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経営課題としてのリスクマネジメント(ERM)を考える

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経営課題としてのリスクマネジメント(ERM)を考える

2018年6月度のIRCA月次会は、ニュートンコンサルティング株式会社より代表取締役社長の副島 一也氏とコンサルタントの坂口 貴紀氏をホスト役に迎え、「経営課題としての全社的リスクマネジメント(ERM)」について考えるセッションを開催しました

プログラム構成
講義Ⅰ 現在の汎用的なERMの概要説明(ERM1.0)
講義Ⅱ ERMが機能しない要因について
    ERMの活動を維持・向上させるための対策について
Workshop   Newton RM frameworkをベースとしたリスク対処法の演習(2人一組)

講義Ⅰでは、ERMとは何か?について、ERMを運用する目的や、典型的なアプローチ法が紹介され、ERMがリスクマネジメント活動に関する全社的な仕組みやプロセスとして、企業の目的を達成する為に必要不可欠な機能であることを確認。

ERMの目的 典型的なERMのアプローチ法
大事故の防止 リスク担当部門による各部署のリスク調査
活動の全社最適化 調査結果に基づく全社リスクマップの作成
活動の見える化 リスク対応計画による各部署への対処割振り
継続的改善の促進 リスクマネジメント体制の設置

講義Ⅱでは、一方でリスクマネジメントが機能しない場合の主な理由と課題、またその対策が具体的に紹介され、ERMが適正に運用されるために、経営トップと現場の双方を含んだ「組織全体での参画」と、リスクマネジメントに関わる「企業文化の醸成」が必要不可欠であることが明示された。

リスクマネジメントシステムの課題と対策
  • 多くの典型的なERMがうまく機能していないのは、つもり病(①対策を打ったつもり、②学習したつもり、③仕組みを入れたつもり)に陥っているためである。
  • つもり病の原因は、リスクマネジメントへの「注力バランスの不適切(①枝葉の対策や偽装、②根本原因の不十分な理解、③成果が見えない仕組み、など)」である。
  • ERMを適正に運用するには、各々のマネジメント活動に濃淡をつけて(必要な活動により注力することにより)、つもり病を抑止する必要がある。
  • ERMの活動を維持・向上させるには、マネジメント活動の共通土台としてのリスクに関する企業文化が醸成されている必要がある。
  • 企業文化の醸成には5大要件(①トップのリーダーシップ、②優秀な補佐による推進、③現場の巻き込み、④独自手法の採用、⑤これらの活動の継続)が必要である。
  • Newton RM frameworkは、①自社事例に基づく対策、②是正措置、③パフォーマンス評価などにより力点を置き、企業文化を考慮した、ERMを適切に運営するためのシステムである。 


また副島氏から、リスクマネジメントが「良好に機能している企業」の共通点について、顧客ヒアリングを通じて以下のような客観的特徴があることが提示された。 
これらは、全社的なリスクマネジメントを成功させるには、まずトップマネジメントが強い意志を持っていること、次にこれが遍く現場に伝えられていること、さらに活動しやすい現場の環境が整備されていること、が必要であることを示唆している。

  • 社長のリーダーシップが強い
  • 経営層に危機意識がある
  • 現場に権限が割り振られている
  • 現場主導で改善が進められている
  • 経営層から現場まで情報が共有されている
  • 先例がないことにも積極的に関わっている
  • イベントやキャンペーンに団結して取り組んでいる
  • リスクマネジメントの必要性が理解されている
  • 責任者は(リスク担当部門だけでなく)他部署員もチームに引き込んでいる
  • リスク担当部門は他部署からの協力が得られている
総括

最後に副島氏は、リスクをうまくマネジメントしている会社は共通して、「トップマネジメントがリーダーシップを発揮し、優秀な補佐をアサインしていることである」と総括した。

また今回のセッションについて参加したメンバーからは、ERMの本質を理解した一方で、「ルール」や「仕組み」によらず、意識や文化にまで結びつける有効な施策の難しさを痛感する一方で、自社事例に基づく対策、是正措置、パフォーマンス評価などにより力点を置き、企業文化を考慮した、ERMを適切に運営するためのシステムの重要性を実感したという声が多く寄せられた。

現在のマネジメントシステム審査/監査員においては、全社リスクが経営トップから各現場に展開され、組織全体で意思統一が図られ、全社最適となる改善活動が継続的に機能している状態を客観的に評価する視点と能力を養わなければならず、リスクベースの審査/監査を通じて、ERMの機能向上と文化の醸成に寄与し、トップマネジメントと現場をつなぐ重要な役割を担っていかなければいけないことを改めて考える機会となった。

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