イベントレポート: 第2回 第二者監査 みんなで学ぶ課題と改善の情報共有

IRCAジャパンでは、1年間のテーマを決めて、IRCAのQMS Principal Auditor である青木明彦さんを講師/ コーディネーターとするウェビナーを毎年開催しています。本年は、第二者監査に関わる実務者が抱える課題を共有し、改善のヒントを探ることを目的に「第二者監査 みんなで学ぶ課題と改善の情報共有」というウェビナーを開催しています。本ウェビナーはディスカッション形式で進行し、参加者の皆さんの経験、実践事例を中心に議論を深めています。
タイトル: 第2回 「第二者監査 みんなで学ぶ課題と改善の情報共有」
開催日時: 2026年5月14日 13:00 ~ 15:00
第2回のテーマ: 年間の監査計画 - 密接に関係する外部提供者を特定して監査テーマと仮説を特定
コーディネーター: 青木明彦さん (IRCA登録 QMS Principal Auditor)
司会進行: IRCAジャパン 澁谷由希子
はじめに
本レポートでは、5月14日に行われた第2回の概要と当日及びアンケートで寄せられた質問やコメントと、それに対するコーディネーターからのコメントをご紹介します。
第2回のテーマは「第二者監査における年間計画と戦略・戦術」です。参加者の皆さんにこのテーマに関して興味あるトピックを選択いただく事前アンケートでは、特に以下の3点に関心が集中しました。
- チェックリスト型監査が形骸化している
- 定期監査がルーチン化し、成果に結びついていない
- 監査の目的や戦略が不明確である
これらの結果から、単なる「実施のための監査」ではなく、実効性のある監査の設計が重要なテーマであることがうかがえます。
ディスカッションは、合間合間にコーディネーターの青木さんの気付きを与えるコメントを挟みつつ、参加者の皆さんの積極的な発言/チャットコメントによって進められました。
ディスカッション概要
1. チェックリスト主体の監査の限界
前回に引き続き、最も多くの参加者が課題として挙げたのは、チェックリストを中心とした監査運用の形骸化です。議論では、以下のような問題が共有されました。
- 回答負荷が高く、実質的な改善につながっていない
- 「チェックリストを回収すること」が目的化している
- 顧客からの要求が連鎖し、業務負担が増大している
また、被監査側の参加者からは「複数顧客から類似のチェックリストを求められ、対応に追われている」という声もあり、運用の非効率性が明確になりました。
講師からは、チェックリストについては以下のようなコメントがありました。
- Yes/No形式の回答を求めても、「できていない」と答えるわけはないので、実態は把握できない
- 記述式にすることにより実態が把握できる可能性がある
- 現場課題を引き出す質問設計などへの転換が重要である
2. 年間監査計画の課題と再設計
参加者のコメントから、多くの企業でサプライヤー一覧をもとに3年に1回、5年に1回など、「全社を定期的に巡回する計画」が策定されていることが明らかになりました。
規格は第二者監査について特段の要求事項を提示していませんが、監査においてリスクに基づくアプローチを取ることを求めています。
参加者から共有された事例で示された、全社を定期的に巡回する監査プログラムについて、講師から以下のような問題が指摘されました。
- 戦略性がなく、単なる消化計画になっていないか
- 監査対象の優先順位が曖昧になっていないか
- 実際のリスクと関係なく計画が固定化していないか
そのうえで、年間計画のあるべき姿として以下が共有されました。
- 調達方針や経営戦略から逆算する
- リスクやトラブルに基づき対象を絞る
- 年間で達成すべき改善目標を設定する
監査すべき対象として、具体的には次の点などに重点を置く考え方が重要であるとされました。
- トラブル発生サプライヤー
- 特殊工程を扱うサプライヤー
- 社会的影響の大きい工程(法規制等)
3. 監査の目的や戦略が不明確である
サプライヤー管理の実践(ランク別アプローチ)
複数の参加者から、サプライヤーをランクで分類し、対応を変えている事例が共有されました。
特徴的な取り組みは以下の通りです。
- トラブルの多いサプライヤーを優先的に監査する
- 改善が進んだ場合は頻度を下げる
- 年間を通じて是正処置や運用のフォローアップを実施する
このような運用により、以下のような成果が報告されました。
- 問題のあるサプライヤー数の減少
- 継続的な改善の可視化
ただし、重点的な対応が必要な「新規サプライヤーの管理」や、「過去優秀だった企業で突然のトラブル発生」といった想定外のリスクへの対応などが課題として挙げられました。
4. 成功事例: 顧客との関係性改善による効果
印象的な成功事例として、顧客からのチェックリスト運用に対し、見直しを働きかけたケースが紹介されました。
実施内容:
- 監査員ではなく、品質部門が主体となり顧客へ改善提案
- 煩雑な手続きが必要な契約書の変更ではなく「覚書+議事録」で合意形成
- 問題発生時に即時打ち合わせする仕組みを構築
その結果、以下のような効果が得られました。
- コミュニケーションの活発化
- 問題対応のスピードの向上
- 不適合件数が5年間で半減
この事例は、担当者レベルではなく組織レベルで関係を構築する重要性を示しています。
5. 監査の役割と限界(現場重視への転換)
議論では、「監査だけでは品質は保証できない」という点も強調されました。特に特殊工程(例:溶接など)では、品質は以下の要素に依存します。
- 設備の信頼性
- 生産条件の管理
- 作業者の技能
このような工程では、監査による確認ではなく、日常管理とデータ監視が重要であるという認識が共有されました。
6. 組織体制と実務の課題
監査の有効性を高めるためには、組織横断的な取り組みが不可欠であるとの意見が講師も含め、多くの参加者から挙がりました。
具体的には、以下のようなことです。
- 例えば、それぞれの部署が自分に関係あるところを担当するというのではなく、品質・調達・現場をワンチーム化して対応する
- 部門ごとの分業ではなくプロセス全体で管理する
- 外部提供者との信頼関係を構築する
特に、「監査は指摘するものではなく、共に改善する活動である」という考え方が共通認識として整理されました。
まとめ
今回のウェビナーを通じて、第二者監査における課題が明確になる一方、改善の方向性も具体的に示されました。特に重要なポイントは以下の通りです。
- チェックリスト中心の形式的運用からの脱却
- 定期的に巡回するのではなく、リスクに基づいた年間計画の策定
- すべて一律ではなく、外部提供者ごとの戦略・戦術の設計
- 監査に行って終わりではなく、継続的なフォローアップによる改善促進
- 顧客や外部提供者との対話による関係構築
第二者監査の価値は、実施すること自体ではなく、品質改善につながる仕組みとして活用できているかで決まります。本ディスカッションを通じて、監査を単なる確認活動から「価値を生むマネジメントプロセス」へと転換する重要性が共有されました。
今後も、こうした実務に根差した議論を通じ、より効果的な監査運用への進展が期待されます。
議論はまだまだ続きます。IRCA登録審査員の皆様の次回ウェビナーへのご参加をお待ちしています。
より詳しい内容、参加者の皆さんの生のお声や青木さんのコメントは以下のリンクからご覧いただけます。非常にボリュームのある内容です (リンク先のページへのアクセスにはメンバーログインが必要です)。
当日の参加者からのコメントと青木さんのコメントはこちらのページへ
質疑のページでは資料にもアクセスいただけます。











