クオリティのためのデミングマネジメント (パート2) システム学 – すべてがつながっている

デミングの深遠なる知識のシステム (System of Profound Knowledge) について語る4回シリーズのパート2では、システムとしての組織、そして常に適切であり続けるためには「俯瞰的な視野に立つ」ことが重要であることについて、アラン・クラークと
トニー・コルィツキーが検討を加えます。

「彼らは皆、消えました。なぜなら、ただそこにいて、30年間つくってきて、もはや時代遅れになってしまったものをただつくりつづけていたからです」とアメリカの企業、モホーク・ファインペーパーズ社の上級副社長であるテッド・オコナーが雑誌 The Point に掲載されたAmerican Reams の記事『なぜ、「ペーパーレス世界」はまだ実現しないのか』で、レポーターのデイビッド・アンガーに語っています。順応するという選択肢があったのに、順応しなかったモホーク・ファインペーパーズ社の最初の16の製紙工場について、テッド副社長は言及しました。デジタルカメラ、そしてのちにはインターネットに接続するスマートフォンにタイムリーに対応することができなかった、印画紙のメーカー、イーストマン・コダック社に似ています。

多くの人が予言したペーパーレスの世界は実現していません。反対に、紙は進化し、新しい用途が見つかっています。モホークのような企業は変革し、あるいは高級志向の市場に移り、生き延びています。顧客のニーズは常に変化し、市場は広がるだけでなく、変化してもいます。持続的な成功の機会はまだあるのです。

これは多くの例の中の1つにすぎません。先に進む前に、ご自身の例を考えてみるましょう。

企業、そして業界や経済全体において「近視眼的」であるということは、リーダーが「俯瞰的な」視点をもっていないこということです。すべての階層の管理職は、自分たちの組織の内側と外側について俯瞰的な視点をもつ必要があります。

マイケル・シモンズは、著書『The New Leadership for Women and Men』で、リーダーや管理職の仕事は、「全体の状況を理解するよう努め、制限を加えたり、留保したりせずに、すべてがうまく行っているかを確かめることです」と記述しています。

どのように自分に関係してくるかを理解するために、俯瞰的に「地平線の向こう側まで」、つまり全体の状況を見ることを、システム思考 (Systems Thinking) と言います。俯瞰的に見るための方法はさまざまです。実際のところ、どのような方法を選ぶか、あるいはどこから始めるかは関係ありません。重要なのは、固定されたものの見方や日常の細々したことを超越することです。ご自身の組織の内外における影響、関係や相互作用から生じるさまざまな因果関係を可能な限り、徹底的に検討することです。

組織とは、社会的、経済的及び生態系的な成果とその帰結した結果を生み出す関係であり相互作用です。その成果や結果のいくつかは意図したものであり、いくつかは意図しなかったものです。いくつかは望ましいものですが、望ましくないものもあります。もっとも重要な関係としては、顧客との関係、より広い市場との関係、組織の従業員との関係などがあります。組織にとって最大の誘惑は、関係システム全体を故意に見ないようにすることです。デミング博士が言うように、「必ずしも変わる必要はない。生き残ることは強制ではない」のですから。

前進する方法

そのためにはどのような方法があるでしょうか。数年来、システム思考に対する2つの主要なアプローチが状況全体の理解に役立つとされています。ソフトシステム方法論 (Soft Systems Methodology, SSM) とViable System Model (VSM)です。どちらについても、本やインターネット上にたくさんの情報があると思います。

上記以外に、持続可能な組織のモデル (Model of Sustainable Organisasion, MoSO) があり、これはご自身の組織に対して体系的な視点をもつために有用であり、顧客に焦点を当てた(下記参照) ものです。MoSOは全体的な視野を提供する多くのモデルのうちの1つにすぎませんが、CQI のデミングSIG (Special Interest Group, DemSIG) が開発したものであり、多くのアイディアや情報源を1つにまとめたものです。

MoSOにはたくさんの重要な概念が取り込まれています。このモデルに提示されている概念の1つは、私たちが「ふたつの仕事」と呼ぶものです。これは組織内のだれもがふたつの仕事を持っているということを意味します。

ふたつの仕事

仕事 その1: 毎日の仕事は (内部及び外部の) 顧客のために価値を付加することや、価値を付加するフローの中の人をサポートすることです。仕事 その2: 改善の仕事は顧客に付加価値を提供し、サポートするために、よりよい製品、システム及びプロセスを継続的に追求することです。イノベーションの機会は、状況全体の知識と理解から生まれます。

CQIのデミングSIG はウェブサイト に掲載しているビデオで、MoSO を詳しく説明しています。MoSO の本質的な特徴は、モデルの各領域の境界が破線であるということです。これはこれらの境界には穴がたくさんあることを表し、つまりすべてはつながっているということが強調されています。したがって、組織と外側の世界の各側面は、しばしば予想外の仕方で、影響し、またその他すべてのものから影響を受けます。これは特に人々について当てはまります。

MoSO 開発チームの主要メンバーであるテリー・ローズは、最近の企業買収により突然環境が変化した企業にこのモデルを使用しました。MoSO を介して作業することでこの企業は、自分たちのシステムと全体の状況を理解し、自分たちのものの見方を変えるよう促されました。この企業は、このモデルの意味合い自体は変わらない範囲でモデルを自分たち用にアレンジしました。受け身の立場で待つのではなく、自分たちは新しい環境に何をもたらしたのか、自分たちの立場を主張したのです。

多くの人が起こっている変化を受け入れることができず、防御的に反応し、場合によってはダメージを受けることがありますが、変化を受け入れる能力の不足は克服することができます。

私たちの前回の記事 (クオリティのためのデミングマネジメント – パート1: 知識学 – 知識の理論) において、ワンダーウィジェットという会社の例を見てみました。ワンダーウィジェット社は大事なことをきちんと見ずに、ウェブサイトが機能していないことに気付いていませんでした。同社は細かいことに気を取られ、顧客のニーズと市場の動向を常時監視することにより得られる「生きたデータ」をもっていませんでした。幸いなことに、あまりに多くの顧客を失う前に、このことに気付きました。

有効に機能する品質システムであればウェブサイトの能力を承認すべきでしたし、その品質システムは総体的なものである必要がありました。

さあ、あなたの番です

MoSO を使って作業することは、ご自身の組織にとってはどのような影響を及ぼすでしょうか。

クオリティプロフェッショナルは、組織のすべての階層から全般的な状況の証拠やフィードバックを集める立場にいます。このことは、事業変革、ガバナンス、保証及び改善のエキスパートであるデイビッド・アームストロングが、クオリティプロフェッショナルに付託された権限として示しています。

 

どのようなアプローチを取るにしても、地平線の向こう側まで見渡し、状況全体やシステム全体を理解することはやらなければならないことです。そうでなければ、ご自身の組織の内外の相互作用から生じる結果によって驚かされるというリスクを背負うことになります。

次回の記事では、何が起こっているかの証拠を提供するためのデータを適切に分析することにより、どのようにシステムにとって効果的な意思決定と行動計画の根拠を手に入れることができるかを見ていきます。

著者について: Alan Clarke, CQP FCQIは業務改善に関する経営幹部育成コーチ、アドバイザー及びトレーナーです。Tony Korcki、PCQI はBT グローバルサービス社においてサービス導入及びプロセスアーキテクチャをしています。

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