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イベントレポート: 第3回 第二者監査 みんなで学ぶ課題と改善の情報共有

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イベントレポート: 第3回 第二者監査 みんなで学ぶ課題と改善の情報共有

IRCAジャパンでは、1年間のテーマを決めて、IRCAのQMS Principal Auditor である青木明彦さんを講師/ コーディネーターとするウェビナーを毎年開催しています。本年は、第二者監査に関わる実務者が抱える課題を共有し、改善のヒントを探ることを目的に「第二者監査 みんなで学ぶ課題と改善の情報共有」というウェビナーを開催しています。本ウェビナーはディスカッション形式で進行し、参加者の皆さんの経験、実践事例を中心に議論を深めています。

イベント概要
タイトル: 第3回 「第二者監査 みんなで学ぶ課題と改善の情報共有」
開催日時: 2026年6月11日 13:00 ~ 15:00
第3回のテーマ: 第二者監査の事前準備-実効性のある監査設計と関係構築
コーディネーター: 青木明彦さん (IRCA登録 QMS Principal Auditor)
司会進行: IRCAジャパン 澁谷由希子

はじめに

本レポートでは、611日に行われた第3回の概要と当日及びアンケートで寄せられた質問やコメントと、それに対するコーディネーターからのコメントをご紹介します。

3回のテーマは、「第二者監査の事前準備-実効性のある監査設計と関係構築」です。参加者の皆さんに回答いただいた事前アンケートでは、特に以下のトピックへの関心が高いことが示されました。

  • 事前準備に時間をかけてチェックリストを作成しても、現場監査で十分に確認できない
  • 外部提供者から必要な品質記録を入手し分析しても問題が見抜けない
  • 必要な記録の提示を求めても円滑に入手できない
  • 分析結果や仮説を提示しても、相手と価値観が異なり説明が難しい

事前アンケートの結果が示すのは、二者監査を改善するためには、単に監査手法を改善することにとどまらず、「監査前の準備段階における設計」と「外部提供者との関係性」が重要な論点であるということです。

これまでの議論の振り返り

最初に青木講師から、これまでのディスカッションの振り返りが行われました。4月には、「第二者監査は製品品質の向上につながってこそ価値がある」という認識が共有され、5月には、チェックリストへの回答や提出そのものが目的化してしまう課題が挙げられ、チェックリストをより効果的に活用する必要性が議論されたことを確認しました。

こうした議論を踏まえ、今回のテーマでは、製品品質の向上という本来の目的を実現するために、監査前の準備や仮説設定、そして外部提供者との関係構築をどのように進めるべきかという点に焦点が当てられました。

ディスカッション概要

1. 事前準備における課題認識

今回の議論では、チェックリストそのものの改善を主題とした深掘りは5月で議論が行われたことを前提として限定的で、むしろ以下のような事前準備全体に関わる構造的な課題が背景として共有されました。その中でも特徴的であったのが、「分析を行っても問題を見抜けない」という課題です。この点について、以下のような実務上の難しさが示唆されました。

  • 必要な記録は入手できているにもかかわらず、異常やリスクの兆候を捉えられていない
  • データの読み方や仮説設定が監査側に委ねられており、属人化している
  • 分析結果を提示しても、相手と問題認識が一致しない

2. 事前準備と仮説設定

青木講師からは、監査前に品質記録や工程データを入手できる場合は、事前に確認して着目点を整理しておくことが重要であるとの説明がありました。一方で、機密情報の取り扱いなどを理由に事前の記録入手が難しいケースも多く、実際には現場で記録を確認する運用が一般的であることも共有されました。

そのため、事前にデータを確認できる場合には、「現場ではどの記録を見るか」「どの工程に注目するか」といった仮説(確認すべき事項) をデータから割り出して監査に臨むことが、限られた時間しかない中、効率的な現場確認につながると説明されました。

また、青木講師からは、事前に立てた仮説に過度にとらわれないことも重要であるとの指摘がありました。監査では現場の事実を素直に確認し、自身の仮説と異なる状況が見られた場合には、その仮説が誤っていたことを認めて柔軟に視点を切り替える姿勢が求められます。仮説は現場での事実確認のための出発点でしかなく、最終的には事実に基づいて判断することの必要性が共有されました。

3. 仮説設定だけでは埋められない認識のギャップ

青木講師からは、品質記録や各種データを分析して仮説を立てることは重要である一方、その仮説を相手に受け入れてもらうことは別の課題であるとの指摘がありました。

監査員は記録を分析し、「ここに問題があるのではないか」という仮説を持って現場に入ります。しかし、外部提供者側はその運用を問題ないものと考えている場合も多く、両者の間で問題認識や価値観にギャップが生じることがあります。

こうした場面では、単に記録やデータを示すだけでは十分ではなく、相手との対話を通じて認識を共有していくことが求められます。第二者監査では、手順書や記録を相手にするのではなく、人と向き合いながら改善の必要性を理解してもらうことが重要であり、そのためにはコミュニケーション力や相手を巻き込む力も必要になるとの説明がありました。

また、不適合の指摘そのものを目的とするのではなく、製品やプロセスの品質リスクを双方で低減していくという視点で監査を進めることが重要であるとの考えも示されました。相手との信頼関係を構築し、率直な対話ができる関係性を築くことが、実効性の高い第二者監査につながるという点が強調されました。

4. 第二者監査と内部監査の連携

事前アンケートでは、「第二者監査がQMS管理責任者の関与しないところで実施されており、内部監査との情報共有や連携ができていない」という課題が紹介されました。

このテーマは今回のウェビナーの主題である「監査設計と関係構築」とは必ずしも直接的に一致するものではありませんが、青木講師からは、第二者監査を組織全体の品質向上につなげるうえで極めて重要な問いであるとして取り上げられました。

青木講師からは、ISO 9001では第二者監査が明確に規定されているわけではなく、組織によっては内部監査と独立して運用されているケースも少なくないことが説明されました。一方で、監査の目的を製品品質の向上と捉えた場合、第二者監査と内部監査を切り離して考えるのではなく、組織全体の改善活動の中でどのように連携させるかが重要なテーマであるとの考えが示されました。

4-1. 監査専任組織による一体運用の事例

この話題に関連して、参加者のAさんから自社事例が紹介されました。同社では、従来は品質保証部門の中で監査業務を実施していましたが、外部機関から「監査業務に十分な時間とリソースが確保されているのか」という指摘を受けたことを契機に、約10年前に監査専任の組織を設置しました。

現在は、同じ監査部門が第二者監査と内部監査の両方を担当しており、外部提供者監査で得られた気付きや課題を内部監査にも反映できる体制を構築しています。例えば、外部提供者から寄せられた情報や改善要望が社内で適切に処理されていない場合には、内部監査を通じて関連部門の運用状況を確認し、改善につなげているとの説明がありました。

議論の中では、第二者監査の役割は単に問題点を指摘することではなく、外部提供者の工程や仕組みを理解し、品質リスクを低減するための改善活動を支援することにあるとの認識も共有されました。また、要求する側と対応する側の間には、求める品質レベルや要求事項の理解にギャップが生じることも多く、そのギャップを埋めること自体が第二者監査の重要な役割であるとの指摘がありました。

この事例からは、第二者監査と内部監査の情報を有機的に結び付ける仕組みや、監査を通じて社内外の課題を改善につなげる体制づくりの重要性が示されました。

4-2. 情報共有の仕組みと経営層の関与

また、別の参加者、Bさんからは、協力会社における情報共有の取り組みが紹介されました。

同社では、QMSISMSに関する情報に加え、内部監査や外部監査の結果についても共有できるコミュニケーションツールを導入しており、監査情報を組織全体で活用できる仕組みを構築しています。部門長は必要な情報にアクセスできる一方で、適切なアクセス権限管理も行われており、情報共有とセキュリティの両立が図られているとのことでした。

また、経営層が積極的に情報共有へ関与していることも特徴として紹介されました。月次の情報交換会に加え、問題やトラブルが発生した際には速やかに情報を共有し、経営層を含めて対応を検討する運用が定着しているとのことです。

議論の中では、「情報共有の重要性」を掲げるだけではなく、実際に情報が見える仕組みを構築することの重要性も指摘されました。情報を可視化することで、監査結果や課題を個人の責任に留めるのではなく、組織全体で共有し改善につなげることができるとの示唆が得られました。

さらにBさんからは、経営層が現場の声を積極的に聞き、問題発生時には原因追究と改善を支援する姿勢が、組織の風通しの良さや継続的改善につながっているとの紹介もありました。こうした事例は、第二者監査を単なる評価活動ではなく、組織全体の改善活動として機能させるうえで参考となる取り組みとして共有されました。

4-3. マネジメントレビューを活用した監査結果の共有

さらに、別の参加者Cさんからは、第二者監査の結果をマネジメントレビューにおいてリスク及び機会の情報として報告している事例が共有されました。

これを受けて青木講師からは、マネジメントレビューにおける「監査」の議題は内部監査だけでなく、第二者監査や第三者審査を含めて活用できるとの説明がありました。監査結果を経営層へ報告し、トップがリスクや課題を把握したうえで経営判断につなげることが、監査の価値向上につながるとの考えが示されました。

また、監査の結果を単なる報告で終わらせるのではなく、経営層が監査から得られた気付きを改善活動に活用することで、組織全体のレベルアップにつながるとの意見が共有されました。

4-4. 設計部門が主導する第二者監査の事例

別の参加者Dさんからは、自社の第二者監査の運用事例が紹介されました。同社では、ISO事務局は第二者監査の結果を集約し、マネジメントレビューを通じて経営層へ報告する役割を担っていますが、第二者監査の実施そのものは設計部門が主導しています。

なお、監査は設計部門が主導していますが、調達・設計・製造・QAのメンバーによるチームで実施されており、監査対象の選定は調達部門、契約判断は調達部門、製品や工程の技術的な観点は設計部門が担当するなど、それぞれの役割を分担した運用が行われているとのことでした。

この事例を受けて青木講師からは、外部提供者の技術力や工程能力を評価するうえで、製品や工程を最も理解している設計部門が第二者監査に関与することは合理的な考え方であるとのコメントがありました。特に新製品の立上げや外部提供者の選定段階では、設計部門の知見が重要な役割を果たすことが示されました。また、第二者監査を品質部門だけの活動と捉えるのではなく、調達・設計・製造・品質保証といった関係部門が連携して実施することの有効性についても示唆が得られました。

5. 関係構築を支える監査員の役割

またEさんからは、第二者監査の実施プロセスとして、事前に外部提供者の情報を調査し、自社の方針や期待事項を共有したうえで監査を実施していることが紹介されました。また、質問項目は外部提供者ごとにカスタマイズし、監査後は社内関係部門と結果を共有しながら今後の対応を検討しているとの説明がありました。

一方で、実務上の課題として、初対面の外部提供者に対して短時間で信頼関係を構築することの難しさや、監査員が質問項目に頼りすぎることで十分な深掘りができないケースがあることも共有されました。実際には、監査後に「もっと聞いてもらえれば話せた」と言われることもあり、監査員の力量やコミュニケーション能力が大きく影響するとの意見がありました。

これを受けて青木講師からは、監査員が一方的に質問するのではなく、まず自ら監査の目的や問題意識を率直に共有することが重要であるとの考えが示されました。監査員と外部提供者が同じ課題に向き合う立場で対話することで、相手の本音や困りごとを引き出しやすくなり、より実効性の高い監査につながるとの説明がありました。

また、外部提供者との信頼関係は一度の監査では築きにくく、継続的なコミュニケーションが重要であることも議論されました。担当する監査員を一定期間固定することや、監査の場だけでなく日常的な対話を通じて関係を築くことが、課題やリスクの把握につながるという示唆が得られました。

議論を通じて、監査員の育成とは監査技法の習得だけではなく、外部提供者との信頼関係を構築し、本音を引き出しながら改善につなげる力を身に付けることでもあるという認識が共有されました。

6. 第二者監査と内部監査を一体運用する事例

Fさんからは、安全・環境・品質保証室が第二者監査の主管部門となり、調達先の判定を行うとともに、内部監査も同じ組織で実施している事例が紹介されました。調達部門はオブザーバーとして監査に参加しているとのことでした。

この事例を受けて青木講師からは、どの部門が監査を担当するかよりも、第二者監査と内部監査で得られた情報がQMSの中で適切に連携されていることが重要であるとの説明がありました。組織の形態は各社で異なるものの、製品実現プロセスを一貫して捉えられるよう、監査情報を共有し改善活動につなげる仕組みが重要であるとの考えが示されました。

また、今回共有された事例の多くに共通していたのは、監査部門の名称や組織構造は異なっていても、第二者監査と内部監査を切り離さず、情報共有や改善に活用する仕組みを構築している点であり、そのことが監査の実効性向上につながっているとの認識が共有されました。

まとめ

今回は、事前アンケートで寄せられた第二者監査と内部監査の連携、情報共有の仕組みに関する課題について多くの事例が共有され、議論の中心となりました。その結果、監査結果を組織全体の改善活動へ展開するための体制や仕組みに関する有益な示唆が得られました。一方で、当初のテーマであった監査設計そのものについては十分な議論を行うまでには至らず、事前準備における仮説設定や監査対象ごとの監査戦略などは今後さらに深掘りが期待される課題として残されました。

議論はまだまだ続きます。IRCA登録審査員の皆様の次回ウェビナーへのご参加をお待ちしています。

より詳しい内容、参加者の皆さんの生のお声や青木さんのコメントは以下のリンクからご覧いただけます。非常にボリュームのある内容です (リンク先のページへのアクセスにはメンバーログインが必要です)。

当日の参加者からのコメントと青木さんのコメントはこちらのページへ

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