PAS 2050:2011 –

製品カーボンフットプリントの理

論と実践のギャップを埋める

Maria Varbeva-Daley氏が、世界初の製品カーボンフットプリント規格の最近の改訂について評価しています。

温室効果ガスの排出は世界、国内、企業または組織レベルで考えがちですが、事業活動内、事業活動間及び国家間のサプライチェーンからも排出されています。

徐々に、企業活動を超えた影響を考慮すること‐製造する製品及びサービスの影響を考慮する「カーボンフットプリント」の適用範囲を超えることが組織にとってのベストプラクティスとなりつつあります。PAS 2050はこのための手段を提供しています。

2008年10月に英国規格協会から初版が発行され、PAS 2050は製品及びサービス(まとめて「製品」と表現します)のライフサイクルにおける温暖化ガス(GHG)排出を評価するための方法を提供する仕様が一般に入手可能となりました。どのような場所においても提供する製品への気候変動の影響を評価するために、全ての規模及び種類の組織で使用されることを意図しています。

2008年の発行以降、PAS2050への関心が急激に高まっています。規格は80カ国以上の国々でBSIのウェブサイトから35,000回以上もダウンロードされています。過去3年間で、PAS2050は組織が「ホットスポット」及び関連するコスト/エネルギー削減の機会を明確にするために、存在する製品のライフサイクルにおけるGHG排出の内部評価を実施する際に役立つことが証明されています。世界中の企業が自らが提供している製品の「ストーリー」をより良く理解するための有用なツール、つまり、製品の複雑なライフサイクルに沿った改善及び炭素削減策に関する情報を提供しているのです。PAS2050審査の結果、組織は代替製品の構成評価、部品調達及び製造方法、原材料の選択及び供給者の選定の能力が向上したと報告しています。これらの要素は全て、収益に直接的な影響を与えるものです。

PAS2050のレビュープロセスの初めに実施された調査では、1,018件の世界各地の回答者のうち52%が、PAS2050 を適用した際の最も明らかな便益として「組織のプロセスをより良く理解できる」ことを挙げました。他にも、42%がGHG排出の削減を達成したと主張しており、32%がコスト削減及びコスト効率の達成を挙げました。

規格の改訂

この製品のカーボンフットプリントに関する世界初の枠組みの方法論への驚異的レベルでの関心の中心は、今年実施されたPAS2050レビューでした。PAS2050の2008年版には、草案を作成している専門家たちが、理解しにくいため早期の見直し/改訂が必要であると指摘した方法論のセクションがありました。発行されたPAS2050のうち、見直し/改訂の必要性が特定されたセクションは、航空機からの排出、間接的な土地利用の改変、土壌中の炭素蓄積、設備等、製品分類のルール、国際基準ライフサイクルデータ(ILCD)システム及びリサイクルです。これらはレビュープロセスで個別に取り扱われなければなりませんでした。

上記のような要因により、PAS2050改訂へのニーズが決定され、次のような目的で実施されました。

  • 規格の適用において明らかになった曖昧な点を明確にする
  • 発行以来、向上している知識及び浮上している意見を考慮する
  • できる限りユーザーの経験を反映する
  • 製品のカーボンフットプリントの利用及び適用レベルを強化する
  • PAS2050 の方法論、その適用、及び他の国際的に認定されたフットプリント法(特に、世界資源研究所 (WRI)、持続可能な発展のための世界経済人会議 (WBCSD)、国際標準化機構 (ISO)によって開発された方法論)の間の不必要な差異を軽減する。

改訂による重大な変更は次の項目を軸として展開しています:目的の明確化、補足要求事項の策定/使用、生体炭素の処理、アロケーションに関するオプションの拡張、リサイクル計算に関するオプションの拡張、再利用へのアプローチの改訂、土地利用の改変による排出へのアプローチの変更、10%の一次データルール‐「累積」アップストリームへの変更、その他の細かな事項の明確化(例:農業による排出など)、記録保持の要求事項の詳細化、工場での原材料入手から製品出荷までのフットプリント値。

PAS改訂プロセス全体を通じたWRI/WBCSDISO欧州委員会といった組織との引き続きの協力により、改訂版PASは確実に国際的な製品カーボンフットプリントの理論及び実践を反映し、ベストプラクティスと標準化への努力の協調を図るべく、PASの方法論と利用とを他の国際的に認められたフットプリント法とさらに整合させることができます。

2008年にPAS2050が発行されて以来、ISOとWRI/WBCSDはどちらも製品及びサービスからの排出の定量化に関する事項を仕様のポートフォリオに加えるプログラムに着手しています。ISOは現在ISO 14067「製品のカーボンフットプリント」を開発中であり、この規格には定量化及びコミュニケーションの要求事項が網羅されています。2012年の発行が見込まれています。一方、WRI/WBCSDは新たな製品算定及び報告基準であるGHGプロトコル製品基準を開発しています。

PAS 2050のアプローチとISO 14067 及びGHGプロトコル製品基準との違いは、主に以下のような点にあります。

  • PAS 2050は一貫した定量化法のみを提供することに焦点を当てている
  • GHGプロトコル製品基準の方法論の目的は、公的なインベントリ報告書の裏付けである
  • ISO 14067はカーボンフットプリントの定量化及びコミュニケーションの両方を提供することを目的としている

将来の開発

PAS 2050は2008年10月から利用可能となり、幅広い製品及びサービスのカーボンフットプリントの定量化の手段として広く利用されています。一般に適用できる定量化法を提供していると見られていましたが、単一的で一貫したやり方で、PAS2050の一般条項を補足する追加的な製品種類別のルールを加えることにより、製品の種類によってはカーボンフットプリンティングを強化できることを示す証拠が増えてきました。

これを促進するために、改訂版PAS2050では協調的開発の枠組みやPAS2050 と合わせて適用できる「補足要求事項」と呼ばれる追加的なセクター別要求事項を導入し、信頼性があり幅広く受け入れられる定量化結果が出せるようにしています。PAS2050の適用を促進するために、補足要求事項は特定のセクター又は製品グループに適用可能なライフサイクルGHG排出定量化の要求事項として規定されています。また、製品種類のルール、製品ルール、製品フットプリントのルール又はセクターに特化した基準も含めることができるでしょう。

現在、BSIはオランダのProductschap Tuinbouw (PT)、Ministerie Landbouw、Natuuren Voedselkwaliteit (LNV)と共に、園芸業界向けの補足要求事項を提供するためのプロトコルの開発プロジェクトに取り組んでいます。このPAS2050初の派生文書はPAS 2050-1「園芸製品にPAS 2050を適用するための補足要求事項」として開発中です。

著者について

Maria Varbeva-Daley はBSIの持続可能性部門のセクターコンテントマネージャーです。