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ISO14001:2015におけるライフサイクルの考え方

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ISO14001:2015におけるライフサイクルの考え方

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CQI の仕事に関する調査 (Workforce Insights 2021-22) によると、クオリティ及び監査のプロフェッショナルの22%に当たる人々が環境マネジメントに関する役割や責任を担っているとのことです。IRCAに登録するLead Auditor であるRavindiran Gurusamy氏は、持続可能な開発目標はビジネスプロセスの重要な部分を形成しているべきであると述べるとともに、ISO14001のライフサイクルの視点と持続可能な開発目標の達成におけるその重要性を検証します。

はじめに

競争が激化し、法律がますます厳しくなる中、環境汚染、資源の非効率的な使用、不適切な廃棄物管理、気候変動などから環境に対する圧力が高まっている現在、すべての組織はビジネスプロセスにおいて持続可能な開発を目指す必要があるでしょう。

持続可能な開発目標は、環境、社会、経済という持続可能性の3つの柱のバランスをとることで実現されます。多くの組織は、持続可能性の柱のうち環境への貢献を目指して、すでに環境マネジメントシステムを導入しています。

本稿では、組織の環境マネジメントシステムにおいて、ライフサイクルの視点をどのように考慮し、それが環境目標の設定にどのように役立つかを見ていくことにします。

ライフサイクルの視点と評価

ISO14001:2015「環境マネジメントシステムー要求事項及び利用の手引き」の箇条3.3.3では、ライフサイクルとは原材料の取得又は天然資源の産出から,最終処分までを含む,連続的でかつ相互に関連する製品(又はサービス)システムの段階群であるとしています。

ライフサイクルの視点とは、ライフサイクルの各段階または各プロセス間での潜在的な環境負荷の移行を特定し、場合によっては回避するよう体系的に全体を見渡すことです。ライフサイクルアセスメントとは、製品やサービスシステムのライフサイクルを通してのインプット、アウトプット、潜在的な環境影響をまとめ、評価し、持続可能な開発に貢献するための選択肢を生み出すプロセスです。各組織は、側面と関連する影響を決定する際には、ライフサイクルの視点で考える必要があります。

ライフサイクルの段階群

それぞれの製品やサービスには、以下のようなライフサイクルの段階群がありますが、それ以上の段階がある場合もあります。

  • 設計及び開発
  • 原材料の取得
  • 製造業務
  • 受け入れと送り出しの両方向の輸送
  • 顧客による製品またはサービスの使用
  • ライフサイクルの終了後の最終処分など


上記の各段階の環境側面を特定する上でライフサイクルの視点を決定することは、関連する負の環境影響を最小化または回避し、正の影響を促すのに役立ちます。

上記の各段階におけるライフサイクルの視点は、以下のように確認することができますが、ここに提示されたものだけに限定されるわけではありません。

ライフサイクルの段階 ライフサイクルの視点
設計及び開発 有害物質の制限、化学物質の登録、評価、認可及び制限(REACH)への適合、材料の最小使用量、リサイクル可能な材料の最大使用量、費用対効果の高い材料、Apex 機関やその他の規制要件への対応
原材料の取得 汚染物質の発生を最小限に抑える、汚染制御、汚染防止、軽量化、除去/ 代替/ 工学的制御の原則を採用する
製造 再生可能エネルギーの利用、エネルギー効率の良いプロセス及び環境、重力の最大利用、リデュース、リサイクル、リユース、廃熱回収、汚染物質の発生の最小化、汚染制御、汚染防止、除去/ 代替/ 工学的制御の原則の採用。廃水処理、有害廃棄物の削減
輸送 リバースロジスティクス (消費者から生産者に向かう物流)、ミルクラン (複数の調達先を巡回して集荷) システム、ハブアンドスポークモデル、法規制の遵守、車両の排ガス試験、近接した外部プロバイダーを採用して輸送コストと排ガスを削減する。梱包材の木材、金属製物置台、多層ラックの削減
顧客の使用 製品/サービスの使用及びメーカーの推奨に従った廃棄
最終処分 買戻しオプション、リサイクル、法定及び規制ガイドラインに従った非リサイクル材料の廃棄

ライフサイクルの視点のメリット

各段階でライフサイクルの視点を考慮することにより、組織が一つ以上の持続可能な開発環境目標 (SDEG = sustainable development environmental goals) または環境目標を達成することを促進または支援することができます。

SDEG ライフサイクルの視点によるメリット
エネルギー 具体的な消費削減、節約、グリーンビルディング (環境配慮型建築物)
具体的な水使用量の削減、排水処理、再利用、廃液ゼロ、ウォーターポジティブ (投資などを通じて、水の消費量を上回る供給量を達成する)
廃棄物 廃棄物の削減、リサイクル及び再利用の具体的な実現、二酸化炭素排出量の削減
再生可能エネルギー 太陽電池適用への移行、半透明屋根、風力発電機
温室効果ガス排出量 温室効果ガスインベントリ (排出/吸収目録)、絶対値での削減、植林
グリーン購入方針 多数の部品/サプライヤーへの適応、サプライチェーンの「グリーン化」
雨水の利用 雨水利用率の向上、人工涵養構造、水循環の保全に努める
リサイクル可能なもの 製品への使用拡大、グリーンビルディング、廃熱回収
プロダクトスチュワードシップ* 知的財産権に関するプロジェクト、グリーン製造プロセス
生物多様性 生物多様性、種の多様性、樹木の多様性、土地利用の多様性、生物多様性保全のためのプロジェクト
企業の社会的責任 コミュニティプロジェクトの数、ステークホルダーの参加、水域の回復と維持、密集した森林の開発


* プロダクトスチュワードシップ: ライフサイクル全体を通して製品の安全、衛生、環境面を倫理的に責任ある方法で管理すること

環境マネジメントシステムにおいてライフサイクルの視点をうまく取り入れられるかどうかは、組織のあらゆる階層、あらゆる機能からのコミットメントにかかっています。さまざまなプロセスやその相互作用を体系的に定義及びマネジメントすることで、ライフサイクルの視点をさらに強化することができます。組織は、定期的に、あるいはプロセス、製品、システムに変更が生じるたびに、Plan、Do、Check、Act のアプローチを採用して、文書を見直す必要があります。

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
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