イベントレポート: 第6回 第二者監査 みんなで学ぶ課題と改善の情報共有

2026年9月10日、IRCAジャパンはディスカッションウェビナー「第二者監査 みんなで学ぶ課題と改善の情報共有」第6回を開催しました。今回のテーマは「監査結果の説明会」です。第二者監査では、現場監査で発見した課題や改善点をどのように相手企業へ伝え、共通認識として合意形成につなげるかが重要なポイントとなります。本ウェビナーでは、事前アンケートで参加者から寄せられた課題をもとに、説明会で起こりやすい問題や実務上の工夫について活発な意見交換が行われました。また、2026年度上半期の振り返りとして、これまで取り上げてきた内容を整理しながら、監査の目的を改めて見つめ直す機会にもなりました。
タイトル: 第6回 「第二者監査 みんなで学ぶ課題と改善の情報共有」
開催日時: 2026年9月10日 13:00 ~ 15:00
第6回のテーマ: 監査結果の説明会
コーディネーター: 青木明彦さん (IRCA登録 QMS Principal Auditor)
司会進行: IRCAジャパン 澁谷由希子
テーマの背景
ウェビナー冒頭では、4月から取り上げてきた「監査手順」「事前準備」「現場監査」「社長インタビュー」の内容を振り返りました。そして、今回のテーマである「監査結果説明会」について、説明会は単なる報告の場ではなく、現場で確認した問題点や改善の方向性について正式に合意する場であると説明しました。
また、ISO 9001:2026改訂版の発行を目前に控え、認証維持のためだけではなく、現場の管理者や経営層にとって本当に役立つ品質マネジメントシステムを構築する視点の重要性も共有されました。
また、次のようなメッセージが繰り返し示されました。
- 学問として学ぶ監査と現場での監査は異なる
- 手順を守っていても品質問題は発生する
- 監査は問題を指摘するだけでなく、改善につなげる役割を持つ
- 被監査側の「声」を聞くことが有効な監査につながる
今回取り上げた課題の概要
事前アンケートで最も関心が集まったのは、「指摘事項に反論や確認の質問が出されたときの説明を納得してもらえなくて苦労している」という課題でした。
議論では、例えば以下のような現場で起こりやすい事例が参加者から共有されました。
- 現場対応者と説明会出席者が異なる
- 現場リーダーと管理者の認識が一致していない
- 説明不足による誤解が発生する
青木講師は、自分自身は説明会で反論が発生した経験はなく、なぜ反論が発生するのかはわからないが、説明会で反論が発生する背景には、おそらく現場監査の段階で誰と合意を形成したのかが曖昧になっている場合があるのではないかと指摘しました。また、説明会は時間が限られているため、新たな議論を始めるのではなく、以下のような対応が必要であることが示されました。
- 現場での合意を丁寧に行う
- 管理者への事前共有を促す
- 必要に応じて説明会終了後に個別に確認する
関心の高さが示されたその他の事項には以下のようなものがありました。
- 指摘事項を文章化する難しさ:高等合意した内容を客観的に文章に整理する難しさや時間的負担が課題として挙がった
- 改善方法をどこまで提案すべきか:改善方法まで示すとコンサルティング高位と受け取られるのではないかという懸念が示された
- トップマネジメント参加の必要性:監査結果説明会に経営層が参加する意義などについて意見交換が行われた
ディスカッション内容
反論や認識のずれはなぜ起こるのか
参加者からは以下のような事例が紹介されました。
- 現場対応者と説明会出席者が異なっていたため、現場で合意していたにもかかわらず説明会で反論された
- 実務を担当する現場リーダーとマネジメントをする立場の課長で認識が異なっていた
- 説明不足や伝達不足により誤解が生じてしまった
青木講師は、監査員が「誰と合意しているのか」を意識することの重要性を指摘しました。現場リーダーとのみ合意し、最終的な管理者である課長が説明会で初めて内容を知ったというような場合は、反論が生じる可能性があります。これを防ぐには以下のような対応が有効であるという提案がありました。
- 現場リーダーだけでなく、管理者との合意形成を重視する
- 現場リーダーと管理者間で、説明会前に情報共有してもらう
また、説明会中に反論が出た場合は、時間が限られている説明会の場で論争を続けるのではなく、終了後に関係者で再確認するという方法が提案されました。
指摘事項は「摘発」ではなく改善の起点
講師は、監査員が警察官のように不適合を探すことだけに集中すると、第二者監査の根本的な目的である品質改善につながらないと説明しました。
監査員に求められる役割とは:
- 現場が困っていることを把握する
- 改善の考え方を共有する
- 問題を顕在化させる
特に第二者監査は顧客と外部提供者の関係で行われるため、「指摘する側」と「指摘される側」という構図ではなく、「製品品質をともに向上させるパートナー」という考え方が重要であるとの意見に多くの参加者が共感していました。
品質記録は「あるかないか」だけではない
参加者から、「監査時には見つからなかった記録が、後になって見つかることがあり、そのような場合にどうすべきか」という問いが共有されました。
これに対し講師は、記録の有無だけでなく、「必要な時に検索し利用できる状態になっているか」という観点も、重要であると説明しました。特に今後、ISO 9001:2026においては、「利用可能な状態にある」ことが要求事項になっていることに注意が喚起されました。
改善提案はコンサルティングなのか
アンケートで多く寄せられたもう一つの悩みが、「改善方法まで提示するとコンサルタントと思われてしまう」というものでした。また、「改善方法まで示すと監査員が責任を負うことになるのではないか」という懸念を持つ参加者もいました。
講師は、第二者監査においては顧客と外部提供者が品質向上に向けて協力する関係であることから、以下のような見解を示しました。
- 改善策そのものを指示する必要はない
- 改善の着眼点や考え方を共有することは有益である
- 相手と一緒に改善を考える姿勢が重要
指摘だけを伝えるのではなく、改善の方向性を共有することが、結果的に品質向上につながるという考え方が参加者の間でも共感を集めていました。また、第二者監査では顧客と外部提供者が長期的な関係を築くことが多いため、改善に向けた支援や育成の視点も重要であるとの意見が共有されました。
経営トップへの報告を「内部告発」にしない
説明会における経営トップの役割についても議論されました。講師は、監査結果を経営層への報告の目的は「問題を公表するため」でも、「管理者を責めるため」でもなく、以下のためであると説明しました。
- 経営トップから改善活動への支援を得る
- 改善方針への経営トップのコミットメントを確認する
問題点だけを伝えると管理者層の防衛的な反応、反論を招きやすくなりますが、以下をセットで共有することで、建設的な議論につながりやすくなり、また管理者の面目も保たれるという見解が示されました。
- 課題は何か
- 改善の方向性
- 現場で合意した問題への取り組み計画 (どのように、いつまでに)
参加者からの声・関心事項
今回のチャットや発言からは、参加者が実務上で直面している具体的な悩みが数多く共有されました。
特に関心が高かったテーマ:
- 説明会での反論への対応
- 現場と管理者の認識のずれ
- 指摘事項の文章化
- 改善提案と監査員の役割の境界
- 記録管理と検索性
共感が集まった考え方:
- 第二者監査はWin-Winの関係で行うべき
- 指摘よりも改善につなげることが重要
- 品質問題は人ではなく仕組みで考える
- 監査を実施する顧客側にも改善すべき課題が存在する
実務上の工夫として共有された内容
- 複数サンプリングで仕組みを見る
- クロージング前に疑問点を整理する
- 現場責任者との合意形成を重視する
海外拠点監査に関する関心
海外工場や海外サプライヤー監査の経験も共有され、以下のようなことが品質保証活動に大きく影響することが議論されました。
- 通訳の精度に関する事例 (現場監査前に通訳者と予備確認を行う)
- 文化の違いへの対応
- 文化の違いに配慮した海外の管理者への説明方法
まとめ
今回のウェビナーでは、「監査結果の説明会」をテーマに、監査結果をどのように相手と共有し、改善につなげるかについて多角的な議論が行われました。
参加者との意見交換を通じて見えてきたのは、説明会は単なる結果報告の場ではなく、改善活動を前進させる重要なコミュニケーションの場であるということです。
また、監査員には単に問題を見つける役割だけでなく、以下のような役割も期待されています。
- 現場の声を聞く
- 課題を可視化する
- 改善の方向性を共有する
第二者監査の本来の目的である「外部提供者とともに品質を向上させる活動」を実現するためにも、今後の監査ではパートナーシップと対話を重視した取り組みが一層重要になることが確認されたウェビナーとなりました。







