PAS 99:

部分的な統合のための枠組み

3年前、PAS 99は市場の潜在的なギャップを埋めるべく発行されました。しかし、近い将来改定される予定もなく、Ian Dalling氏はこの仕様規格はすでに旬を逃してしまったのではないかという疑問を投げかけています。

PAS 99が発行された当時は、統合マネジメントシステムの設計および実施に関する実用的な詳しいガイダンスへのニーズが高まっていました。複数のマネジメント規格への適合を示そうとする多くの組織が、各規格には共通要素があり、適用範囲を新たな領域に拡大しつつ既存の手順を広範に利用することが可能であることを認識していました。

しかし当時は、人々および環境を守り、高品質の製品を達成し、市場での成功を達成するという非常に多様な範囲のことを取り扱うためには、これらを分割し、それぞれ専門知識をもった人が別個に運営管理すべきであると考えられていました。統合とは共通部分を抽出し利用することであるという理解は、このような単純な考え方のほんの一段上を行くにすぎなかったのです。また、この第二段階の認識(共通要素の抽出)においては、マネジメントシステムを部分的に統合することは可能であると見ていましたが、完全に統合されたマネジメントシステムの実施については全く目に入っていませんでした。

PAS 99にはこの第二段階の考え方が反映されています。この仕様規格は、マネジメントシステム規格中のいくつかの「共通の」要求事項を連結するのに役立ちます。しかしこれでは、連結が不可能な要求事項があるとでも言わんばかりです。PAS 99は認識の第三段階、つまり統合マネジメントシステムには労働安全衛生のような組織のパフォーマンスの特定の側面を個別に取り扱うことなく、すべてのPDCAを含めることができるという考え方を支援するものではないのです。

隙間を埋める

統合的な考え方をもち、自らのアプローチをマネジメントに統合しているクリエイティブな管理者たちにとって、PAS 99は事後的なアプローチだったのです。しかし、これは統合マネジメントへの単なる第一歩にすぎず、続いて完全な統合への革新的開発が行われるという期待はもてませんでした。PAS 99の主眼は、すべてのものを自然な形で保つことを確実にしつつ、完全な理解および組織のプロセスの階層的分類化を構築することよりはむしろ、複数の規格を取り扱うことに置かれたのです。

また、この仕様規格は、完全に統合されたマネジメント規格を提供することができない規格や認証業界に対応するためのものでもあります。実際、規格業界や認証業界は、絶えず多くの規格を発行しつづけており、規格間で用語がバラバラなこともしばしばです。例えば、最新のISO 9001には、ISO 14001との構造の整合性を図ろうとする姿勢が全く見られません。

金額に見合う価値があるか?

では、PAS 99の指針は適切で、金額に見合う価値のあるものなのでしょうか?残念ながら、この指針規格には不十分な点が数多くあります。統一されたマネジメントに関する用語を使用するのに有効な用語集など、役に立つ要素も多少含まれていますが、ISOでリスクマネジメント用語として使用されている「ステークホルダー」ではなく、「利害関係者」を使用するなど、用語の中にはもはや時代遅れなものもあります。

メインセクションでは、恐らくは将来の規格への下地を作るため、この仕様規格は共通のマネジメントシステム要求事項の構造を構築しようと試みています。しかし、PDCAサイクルに基づいているにもかかわらず、規格では「Plan」における管理の開発とその管理を「Do」で実施することの違いが理解されていません。「Do」での管理は包括的でなければならず、またPAS 99が誤って「Plan」で取り扱っている、組織の構造、役割、責任、権限はこの「Do」に含まれなければなりません。また、PAS 99では、サイクルの「チェック」は遅れている指標や先行している指標を素早くとりまとめるために、事前、事後両方でのチェック機能がなければならないということを明確には記述していません。

付属書のアドバイスはまとまりがなく、実際的でないものが多く、あまり詳しくないものもあります。例えば、可能性のリスクマネジメントスケールには「月1回」や「年1回」といった量的な単位ではなく、「非常にありそうにない」から「かなり規則的に生じる」までの範囲が示されています。確か品質の専門家たちは、価値は容易に測定可能であるべきだ、と力説しているのではなかったでしょうか?

また、PAS 99はリスクマネジメントの考え方の重要な基礎を誤解し、「許容可能なリスク」と「低リスク」、またこれらのリスクの階層における位置についても混同しています。しかし、品質規格よりは良いといえるでしょう。品質規格では、リスクについては用語の定義にすら規定されておらず、ポジティブなリスクについては短く言及しているけれども、「品質」と「リスク」の関係についてひとことも述べていないのですから。将来発行されるすべての規格では、リスクに関する規定は記述されるのでしょうか?

何が必要か?

PAS 99の最も大きな問題は、完全に統合されたマネジメントシステムの構築は不可能であるという神話を永続させているということです。したがって、この仕様規格はすぐに廃止されるか、第三世代のマネジメントシステムを支援するようなものと入れ替わるべきだと考えます。

BSIがPA S99を開発するに至った動機は、営利的なものであったかもしれないし、そうでなかったかもしれません。しかし、この仕様規格を廃止することは恐らく魅力的な選択肢ではないように思えます。できるならば、より賢明な価値観が普及し、第三世代のマネジメントシステムの急速な実施がスムーズに進むことを願います。だれも、今まさにその時であるという考えには反対しないでしょう!

 

著者について

Ian Dalling氏はUnified Management Solutionsの取締役であり、CQIのIntegrated Management special interest groupの議長でもあります。グループへのコンタクトは、Eメールimsig@thecqi.orgまで。

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