新しいツールを使いこなすのは大変なことです。そこで、プロフェッションマップを最大限に活用するための「よくある質問(FAQ)」をまとめました。ご自身のキャリアの選択肢を理解することから、スキルや力量を開発するまで、すべてをカバーしています。
2014年、CQI IRCA は「力量のフレームワーク (CF1.0)」を発表しました。CF1.0の目的は、現代のクオリティプロフェッショナルが成功するために必要な能力とさまざまな行動の種類を記述することでした。フレームワークは、5つの中核的な要素で構成されていました: ガバナンス、保証、改善、リーダーシップ、及び状況 (context) です。フレームワークでは、各要素がクオリティプロフェッショナルにとって何を意味するのかが示されました。これは世界的な関心を集め、CQI IRCA のメンバーや他のプロフェッショナルにさまざまな形で活用されてきました。
このフレームワークは、クオリティプロフェッショナルが専門的な力量を定義し、発展させる上で、変革をもたらすものであることは明らかでした。しかし、2021年までに、継続的な専門能力の開発に役立てるためには、より詳細な情報が必要であることに気付きました。また、デジタルテクノロジーの台頭や、環境、社会、ガバナンス (ESG) 目標が企業存続へ与える影響力の増大など、より多くの課題と機会が生じてきました。そこで、CQI IRCAは、現代のクオリティプロフェッショナルに必要な知識、スキル、行動を列挙した、より詳細な力量のフレームワークを構築することにしました。そして今、力量のフレームワークはナビゲーション可能な力量のプロフェッションマップとして生まれ変わりました。
プロフェッションマップは、個人がフレームワークの5つの要素と4つの階層 (基本的な基礎の状態からより高度な状態まで) にわたって自分の能力を評価し、自己開発を計画するためのツールです。組織は、このツールを使ってチームの能力を評価し、能力開発の参考にすることができます。また、業界セクターグループが、セクターの専門的な知識とスキルを構築するための基盤も提供します。
マップの完全版が利用できるのは、CQI及びIRCAのメンバーのみです。しかし、クオリティプロフェッショナルがどのような仕事をしているのか、また、クオリティプロフェッショナルが所属する、あるいは一緒に働いている組織にどのような付加価値を与えることができるのかに興味がある人は、その概要を知ることができます。
プロフェッションマップは、クオリティに関する能力を向上させたいと願うすべての人々にとって価値あるものとなることを目指しています。マップは主にクオリティと監査の専門家向けに書かれていますが、製品やプロセスの設計にクオリティを組み込もうとするエンジニアや継続的改善の実践者など、クオリティマネジメントの能力があることが有利である他の分野にとっても価値があります。
このように、より詳細な力量を示す必要があると考えた理由は、いくつかあります。
クオリティマネジメントの範囲と役割、職務の定義づけ
クオリティに携わる人々が実際に何をするのかについては、まだ多くの混乱があります。ほとんどの人にとって、クオリティの職務とは主に製品の検査やサービス水準の監視に関連するものです。しかし、クオリティプロフェッショナルであるということは、それ以上のものです。そこで、クオリティマネジメントの世界とクオリティプロフェッショナルの仕事について、より詳しく説明する必要があると考えました。
クオリティプロフェッショナルが付加できる価値の訴求
この職務を取り巻く一般的な誤解のために、クオリティプロフェッショナルとその貢献は過小評価されがちです。会計、法律、人事のプロフェッショナルが認知されるようになったように、有能なクオリティプロフェッショナルは、組織にユニークで欠かすことができないサポートを与えることができます。
プロフェッショナルとしてのキャリア開発を支援する
クオリティの職務の中では、必要な知識、スキル、行動をより適切に定義するする必要性が表明されていました。キャリアパスを描きたい、クオリティチームの能力を高めたい、新しい役割に就きたい、出世したいと考えているクオリティプロフェッショナルは皆、どのような知識、スキル、行動を習得し、持つべきかという、同じ疑問を抱いていました。
クオリティプロフェッショナル以外のクオリティマネジメント能力を支援する
私たちは、クオリティがすべての人に関係ある (あるいはそうでなければならない) ことを知っています。クオリティは製品を作る人、サービスを提供する人、事業を運営する人、組織にサービスを提供する人、施設を清掃する人など、すべての人によって達成されるべきものです。そのため、事業に携わるすべての人が、これらの能力のいくつかを身につけることで恩恵を受けるでしょう。誰にとっても得るものがあります。
このマップの主な目的は、オリジナルのフレームワークの各要素について、シンプルで簡単に操作できる力量の説明を提供することです。
マップの構造は非常にシンプルです。各要素 (ガバナンスなど) は、3~5個の主な力量に分類されています。そして、これらの主な力量は、4つの階層に分けられた力量の説明のリストで定義されています。これらの階層は、基礎となる基本からより高度な状態まで、力量の範囲と深さは漸進的に発展するということを表しています。
ガバナンス、保証、改善、状況の4つの要素はそれぞれスキルと知識に焦点を当てており、力量の行動的側面はすべてリーダーシップの要素にまとめられています。
各プロフェッショナルは、自分の役割に関連する特定の力量を大まかに理解することから始めるべきでしょう。これは、職務記述書やスキルマトリクスに記載されていることが多いですが、自分の役割に求められることを評価することによっても理解することができます。
CQIとIRCAのメンバーの皆さんには、ご自身の現在の、そして目標とする力量のプロファイル作成をサポートする、このマップを使った自己評価ツールが提供される予定です。 このツールは、CQIとIRCAが提供する一連の専門能力開発用のツール、サービス等とリンクします。
プロフェッショナルとしての資格を維持するためには、専門能力の継続的な開発 (CPD) が必要です。これは、組織生活やより広範なグローバル環境の変化の速度が増すにつれて、特に重要になってきています。
自分の能力を高め続けるプロフェッショナルが、自ら選んだ分野をリードしていくのです。また、プロフェッショナルが奉仕する組織にとっても、プロフェッショナルの価値はますます高まっていくことでしょう。
さらに、クオリティプロフェッショナルチームの責任者は、チームの全体的な能力を評価し、開発するための基礎を得ることができ、組織がチームに課している要求とマップをマッチングさせることができます。スキルを持つ人の採用が難しい世界では、これは本当に有利なことです。
しかし、すべてのプロフェッショナルが大規模なチームで仕事をするわけではなく、自分のプロフェッショナルとしての能力開発の目標となるような比較対象がないかもしれません。近々、この比較プロセスをサポートする、役割の典型を示す一連のプロファイルが利用できるようになります。
こちらをクリックしてください。
https://www.quality.org/ja/profession-map
CQIの2020-2030年戦略は、クオリティマネジメントの実践をリードするという志を掲げています。このため、CQIは最先端の研究を通じて、クオリティに関する学問と専門職の継続的な関連性をサポートする必要があります。この志は、「産業、商業、公共サービス、及びボランティア部門におけるクオリティに関する教育、知識、実践を促進し、公共の利益を図る」というCQI の核となる目的に合致しています。
力量のフレームワークの最初のバージョン (CF1.0) は、これらの目的を達成するための大きな一歩でしたが、個人やチームにとって実用的なものとなるには、詳細やプロフェッショナル育成の情報源へのリンクが不足していました。またCQIは、デジタルテクノロジーの台頭や、環境、社会、ガバナンス (ESG) 目標の企業生活への影響力の増大など、考慮しなければならない課題と機会が増えていることも認識しています。
CF1.0の成功を評価するために行われたアンケートでは、回答者の約50%が過去7年間の任意の時点でCF1.0にアクセスしたことがあると回答しています。これでは、私たちの目的を達成するためには明らかに不十分でした。
CQIが英国のクオリティプロフェッショナルの団体として活動し、どのような組織にも1人以上のクオリティプロフェッショナルがいることの利点を広め続けるためには、能力要件を満たすプロフェッショナルを構成するものを知ることが不可欠であると認識しました。
これらのことを考慮し、次期バージョンの開発時期が来たと判断したのです。そこで、現代のクオリティプロフェッショナルに必要な知識、スキル、行動をリストアップし、より詳細な力量のフレームワークを構築するプロジェクトを委託しました。これが今回、ナビゲート可能なプロフェッションマップとして登場したのです。
プロフェッションマップは、9か月にわたる文献調査、専門家との協議、開発、テストを経て開発されました。フレームワークの範囲と構造を開発するにあたり、プロジェクトチームは40以上の文献ソースを調査し、既存のセクター別フレームワークと他の2つの企業別フレームワークを参照しました。
その後、380人の専門家を対象としたアンケート調査や、17セクター及び10か国を代表する48人の実務家へのインタビューやワークショップを通じて、フレームワークの詳細が決定されました。
専門外の情報源も参照しました。プロジェクトチームは、経営幹部の方たちにもお話を伺い、また、他の10の専門機関の同様の力量のプロファイリングアプローチを検討しました。その後、ワークショップやコーポレートパートナーとの円卓会議で内容を練り上げました。
このプロセスを通じて、プロジェクトチームは、ISO9001規格やその他のクオリティマネジメント成熟度モデルなど、クオリティマネジメントの卓越性を計る指標を定期的に参照しました。
そして、4段階のテストプログラムを経て、当初の設計基準をクリアした製品を完成させました。
合計で450人を超えるさまざまなプロフェッショナルが関わり、500以上の個別の「接点」が生まれました。まさに、プロフェッショナルのためにプロフェッショナルが作り上げたのです。
この新しいバージョンは、個人と組織が個人とチームの能力開発を計画するために力量をより詳細に記述しています。 CF1.0のレビューに続いて、プロフェッションマップのプロジェクトチームは、現代のクオリティプロフェッショナルが影響を与えることができる4つの領域にわたる力量のリストを含めることを決定しました。
またこれに加え、プロフェッションマップを利用して、プロフェッショナルの能力レベルを評価し、向上させるためのツールも用意されています。
プロフェッションマップは、主に個人の専門能力開発を支援するために設計されました。プロフェッションマップは、すべての役割を定義し、メンバーのグレードを付与するための普遍的な基準を意図したものではありません。私たちの職務はあまりにも多様であり、プロフェッションマップを現実的で効果的な目標とすることはできません。
だからこそ、CQIのフェローグレードを除く全てのグレードの登録申請や昇格の際に、このマップを基準点として使用することを意図しています。
十分な告知をした上で、申請と昇格のプロセスを更新し、申請者がマップをどのように参照すべきかを最大限、説明する予定です。
CQI は、力量の対象が幅広く、かつ深いものであることを認識しています。私たちの職業は、深い専門知識が必要とされる、さまざまな役割と分野で構成されています。
膨大なレベルの協議によって得られたこのフレームワークには、私たちの職業が必要とするものが多く含まれているという確信は得られてはいますが、100%、すべてを網羅していると期待するのは現実的ではないことを認識しています。
しかし、このバージョンで、時間をかけてフレームワークを発展させていくための基礎ができました。私たちは、すべてのユーザーに意見やアイデアをフィードバックすることを奨励し、定期的にアップデートを行う予定です。
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