IRCA-マネジメントシステム審査員/監査員の国際登録機関 > 情報メディア > 技術|規格 > コロナパンデミック期において食品安全の信頼を維持するためのガイダンス

コロナパンデミック期において食品安全の信頼を維持するためのガイダンス

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
コロナパンデミック期において食品安全の信頼を維持するためのガイダンス

食品安全のグローバルスタンダードのオーナーであるBRCGS (British Retail Consortium Global Standards) が新型コロナウイルス感染症の影響に関する懸念の最中にある食品製造業者に対する新しいガイダンスを発行しました。BRCGS のグローバルマーケティング部長であるJon Murthy が概要を説明してくれました。(本記事は2020年5月28日にquality.org に掲載されました)

>quality.org の記事はこちらから

コロナウイルス感染症の食品製造への影響に関する懸念を受けて、食品安全のグローバルスタンダードのオーナー組織であるBRCGS は食品製造者に向け、「Managing Food Safety during Covid-19 コロナウイルスパンデミック期における食品安全マネジメント」と題する新しいガイダンス文書を発行しました。

世界保健機構 (WHO) によれば、食品や食品パッケージから人がコロナウイルスに感染する確率は非常に低いとされています。しかし、パンデミックにより、製造業者にはさまざまな課題が持ち上がっています。例えば、サプライチェーンの分断、スタッフの長期欠勤、そして新しい労働者の流入です。これらすべては、食品安全と品質マネジメントを高い水準に保つことに影響を与えます。

BRCGS のCEOであるマーク・プロクター Mark Proctor は、「食品の需要が急増し、職場での対人間距離 (ソーシャルディスタンス) 対策により混乱が生じているにもかかわらず、世界的な食品サプライチェーンは非常によく持ちこたえています。このガイダンスの目的は、ブランドと製造業者にさらなる保証を提供し、起こりえる業務遂行上の課題からブランドと製造業者を守るということです。」と語っています。

Managing Food Safety during Covid-19 は、コロナウイルス危機の最中に食品の安全性と製品の完全性の基準を高く保つために製造業者が取るべき手順を詳しく説明しています。

  • コロナウイルス対応に責任をもつチームを設置する
  • 危害分析及び重要管理点 (HACCP) プロセスの体系的なレビュー
  • 緊急時サプライヤー及び原料承認のためのシステム
  • 食品安全規格の認証維持のために内部監査を利用する
  • 臨時従業員の承認のためのプロセス、そして
  • 清掃/メンテナンスと衛生のための追加対策

このガイダンスには、臨時従業員を雇うことや代替の材料を用いることによるリスクを含む、さまざまな潜在的リスクを軽減するために設計した対策が提示されています。

現場では、従業員の長期欠勤率の増加や、需要増による追加のシフトをカバーするために、より多くの臨時従業員を雇い入れる可能性が大いにあります。この場合、臨時従業員を食品業界の高い水準に適応させるために、トレーニングと監視を通常より増やす必要があります。

原材料の不足により、代替品が用いられることも考えられ、これは食品表示に影響を与える可能性があります。製品の配合を変更しなければならない場合、食品表示及びアレルゲン情報に影響が出ます。

このガイダンスには、食品製造現場における15項目のチェックリストが含まれています。

  1. コロナウイルス対応をマネジメントする定められたチームを設置する。チームリーダーと副チームリーダーを任命し、責任を明確に割り当てることを確実にする。

  2. 毎日コロナウイルス感染症マネジメントミーティングを開催し、進捗状況のアップデート、課題のレビュー、従業員からのフィードバックの検討、材料のレビュー、長期欠勤の報告、政府勧告の変更のレビュー及び新しい顧客要求事項の検討を行う。

  3. 危害分析及び重要管理点 (HACCP) マネジャーは、食品安全に妥協が生じないよう、すべての前提条件プログラムの変更に確実に関与する。

  4. 直接、またはニュースレターを通じて、最低でも週に1回、従業員向けの説明会を開催する。

  5. 原産国の状況と商品価格の動きに注意しながら、定期的に在庫状況をサプライヤーと確認する。

  6. 原材料の緊急サプライヤーが設定されている場合、保持している認証、または監査レポートを確認し、オンラインでのリモート監査の実施を検討する。

  7. 新しい原材料を導入する場合、存在する、または製造過程で交差汚染の可能性が考えられるアレルゲンの完全なリストを作成する。また、賞味期限 (shelf-life) への潜在的な影響をチェックし、包装での表示と食品表示への影響を検討する。

  8. 新しい原材料やサプライヤーを使用しようとする場合、最初の納品前に検査と試験の手順をレビューし、必要に応じて追加のチェックを導入する必要がある。

  9. 原材料の不足と価格の変化を注意深く監視し、リスクのある原材料を特定する。リスクがあると特定された原材料については試験と検査を増やす。

  10. 新しい/臨時雇用の従業員が多数いる場合、現行の承認済みの対策が維持されているかを確認し、新しい従業員がルールを理解できるように標識を増やす。

  11. 食品表示に変更の必要がある場合は、新しい印刷済みのパッケージを既存の在庫から分離するよう印刷業者での対策を導入し、サプライチェーンを通じて、新旧の在庫を確実に分離する対策も導入する。

  12. 通常、内部監査を外部コンサルタントが実施している場合、オンラインでの面談と文書共有システムを利用して監査実施を続けることを検討する。

  13. コロナウイルス移行の可能性のある硬い表面に細心の注意を払い、清掃・洗浄スケジュールを見直す。清掃・洗浄の最小許容時間を決める。新しい従業員のためのわかりやすいガイドを作成し、しっかりと監視することを確実にする。

  14. ペストコントロール検査の一時停止に伴うリスクを慎重に検討し、計画されているいかなる変更についても、ペストコントロールを請け負う業者と話し合う。

  15. 各シフトの最初と最後に従業員が着替えるスペースを拡張する場合 (例えば、空きオフィススペースを利用するなど)、特に注意が必要な、またはリスクの高いエリアでは、拡張のために食品の安全性が損なわれないことを確実にする。

プロクターは次のように結論付けています。「今後数週間は、この危機によって提示された課題に対応し、また回復フェースを通じて製造現場をサポートするよう、引き続き、製造現場にガイドを提供していくことをお約束します。」

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018