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2018年9月開催 CPD月次会レポート (ISO 45001の考察)

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2018年9月開催 CPD月次会レポート (ISO 45001の考察)

9月度の月次会は、BSIグループジャパン審査本部 部長の内藤氏をリード役に迎え、ISO45001規格の意図やマネジメントシステム運用におけるポイントを教示いただき、BSIトレーニングコースで使用されているビデオ演習を使用して、審査におけるポイントを学習するセッションを開催しました。

今回の講義は主に、IRCAジャパン協賛で2018年6月22日に開催されたBSIグループジャパンISO45001特別セミナーにおいて提起された、参加者の疑問と関心事項に絞って重要なポイントが情報提供されました。

ISO 45001:2018解説~押さえるべき要点~

講義冒頭、ISO45001が世界で初めて「文化/カルチャー」の概念を用いた規格であることと、CSR・SDGs・ESGの3大キーワードに代表される世界的な社会性追求の潮流に伴って大いに発展していく可能性があることが語られた。

さらに今年6月22日にIRCA協賛でBSIにて開催された特別記念セミナーによって、ISO45001 にある意図や解釈が明らかになったことが紹介され、ISO 45001策定を担当した委員会 PC 283の事務局責任者チャールズ・コリー氏による重要なポイントの説明や、コリー氏に直接確認した、規格が書かれている言語である英語の日本語に訳しきれていない裏の意味の解説、参加者の主な疑問への回答を織り交ぜながら、内藤氏による講義がスタートした。

安全文化について

災害発生率と組織文化の相関性について、Dupon社のブラッドリーカーブが用いている、4段階の文化タイプが紹介され、最も成熟した「相互啓発型」の安全文化を持つ会社においては、チームメンバー同士の思いやりで災害を激減させる効果があると話し、さらにトップマネジメントによる「安全文化」の形成・醸成に関わる役割について以下の規格要求事項が説明された。

  1. OHSMSの意図した成果を支える文化を形成、主導、促進するリーダーシップとコミットメント (5.1 J)
  2. 継続的改善において、OHSMSを支える文化を促進させる (10.3 b)
ISO45001の全体構成

最初に、労働安全衛生マネジメントシステムについて、安全で健康的な労働条件の提供やOHSリスクの低減などの労働安全衛生(OHS)方針のもと、OHSパフォーマンスに関わる意図した成果を達成する為に、危険減の除去や労働安全衛生パフォーマンスを低下させるリスクへの対策、OHSパフォーマンスを上振れさせる機会の活用などによって、継続的な改善活動を実践していく全体的な運用フローが共有された。

リスクに基づくアプローチ

続いて、ISO45001の運用においては、箇条6章が最も質問の多い領域と話し、リスク及び機会に関わるフローが示され、箇条6.1.2.2及び6.1.2.3に焦点が当てられた。 OHSリスク及び機会の評価に対する要求事項について、危険源に基づくOHSリスクと機会、OHSマネジメントシステムに対するリスク及び機会に関わる4つの要素に分けて個別に必要な活動と具体的な事例などが説明された。

  1. OHSリスク・・・既に6.1.2.1で特定(決定)された危険源から生じるOHSリスクについて、評価方法と基準を定め、且つ文書化した上で評価をする。
  2. OHSMSリスク・・・OHSMSの確立、実施、運用及び維持に関係するリスクを決定し評価する。
    【MSリスク事例】
    ・ベテラン退職と技術の伝承不足による力量低下
    ・老朽化による設備への信頼性低下
  3. OHS機会・・・危険源に関連し、OHSパフォーマンス向上の機会を評価する。
    【OHS機会事例】
    ・変更管理の改善 ・予防保全の向上 ・自動化による作業負荷軽減
  4. OHSMS機会・・・OHSMSを改善する機会を評価する。
    【MS機会事例】
    ・QMSやEMSの成熟によるOHSMSへの理解向上
    ・顧客からのCSR要求に伴うOHS監査の向上

また、OHS及びMSに関するいずれの機会も、パフォーマンスの向上に資する有益な情報を、偶発的な状況も含み、様々な環境から取得し、安全衛生委員会や経営会議など協議の場を通じて評価し、改善の機会を決定していく具体的な運用事例が示された。

順法性のアプローチ|コンプラインアス

コンプライアンスに関する全体の流れについて、法令等に関する要求事項の特定 (6.1.3) を行い、順守評価 (9.1.2) する基本の流れに加えて、9.1.1の要求事項やコンプラインスフローにおける関係性について附属書9.1.1を参照して説明がされた。

特に「法的要求事項及びその他の要求事項の順守の程度」に触れ、順守の程度を評価するためにモニタリング及び測定の対象として以下の事項が含まれることを確認した。

  1. 法的要求事項 (法律や規制に関わる情報) に関する文書化した情報が最新の状態に更新されているかどうか?
  2. 法令順守に関して特定した欠落 (ギャップ) の状況が正しく把握されているか?
ISO45001に関する動向

ISO45001の活用状況についての動向について以下のような事例を含め、最新の情報が紹介された。

  • BMW社の自動車関連部品購入条件としてサプライヤーへのISO45001 認証要求
  • RBA (旧EICC)、PSCI (製薬業界)、Apple、NIKEなどのサプライチェーンCSR監査における認証企業への優遇条件
  • 一部の自治体における入札時の経営審査における加点条件
規格に関わる主な疑問点に対する説明
  • 5.4 働く人 (非管理職) の協議と参加の要求事項について、特に上流工程においても非管理職との協議 (相談) が必要となっている点に注意。
  • 8.1.3 変更管理において、暫定的 (一時的) に発生する交通規制、断水などの影響による変更も管理する必要があることについて確認
  • 8.2 緊急事態への対応におけるc) 訓練 (Exercise) は、実践的な演習を要求していることを確認。
  • 9.3 マネジメントレビューにおいて、OHS目標の達成度のみならず、OHS方針に対する達成度も考慮しなければならない理由を確認。
  • 10.3 継続的改善の箇条に含まれる、適切性 (Suitability=合っているか)・妥当性 (Adequacy=十分か)・有効性 (Effectiveness) の違いを元に、改善の着眼点について再確認。
    また、b) 文化の推進状況を評価する指標として、災害やニアミスの件数や、内部監査所見数や安全パトロールの指摘数、安全文化に対する意識調査(サーベイ)が紹介された。

ISO45001審査上のポイント

最後に審査におけるポイントに言及し、記録や文書ではなく、「現場を基本とした審査を心がける」ことが強調された。

現場で実践しているOHS基準を把握した上で現場を観察し、順法状況や不安全行動の実態を確認した上で、更に不安全行動が行われる理由やメカニズム(プロセス)を追求し、本質的要因を追求することが肝要だと言う。

例えば、個人用保護具が使用されない理由として、作業者が強く不快を感じる場合、保護具自体に改善の余地があることに気づくことに意味があると話した。

講義の終わりでは、「OHSに関わる災害はチームメンバー同士の思いやりで激減できる」ことに改めて触れ、相互に相手への関心を強く持って、審査/監査に臨むことで、リスクの芽を摘み、改善機会の発見に寄与することが大切であると提言し締めくくった。

ワークショップ|ビデオ演習

BSIからIRCA認定移行トレーニングコースで使用しているビデオ演習教材の1つが提供され、約10分間、ISO45001審査の『働くヒトの代表へのインタビュー』の1シーンを参加者で視聴し、チームごとに組織における問題点の洗い出しを実施。各チーム共に、本演習のメインテーマにある『働くヒトの協議及び参加』を中心として、組織の課題について闊達な議論を展開した。

使用されたビデオの1場面

各チームで抽出した問題に関連する箇条 (アウトプット)

Sep_2018-CPD-meeting-Output.jpg

*あああは 3チーム以上が挙げた箇条、あああは2チームが挙げた箇条を表す

内藤講師による主な監査の着眼点とチェックポイントに関するまとめ
着眼点 1) 個人用保護具
・働く人が身に付けていた指先が保護されていない手袋に着眼し、保護具 (PPE) の基準について確認の余地があること。
・来訪した審査員にPPEに関する通知がなかったことで、基準のほか、必要なコミュニケーションプロセスが確立されていない可能性があること。7.4.1 c)2

着眼点 2) 働く人の代表のうち、2名が監査面談に立ち会えない状況
・働く人の協議及び参加に必要な時間、仕組み、教育訓練等、十分な資源が組織から提供されていない可能性。5.4 a)
・参加の障害障壁が取り除く努力がなされていない可能性。5.4 c)
・障害や障壁に関わる質問への回答から働く人の認識

着眼点 3) 2年前のコンサルタントによるリスク評価と実際のOH&Sシステムとの不一致
・危険源の特定、並びにリスク及び機会の評価に働く人が参加していない可能性。5.4 e) 2
・リスク評価が2年前になることから、最新の実態を評価していない可能性。6.1.1.2
・インタビューを通じて、基本的に働く人がOH&Sの方針や目標を十分に認識できていない可能性。7.3

この他、狭い場所での作業に対する不安を抱える作業員の話に関連し、組織が十分なリスク評価、管理策、改善策を実行しているか、更にチェックする必要があることが指摘された。 また、労災やヒヤリハットの発生状況や推移などを把握することから、企業の労働安全衛生に関わる文化的側面を推し測ることも有効な監査アプローチの一つになることが提言された。

さらに、経営者との面談、現場でヒアリング対象者数、守秘義務を前提とした個別のヒアリングなど、監査対象と方法などを含めて、効果的にオーディットトレイルを拡張していくことが望ましいことに触れ、セッションを締めくくった。

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