デジタル監査の力を利用して企業価値を向上させる

CQI Audit Special Interest Group の活動の一環として、Deep Fathom社のイアン・ローザム (Ian Rosam CQI MCQI) 氏が、監査の未来を見据え、デジタル監査のもつ力に関するクオリティプロフェッショナルに向けたガイドを作成しました。
このガイドでは、第一者、第二者、第三者の監査/審査活動を行う組織を支援する監査のプロフェッショナルの役割を探ります。このガイドは、デジタル化を活用して戦略的価値を高めるため、組織の行動を理解してリスクの特定を改善し、そして組織の戦略目標と法令遵守を達成する能力を強化するための洞察を提供します。
このガイドの対象者
このガイドは、品質マネジメント環境の内外を問わず、すべてのセクターで働く監査員を向けて設計されています。監査を、組織の目標、コンプライアンス、持続可能性を支える戦略的マネジメントツールへと作り変えようとする方々のリソースとなります。
監査のプロフェッショナルに向けた指針
- 監査の価値提案
- 変化のための提案
- マネジメントシステムの理解
- 監査者の力量
- 人工知能 (AI) の統合
- 監査プロセスの開発
- ビジネスコミュニケーション
- 客観的な証拠。
監査の価値を高めるとはどういう意味か?
1. 価値主導型監査の主要原則
監査の効果を最大化するには、次のことを行う必要があります。
- 監査活動への投資利益率を測定し、向上させる
- 組織文化と人的要因、それらが能力とリスクに与える影響に注目する
- デジタル化を活用して、有形無形の客観的証拠を収集及び分析する
- 戦略目標に対するリスクを特定し、コンプライアンスと法令遵守を確保する
2. 監査はどのように組織戦略を支えるか
監査は従来の機械的なアプローチの枠を超える実用的な洞察をリーダーシップチームに提供します。主な利点には以下があります。
- 有形無形の組織の要素を評価する
- 将来の目標に影響を及ぼす文化的リスクに対する予測的な洞察を提供する
- 監査結果に基づく十分な情報を踏まえた意思決定をリーダーシップが行えるようにする
- 効果的なマネジメント慣行を示すことで、利害関係者の信頼を厚くする
イアン・ローザム CQP MCQI
3.監査業務をつくり変える
監査が適切かつ有効であり続けるためには、従来のプロセス主導のチェックから全体的、戦略的な機能へと進化しなければなりません。変革の主要な領域には以下が含まれます。
- 証拠収集と分析のためにデジタル技術を採用する
- 行動と文化のダイナミクスを取り入れた、新しい監査手法を開発する
- 監査報告を強化して、簡潔でリスクと価値に基づいたマネジメント情報を提供する
- 監査を日常の業務報告や戦略的意思決定に統合する。
4.客観的証拠のギャップに対処する
従来の監査方法は、あらかじめ定められたプロセスと具体的な証拠に重点を置くことが多く、過去の出来事に注目する後ろ向きのアプローチになりがちでした。現代の組織では次のものも求められます。
- 行動の結果に基づく未来志向の予測的監査アプローチ
- 単なるバラつきではなく多様性をマネジメントするための全体的な監査手法
- 機械的な監査技術と全体的な監査技術のバランス
AIとロボットが機械的監査を処理することが増える中、監査員は組織文化、リーダーシップの有効性、システム上のリスクなどの無形の人的要素を評価するほうへ転換する必要があります。
文化や行動の影響を監査するための学術的に妥当性が確認された方法がないため、証拠のギャップが残り、監査の価値が低く見られることになります。デジタル監査技術は、この課題に対処する機会を提供し、新しい監査手法を導入し、監査の戦略的関連性を高めます。
5.監査の未来
監査員には次のことが推奨されます。
- 監査の方法を幅広く使用し、強みを最大化し、弱みを最小化する
- 監査をコンプライアンスに重点を置いた活動から、戦略的でリスクに基づくビジネスツールへと発展させる
- 監査の洞察を組織のあらゆるレベルの主要業績評価指標、ビジネス目標、プロセス目標と一致させることで、上級管理職の関与を促す
6.持続的な改善とフィードバック
このガイドは、監査手法、デジタルイノベーション、組織のニーズの進展を反映するため、定期的に見直されます。監査慣行の継続的な進化を支えるために、利害関係者はフィードバックを提供することが奨励されています。
このガイドの持続的改善へ向けフィードバックとご協力をお願いいたします。
監査のプロフェッショナルに向けた指針
1.監査の価値提案: 組織の能力、持続可能性、適合性、回復力、パフォーマンスを高めるハイブリッドアプローチを統合することで、監査の目的及び監査員の役割を進化させます。
ニューラルネットワーク、成熟モデル、予測分析を活用して、より深い洞察を提供し、監査がビジネスの目標に整合しながら、長期的な成長及びリスクマネジメントを促進することを目指します。
2.変革の提案: 従来の監査技術は、コンプライアンスコスト、ステークホルダーの関与、ビジネス価値およびリスク選好度をマネジメントする上で限界があります。デジタルトランスフォーメーションと戦略的監査手法を採用することで、リスクの特定、リスクの軽減、組織文化の評価、さらに全体的なリスクマネジメントが強化されます。
この変更により、監査は積極的なマネジメントツールとして位置付けられ、企業の持続可能性を促進し、経営幹部に深い洞察を提供して、戦略的目標と整合させ、長期的なビジネス持続可能性を推進します。
3.マネジメントシステムを理解する: マネジメントシステムは適応性があり構造化されており、組織文化と深く結びついたものとして認識します。バラツキと多様性のマネジメントが監査のプロセスにどのように影響するかを理解します。
監査員が進化する組織の動態を評価し、監査の戦略的価値を高めることを可能にするため、システム的視点と機械論的視点を統合した全体論的なアプローチを重視します。
4.監査員の力量: 監査範囲に適したさまざまな手法を用いて、リスクに基づく監査における監査員の能力を強化します。予測分析を活用して傾向とリスクを特定します。
さまざまな利害関係者に向けターゲットを絞った能力リスクレポートを作成し、洞察によって戦略的な意思決定をサポートし、組織の回復力を強化し、進化するビジネス要求事項と規制要求事項に適合できるようにします。
5.AI統合: ニューラルネットワーク、線形回帰モデル、ファジー理論を用いて監査プロセスにAIを活用し、客観的証拠の分析を改善します。特に、ニューラルネットワークはデータ内の複雑なパターンを識別することで文化的ニュアンスを理解するのに役立ち、多様な文脈でより深い洞察とより正確な予測を提供します。
6.監査プロセス開発: 従来の方法を基に、ニューロネットワークの理解を取り入れ、客観的な証拠のギャップを解決するために監査プロセスを強化及び洗練させます。この混合アプローチはリスクに基づく監査の枠組みをサポートし、能力の正確な評価と結果に対する潜在的な文化的影響を理解することによってシステムとプロセスのマネジメントを改善します。
7.ビジネスコミュニケーション: 報告書において混合監査アプローチを使用した結果として、文化的リスク及び業績リスクを経営幹部、監査委員会およびリスク委員会に効果的に伝えます。成熟度と能力のモデルを組み込んで組織の進捗状況を評価し、ビジネス目標に焦点を合わせて調査結果の焦点を絞ります。
このアプローチは、ニューラルネットワーク (文化)、従来の技術及び包括的なリスク分析を統合し、リーダーシップチームが使用する手法に似た視点を提供して、レポートの価値を高めます。
8.客観的証拠: 将来を見据えた予測分析と過去を振り返る適合性の結果とのバランスを取り、同じシステムの文化的要素と非文化的要素を組み込んだハイブリッド アプローチを通じて客観的な証拠を定義します。ニューラルネットワークでサポートされた成熟度および能力モデルを利用して包括的な分析を提供し、洞察がビジネスの目標及びリスクマネジメント戦略と一致するようにします。
*監査の将来を位置づける上で意見や経験を提供してくださった CQI のAudit Special Interest Group を構成する専門家の方々に感謝いたします。