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品質管理マネジメントシステム (QCMS) を導入する

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品質管理マネジメントシステム (QCMS) を導入する

quality.org の英語原文記事はこちら

NGベイリー社 (NG Bailey) の品質コーディネーター、ダルビンダー・シン (Dalvinder Singh) 氏が、建設セクターのプロジェクトで最初から適切なアプローチを行うための品質マネジメントシステム導入のメリットとデメリットを探ります。

回避可能なミスが与える損害と新しい枠組みの必要性

NGベイリー社における品質管理マネジメントシステム (Quality Control Management System = QCMS) の導入は継続的なプロセスであり、私が3年前にこの会社と業界に加わって以来携わってきたことです。NGベイリー社では、システムを強化し、オンライン化することで、ビジネスの要求に応え、図面の作成と管理、品質検査のマネジメント、日報、ブラケットの設計など、幅広いプロフセスを従業員にとってよりスムーズになるようにしています。

質の低さに起因する問題は、非常にコストがかかる可能性があります。Get it Right Initiativeの調査によると、回避可能なミスが建設業界に年間約200億ポンドの損害を与えていることがわかりました。

管理された条件下で同じ製品を何度も組み立てる自動車メーカーとは異なり、建設分野ではプロジェクトごとに毎回まったく異なるため、品質をマネジメントするのはより困難です。

ロンドンの低所得者向け高層住宅であるグレンフェルタワーの火災など、英国全土で大きな話題となった事故は、業界を問わずすべての企業にとって品質が重要な課題となっていることにつながります。建築規制と防火安全に関する独立したレビューであるハケットレポート (Hackett Report) は、建築物の安全性を推進するためのよりシンプルで効果的なメカニズムを構築することを目的とした新しい枠組みの必要性を説いています。

英国建設業界における品質低下と対応策

私は自動車業界出身であるため、両方の業界を比較することができますが、英国の建設業界では以下の要因によって品質が低下していると考えます:

  • 下請けに出すことによるデメリット
  • さまざまな調達方法のよい点と悪い点
  • 建物及びその工学システムの複雑化
  • エンジニアの技能不足と実習生に対するよい品質についての訓練の不足
  • 熟練していない作業員でも設置可能なモジュール式エンジニアリングシステムの使用の増加


NGベイリー社ではこうした問題に対処するため、一連のツールとプロセスを開発し、事業全体の品質管理へのアプローチを簡素化及び標準化しています。

このプロジェクトの中心は、現場における目視による品質チェックと検査を実施するためのデジタルプラットフォームの導入でした。開発会社のSnagRと緊密に連携して、幅広いプロジェクトにわたって有用な分析とパフォーマンスデータの収集を可能にする、視覚的な検査主導のアプローチを作成しました。私たちは、このデータをもとに、学んだ教訓を利用する継続的なプログラムと継続的専門能力開発イニシアチブを実施しています。

QCMS のよくできている点とうまく行っていない点

このような品質マネジメントのアプローチは、NGベイリー社内だけでなく業界における根本的な変化でもあり、よくできている点とうまく行っていない点があります。

QCMSのよくできている点は以下の通りです:

  • データを維持及び保存するための体系的かつ監査可能な方法
  • 力量を証明する簡単なメカニズム
  • フォーム記入時間の短縮
  • すべてが仮想ネットワーク上でアクセス及び保存が可能
  • 目視検査と問題点の把握のための使いやすいソフトウェア
  • すべての目視検査と問題が完全に説明可能であり追跡可能
  • すべてのプロジェクトを標準化できる
  • 分析/ KPIを比較対照する


現行のQCMSでうまく行っていない点は以下の通りです:

  • 同僚が変化を恐れる
  • 同僚の認識が不足している
  • 従業員に対するトレーニングの不足

QCMSを導入した経験を通じて、建設業界では変化が課題になりうることを学びました。デジタルシステムへの移行をためらう人もいますが、これは多くの場合、事前の関与や理解が不足していることが原因です。

NGベイリー社では、これらの問題を認識し、継続的な改善に積極的に取り組んでいます。これは、品質マネジメントに対する私たちのアプローチについて、社内外の利害関係者を教育する定期的なトレーニングセッションを提供することによって行われています。現在までに、私は1,000人以上の同僚やサプライチェーンパートナーに150回を超えるトレーニングセッションを提供してきました。

品質とは、現場全員の仕事ではなく、品質チームの仕事とみなされることもあります。しかし、品質マネジメントの成功は、プロジェクト全体を通じて全員が責任を負うという文化から生まれます。

何を達成しようとしているのか?

建設前の段階で品質マネジメントに重点を置くことで、プロジェクトに関わるすべての利害関係者を巻き込み、適切なサプライチェーンから適切な資材を調達し、関係者全員が確実に適切な資格と経験を持っているようにすることができます。

私たちは、割り当てられた期間内に予算内で、最高の品質基準でプロジェクトを完了させ、なおかつ利益を上げることを目指しています。最初から適切なアプローチを採用することは、初期費用は高くつくかもしれませんが、長期的にはこのアプローチを採用する際の金銭的コストをはるかに上回るメリットを得られます。

建設業界、特にここNG ベイリー社においてQCMSをマネジメントし、実施することは、事業継続のために不可欠であり、最初から適切に行うことが目標達成のための重要なステップであると考えています。グレンフェルタワーの火災のような悲劇が起きて以来、品質マネジメントに対するこのアプローチは強化される一方です。

QCMSを成功させるためには、金銭的な投資と時間が必要であり、また、同僚の全面的な支持を得て、自社にとって役立つサプライチェーンを獲得する必要があります。行動や態度を変えることは、これまでも、そしてこれからも困難なプロセスであり続けるでしょう。しかし、適切なトレーニングやワークショップ、一貫したメッセージがあれば、NGベイリー社で示したように達成可能です。

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