イベントレポート: 第7回 第二者監査 みんなで学ぶ課題と改善の情報共有

2026年10月8日、IRCAジャパンはディスカッション形式ウェビナー「第二者監査 みんなで学ぶ課題と改善の情報共有」第7回を開催しました。今回のテーマは「監査報告書の作成」です。事前アンケートでは、「経営トップが関心を持つ監査報告書を書けない」「懸案事項をどのように報告すべきか分からない」「読み手を意識した文書作成に苦労している」といった課題への関心が高いことが窺えました。ウェビナーでは、監査報告書を単なる結果の記録ではなく、「監査の価値を伝える成果物」として捉え直し、参加者から寄せられた実務上の悩みや事例をもとに議論を展開し、経営層への伝え方や、監査結果を改善につなげるための考え方について、多角的な意見交換が行われました。
タイトル: 第二者監査 みんなで学ぶ課題と改善の情報共有
開催日時: 2026年10月8日 13:00 ~ 15:00
第6回のテーマ: 監査報告書の作成
コーディネーター: 青木明彦さん (IRCA登録 Principal Auditor)
司会進行: IRCAジャパン 澁谷由希子
テーマの背景
第二者監査では、監査活動を通じて得られた気付きや確認結果を最終的に報告書としてまとめます。しかし事前アンケートでも示されたように、実務の現場では、「経営層が知りたい内容と現場が報告したい内容にギャップがある」「懸案事項の扱い方が分からない」「指摘事項の重要度をどのように判断すべきか」といった悩みが少なくありません。
今回のウェビナーでは、監査報告書の書き方そのものだけではなく、「誰に何を伝えるために監査を行うのか」という監査本来の目的にも立ち返りながら議論が進められました。
監査報告書は監査活動の最終成果物であり、監査の価値を関係者へ伝える重要な手段です。そのため、問題点の羅列ではなく、監査テーマに対する結論と改善につながる示唆を分かりやすく伝えることが求められます。
今回取り上げた課題
事前アンケートの結果をもとに、参加者の関心が高かった次のテーマについて議論が行われました。
- 経営トップが興味を持つ監査報告書がうまく書けない
- 品質問題に関する指摘事項だけでなく懸案事項まで記載すべきか
- 読み手を意識した分かりやすいビジネス文書の書き方
- 指摘事項の重み付け(重・中・軽)の考え方
いずれの課題も監査報告書を書こうという段階になってから解決しようとしても遅く、監査の計画段階から現場監査、報告、改善活動までの一連の流れと密接に関係していることが議論の中で繰り返し示されました。
ディスカッションの内容
経営トップが関心を持つ監査報告書とは
最も多くの関心が寄せられたテーマが、経営トップへどのように監査結果を伝えるかという課題でした。
議論では、経営層が知りたいのは個々の指摘事項ではなく、「監査テーマに対してどのような結論が得られたのか」であることが強調されました。そのため報告書には、監査の目的、得られた結論、そしてその根拠となる事実を整理して示すことが重要になります。
また、監査報告書は監査終了後にはじめて着手するものではなく、監査計画や現場監査の段階から構想されているべきだという考え方も共有されました。すなわち、経営層が何を知りたいのかを事前に理解し、その視点で監査を進めることが、価値のある報告書につながるということです。
主なポイント
- 監査テーマ、結論、結果を明確に整理する
- 経営層の期待や関心事項を事前に把握する
- 指摘事項の羅列ではなく結論と根拠を示す
- 報告書は監査活動全体の成果を表現するものとして位置付ける
懸案事項をどのように扱うべきか
報告書作成に当たっては不適合だけでなく、「懸案事項」をどのように報告するかについても活発な意見交換が行われました。
現場と意見が一致しない課題や、組織として判断が必要な事項についてどうするかが議論され、それらは不適合事項として扱うのではなく、懸案事項として経営層へ報告することに大きな意義があるとの見解が示されました。
参加者からは、「重大な経営課題を不適合として扱うべきか迷う」という声も寄せられました。これに対しては、改善に向けた議論を促すという観点から、懸案事項として共有する方が効果的な場合もあることが紹介されました。
また、監査で明らかになった課題については、特定部門だけで対応するのではなく、関係する複数の部門が連携しながら改善策を検討することの重要性も確認されました。
読み手を意識したビジネス文書としての報告書作成
監査報告書の品質を高めるうえで、「分かりやすく伝えること」も重要な論点となりました。
青木講師からは、報告書は監査員のためではなく読み手のために作成するものであること、経営層や関係部門が理解しやすい表現を心掛ける必要があることが共有されました。
特に次のような点が重要なポイントとして挙げられました。
- 主語と述語を明確にする
- 抽象的な表現を避ける
- 客観的な事実に基づいて記載する
- 簡潔で分かりやすい文章を心掛ける
また、問題だけを強調するのではなく、改善の方向性や今後の対応方針も合わせて示すことで、経営層に安心材料を与える、より建設的な報告書になるという考え方も共有されました。
指摘事項の重み付けは必要か
指摘事項を「重・中・軽」に分類する運用についても議論が行われました。
参加者からは、評価基準が曖昧で判断にばらつきが生じやすいことや、監査員によって評価が異なることが課題として共有されました。
これに対して、青木講師からは仕組みを評価する監査では重み付けそのものに注目するよりも、「改善が必要な課題なのか」「どのような是正が求められるのか」を明確にすることが重要ではないかという考え方が示されました。
さらに、指摘事項の最終的な重要度は経営層や管理者が判断するべきものであり、監査員だけが判断の責任を負うものではないという視点も紹介されました。
参加者からの声・関心事項
チャットでの意見交換や質疑応答からは、監査報告書に関するさまざまな実務課題が共有されました。
特に関心が高かったテーマは次のとおりです。
- 監査結果を経営層へどのように伝えるか
- 懸案事項をどの範囲まで報告書へ記載するか
- 報告書発行までの時間短縮
- KPIと品質マネジメントシステムの有効性評価
- サプライヤー管理における監査の役割
- フォローアップ監査の進め方
また、参加者からは、現場での取り組み事例として、以下のような実務上の工夫も共有されました。
- 電子承認システムを活用した報告書発行の効率化
- KPI進捗確認と改善活動の連携
- リスクに応じた重点監査の実施
- 客観的証拠を重視した報告書作成
- サプライヤーとの継続的なコミュニケーション
議論全体を通じて、「監査は問題を見つけるためではなく、改善につなげるための活動である」という考え方に多くの参加者が共感していたことも印象的でした。
まとめ
今回のウェビナーでは、監査報告書は単なる結果報告ではなく、監査活動の価値を経営層や関係者へ伝えるための重要な成果物であることが改めて確認されました。
また、文書作成の技術だけでよい監査報告書が書けるわけではなく、監査目的の明確化、現場との対話、経営視点での課題整理といった監査プロセス全体の質によって支えられていることも共有されました。
監査員は、単に課題を指摘するだけではなく、改善に向けた対話を促し、組織の成長につなげる役割を果たさなければなりません。監査報告書を通じて何を伝え、どのような行動変容を促したいのか。その視点を持つことが、第二者監査の価値をより高める鍵であることを改めて考える機会となりました。




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