳しい知識をもっていれば、受審者にベストプラクティスの領域を示すことができるでしょう。
著者について
Paul SimpsonはIRCAおよびCQIのテクニカルマネジャーです。経験豊富な審査員であり、ISO 10018開発のためのワーキンググループの委員でもあります。
ISO 10018は、現在、委員会用草案が作成された段階であり、ワーキンググループではすべての参加国からのコメントを募っています。どのようなコメントでも、Paul SimpsonにEメール(psimpson@irca.org)でご意見をお寄せください。
