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気候変動をマネジメントするには

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気候変動をマネジメントするには

quality.org の英文記事はこちら

ISOマネジメントシステム規格のための合同技術調整グループ (JTCG = ISO Joint Technical Coordination Group for Management System Standards) の議長を2021年から2023年まで務めたナイジェル・クロフト博士 (Dr Nigel Croft CQP FCQI) が、この度マネジメントシステム規格に組み込まれた ISOの気候変動への配慮について詳しく説明します。

今回の修正の背景

ISOは、2021年の総会において、世界的な気候変動対策の推進に尽力することを表明しました。この総会では、160を超える ISO加盟機関すべてが、いわゆる「ロンドン宣言」として知られるものを承認しました。そこには次のようなことが述べられています。

「ISOは、国際規格及び発行する文書が、パリ協定、国連の持続可能な開発目標、国連の (気候変動への) 適応とレジリエンスに関する行動要請 (United Nations Call for Action on (Climate Change) Adaptation and Resilience) の達成を促進するために、メンバー、利害関係者、パートナーと協力することをここに約束する。」

よくある誤解は、気候変動への配慮はISO14001などの環境マネジメントシステムや、ISO50001などのエネルギーマネジメントシステムを導入することを選択した組織に限定されるというものです。

実際には、ほとんどの組織が何らかの形で気候変動の影響を受ける可能性が高く、その目標を達成し、マネジメントシステムの戦略的目的を果たし続けるためには、気候変動に適応する必要があると思われます。

また組織は、事業活動の一環として、気候変動緩和のための行動をとることを選択することもできますし、関連する利害関係者から要求されることもあります。例えば、企業の方針やコミットメント、顧客やサプライチェーンの要求事項、規制上の義務などがその理由となることもあります。

ISOのマネジメントシステム規格のための合同技術調整グループ (JTCG) は、ISOの気候変動調整委員会と緊密に協力し、ISOポートフォリオ内のほぼすべてのマネジメントシステム規格 (MSS) に適用される「調和させる構造 (Harmonized Structure)」 (ISOIEC 専門業務用指針の附属書SL) に、気候変動への配慮をどのように取り入れるかについて合意に達しています。唯一の特筆すべき例外は、ISO 13485:2016 医療機器−品質マネジメントシステム− 規制目的のための要求事項です。

提案された変更は、JTCGメンバー (ポートフォリオに1つ以上のMSSを含むすべてのISO専門委員会の委員長及び委員会マネジャーを含む) により承認され、その後すべての ISO加盟機関の投票により承認され、ISOの技術管理評議会 (Technical Management Board = TMB) によって承認されたのち、2023年11月に以下のように調和させる構造に組み込まれました。

追加されたテキスト

箇条 4.1 組織及びその状況の理解

組織は、組織の目的に関連し、かつ、そのXXXマネジメントシステムの意図した成果を達成する組織の能力に影響を与える、外部及び内部の課題を決定しなければならない。

追加されたテキスト: 組織は、気候変動が関連する課題であるかどうかを決定しなければならない。

箇条 4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解組織はこれらを明確にしなければならない。

  • XXXマネジメントシステムに関連する利害関係者
  • それらの利害関係者の、関連する要求事項
  • それらの要求事項のどれがXXXマネジメントシステムを通じて対処されるのか


追加されたテキスト:
注: 関連する利害関係者は、気候変動に関する要求事項を持つことができる。

追加されたテキストの影響

マネジメントシステム規格のユーザーにとって、その適用範囲と目的に関連する課題を決定することは、もちろん新しい要求事項ではありません。多くの組織は、気候変動が自社のビジネスにどのような影響を与えるかについてすでに考え、自社の状況の中で取り組む必要がある関連する課題であるかどうかを判断しているかもしれません。その結果は、各社の方針と目標に反映され、リスクと機会をマネジメントするプロセスの一環として行動/ 展開されます。

しかし、気候変動が自社のビジネスにどのような影響を与えるか、または与える可能性があるかを理解し始めたばかりの組織にとっては、今回の附属書 SL の調和させる構造のテキストの変更は警鐘となるでしょう。

品質マネジメントシステムの場合、主に「ISO9001は製造業のためのものだ」という私に言わせれば時代遅れの考えを持つ人たちだと思いますが、気候変動がそもそも関連する課題なのかを疑問視する人たちもいます。そして、関連する課題ではないかもしれません。それは、各組組織がそれぞれの状況に応じて判断することです。

実際、組織によっては、気候変動を関連する課題として考慮する必要がないことを簡単に正当化できるかもしれません。それは問題ありません。

しかし、例えば、スキーリゾートを運営する会社で、スキー場に雪が降らない場合、農産食品会社で、干ばつにより農作物の品質が通常と異なる場合、あるいは、鉄道会社で、2022年に英国が42℃を記録した際に実際に起こったように、過度の暑さにより運行が中断される場合など、広範な観点から、組織は気候変動がISO 9001:2015の箇条1が規定する「適合する製品及びサービスを一貫して提供する」能力に影響を及ぼす可能性のある課題であることを認識し始める必要があります。

2つの新しい規格 (ISO 7101:2023ヘルスケア組織管理-ヘルスケア組織における品質のマネジメントシステム-要求事項、ISO/IEC 42001:2023 情報技術-人工知能-マネジメントシステム) は、2023年後半に発行される前のドラフトの最終段階でこれらの変更を最初に採用しました。

ISO及びIAF の実施計画

ISOとIAF (国際認定フォーラム) は、長引きがちな改訂サイクルとその後の3年間の認証移行期間を待つことなく、他のすべてのMSSへ変更を迅速に展開するとともに、以下のように要約できる「高速」実施計画を打ち出しました。

  • 合計31のMSS (ISO 9001、ISO 14001、ISO 45001などを含む) の修正版が、2024年2月29日にジュネーブのISO中央事務局から無償で発行された。修正版は ISOのウェブサイトからダウンロードできる。
  • IAFは以下のように判断した。
    • 要求事項の全体的な意図に変更はないため、これらの修正は明確化として扱われ、 (従来の) 完全な3年間の移行プログラムは必要ない。
    • 認証機関は、最初の機会 (定期サーベイランスまたは再認証審査) において、組織とその状況に関する審査に新しいテキストを含めることが望ましい。通常の慣行と同様に、(気候変動 を含む) すべての関連する課題が考慮され ていることを組織が証明できない場 合、「適切な審査所見」を提起することが望ましい (※)。
    • 各規格の最終改訂版の発行日に変更はないため、新たに証明書を発行する必要はない。
※ 私見ですが、修正が公表された後の最初のサーベイランス審査や再認証審査で、審査員が不適合を提起する可能性は非常に低く、ましてや組織の認証ステータスに影響を与えるような重大不適合を指摘する可能性はほとんどないでしょう。

この変更の根拠とその影響に関する詳しい情報は、JTCG のウェブサイトをご確認ください。 また、こちらから詳細情報を入手できます。

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