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イベントレポート: 第二者監査 みんなで学ぶ課題と改善の情報共有 (第1回)

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イベントレポート: 第二者監査 みんなで学ぶ課題と改善の情報共有 (第1回)

IRCAジャパンでは、2026年4月から、2027年3月にかけ、ディスカッションウェビナー「第二者監査 みんなで学ぶ課題と改善の情報共有」を12回にわたり、開催しています。先般、4月9日に行われた第1回の概要と当日及びアンケートで寄せられた質問、コメントに対するコーディネーターからのコメントをご紹介します。

イベント概要
タイトル: 第1回 「第二者監査 みんなで学ぶ課題と改善の情報共有」
開催日時: 2026年4月9日 13:00 ~ 15:00
第1回のテーマ: 第二者監査の手順書
コーディネーター: 青木明彦さん (IRCA登録 QMS Principal Auditor)
司会進行: IRCAジャパン 澁谷由希子

はじめに

IRCAジャパンでは、1年間のテーマを決めて、IRCAQMS Principal Auditor である青木明彦さんを講師/ コーディネーターとして、皆でディスカッションをしていくという形式のウェビナーを毎年開催しています。本年は第二者監査に関わる皆さんが共通して抱える課題を共有し、改善のヒントを探ることを目的として企画されています。

1回となる今回は、104名の方々にご参加いただきました。冒頭では、IRCAジャパン澁谷からウェビナーの進め方やチャットの利用ルールが説明され、参加者が安心して議論できる環境づくりが行われました。

今年は開催に当たって、毎回、事前にアンケートを取り、参加者の皆さんが興味をもつトピックを選んで議論していきます。今回のテーマは「第二者監査の手順書」ですが、事前アンケートではこのテーマに関連して関心がある事項として、以下の3つが多く選ばれました。

  • 第二者監査を繰り返し実施しても製品の品質問題(顧客クレーム含む)が減少しない?
  • 現場監査で顕在化した品質問題の判断基準や影響の重み付けの判断が監査員に一任?
  • 新人監査員は、先輩の監査経験者に同行して見学するだけなので能力向上に繋がらない?

これらの結果からは、実務における「監査の有効性」が大きな関心事であることが窺えます。

ディスカッションは、合間合間にコーディネーターの青木さんの気付きを与えるコメントを挟みつつ、参加者の皆さんの積極的な発言/チャットコメントによって進められました。

ディスカッション概要

論点1: 監査を繰り返しても品質問題はなぜ減少しないのか

多くの企業が第二者監査の一環として、質問票や年次チェックリストへの回答を要求しています。このことについて、被監査側と監査側、双方からの意見が口頭で、またはチャットで寄せられました。主な論点は「チェックリスト方式は有効なのか」と「二者監査では何を監査するのか」の2つでした。

● チェックリスト方式は有効なのか
提起された課題 (主に被監査側から)

  • 質問事項が大量で回答負荷が大きいが、時間をかけることはできない
  • チェックリストの回答を収集すること自体が目的化しているのではないか
  • 項目数は多いが、本質的な品質向上につながると思えないものも多い
  • ISO要求事項に対応するための形式的な運用になっているのではないか

監査側、被監査側がそれぞれの立場からの意見を述べ、議論は大いに盛り上がりを見せました。

● 第二者監査では何を監査するのか
チェックリストの問題とも関連してきますが、第二者監査は何のために行われるのかという問題があります。第二者監査はISO 90018.4.2で求められている外部提供者が委託するプロセス、製品及びサービスを提供する能力の評価を行うための方策のひとつであり、委託するプロセス、製品及びサービスごとに評価することが求められています。しかしながら、多くの場合:

  • 汎用チェックリストで、個別のプロセス、または製品、サービスではなく会社全体を評価してしまう
  • 製品ごとのリスクや難易度が評価に反映されない

という問題が起きていることが多く寄せられました。

論点2: 品質問題に対する原因分析は十分行われているか

多くの参加者が指摘したのは、「是正処置が対症療法的で再発につながりやすい」ということです。その背景にとして以下のような課題が挙げられました。

  • 原因分析が技術面・管理面で整理されていない
  • 書面上では整っていても、実行や定着につながっていない
  • 外部提供者の分析スキルに大きなばらつきがある

上記が指摘される中、改善がうまく進んでいるという自動車業界を中心とした複数の参加者から、事例が紹介されました。

  • 顧客側が深掘り調査に伴走し、一緒に原因分析を行う
  • FMEA やなぜなぜ分析を顧客と共同で実施している
  • 「人の責任ではなく仕組みの問題として捉える」姿勢を顧客と共有している

そして、こうした二者監査の取り組みは、品質改善の成功につながっているという意見が複数ありました。

論点3: 外部提供者の成熟度の応じたアプローチの必要性

外部提供者の規模や能力は一律ではありません。バラツキがあります。そのため、チェックリストもそうですが、画一的な運用では限界があります。しかし、企業によっては外部提供者の数は膨大であり、すべてを毎年監査することはできません。多くの参加者は以下のような対応が現実的であると認識していました。

  • 成熟度に応じ、段階的な支援をする
  • 一律的な監査ではなく、リスクに基づき重点的な監査を行う
  • 重大な問題を優先する

また、海外の外部提供者に対しては、日本国内とは違った対応が必要であるという認識も共有され、以下のような課題が提起されました。

  • 日本市場が要求する品質基準が理解されない
  • 追加要求がコスト増と見なされ、受け入れられない

サプライチェーンのグローバル化が進む中、各企業が直面するジレンマが感じられる議論でした。

成功事例の紹介

議論の中で共有された前向きな取り組みには、以下のような事例がありました。

  • 顧客側と外部提供者が共同で原因分析を実施し、改善を進めたケース
  • 進捗3割時点で工程監査を行い、問題を早期に潰し込む運用を確立しているケース
  • 外部提供者が自ら改善策を考え、管理ツールまで整備したケース

これらに共通するのは、「監査=評価」ではなく、「監査=品質を共に良くするための対話」という姿勢でした。

まとめ

今回のウェビナーでは、第二者監査に関する多くの課題が表面化しましたが、改善の方向性も明確になりました。

特に重要だと整理されたポイントは次のとおりです。

  1. チェックリストの目的を再整理し、製品リスクに基づく評価へと転換する
  2. 品質問題は、技術的側面と管理的側面に分けて原因を深掘りする
  3. 外部提供者の成熟度に応じ、段階的に支援する
  4. 顧客と外部提供者が協働する姿勢こそが、品質改善の鍵となる

今回のディスカッションで浮き彫りになってきた課題を含め、2回目以降のディスカッションではさらに深く課題を見つめていきます。これから年間を通じて行われる議論により、形式的な監査から脱却し、より本質的な品質向上に向けた取り組みが進むことが期待されます。

議論はまだまだ続きます。IRCA登録審査員の皆様のご参加をお待ちしています。

より詳しい内容、参加者の皆さんの生のお声や青木さんのコメントは以下のリンクからご覧いただけます。非常にボリュームのある内容です (リンク先のページへのアクセスにはメンバーログインが必要です)。

当日の参加者からのコメントと青木さんのコメントはこちらのページへ

質疑のページでは資料にもアクセスいただけます。

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018