ISO 9000 の 3.6.4 項は、予防処置を「起こり得る不適合又はその他の望ましくない起こり得る状況の原因を除去するための処置」と定義しています。これは、不適合の発生を予防するために取る処置と考えられます。しかし、そもそも不適合がなく、予防処置が有効であれば、現状が維持されることになります。このことが、現状を維持することが望ましい成果であるというプロセスの審査を難しくしているのです。しばしば、修正、是正処置、予防処置という用語の意味の違いについて混乱が見られます。(これらの正式な定義はISO 9000を参照ください。)また、これらの各々に関する組織の活動に関しても混乱が見られます。
組織の修正と是正処置のプロセスを審査する仕事は、比較的わかりやすいものです。というのは、これらのプロセスの成果や有効性は、普通、明確に定義されているからです。(つまり、組織が既に不適合を特定したのなら、その組織が使用した、あるいは、使用する予定である是正のためのプロセスと、それが不適合の再発を回避するのに有効であるかどうかを審査員が評価するのは、比較的シンプルなことだからです。)しかし、予防処置を審査することは、通常、これよりも複雑になります。
ISO 9001 は、予防処置に関して文書化された手順を持つことを組織に要求します。しかし、ここで注意したいのは、是正処置と予防処置の文書化された手順を組み合わせて一つのQMS文書としたものでもよいが、このやり方は推奨しないということです。この二つの手順書が組み合わされている場合、審査員にとって大切なことは、是正処置と予防処置の意図の違いを組織が明確に理解していることを確認することです。
規格は、この文書化された手順が次のような各種の重要事項を内包することを要求しています。
1. 組織がどのように起こり得る不適合とその原因を特定するのか。この典型的な例としては以下が考えられます。
2. 予防処置の必要性の評価。この評価に使用する方法は、リスク分析のアプローチまたは、故障モードおよび影響分析などが考えられます。(いずれのアプローチ・方法論も、ISO 9001の要求事項ではありません。)
3. 組織がどのような処置が必要かを特定する仕方と、その処置の実行の仕方。監査・審査員は以下の証拠を探すべきです。
4. 取られた処置の結果の記録
5. 取られた予防処置の見直し
どこまでが是正処置で、どこから先が予防処置なのかということで、審査員と組織の間で、意味深い「哲学的」議論が交わされることがよくあります。例えば、Aというプロセスで不適合が検知されると、B、C、Dのプロセスでの不適合を回避するために取られる処置は、予防処置なのか、それとも、Aのプロセスのために取られる是正処置の範囲なのか、ということです。審査員は、このような議論によって注意をそらされることなく、処置が有効だったのかどうかということに注意を集中するべきです。取られた処置をどう呼ぶかは、二の次でよいのです。
この記事は、 ISO 9001 審査実施グループのウェブサイト上の「不適合の文書化」を編集しなおしたもので、 ISO と IAF のご好意を得て掲載するものです。これらの文書は現在のベストプラクティスに基づき作成されており、そのため IAF のガイダンスや ISO TC176 の解釈として正式な確認を得たものはありません。審査実施グループについてさらに知りたい場合は、こちらをクリックしてください。
ISO 9001 審査実施グループは、 QMS の専門家、審査員、熟練家からなる非公式なグループで、 ISO のテクニカルコミッティー、 176 品質管理と品質保証 (ISO/TC 176) と IAF から生まれました。このグループは、ガイダンスや、 QMS 審査に関する説明を含むプレゼンテーションを数多く作成してきました。これらは、 ISO 9001 の要求事項を審査するのに必須のプロセスに基づくアプローチを反映したものです。