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ISO 45001への移行: ポーツマス国際港ケーススタディ

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ISO 45001への移行: ポーツマス国際港ケーススタディ

ポーツマス国際港は、ISO 45001が発行されてからちょうど1か月後にOHSAS 18001からISO 45001 への移行登録を果たしました。ポーツマス国際港のシステム/規格コンプライアンスマネジャーであるジョン・フェルサム氏 (John Feltham) に、CQI のアリシア・ディマスがお話しを伺いました。

quality.org に掲載の英文記事はこちらから

ポーツマス国際港はいかにして移行を達成したか
ポーツマス国際港は、ISO 45001 の認証を規格発行からたった1か月後に達成しました。このようにタイムリーに認証の移行を行うことができた主たる理由は何だとお考えですか。

ジョン・フェルサム (JF): 成功の要因は、間違いなく、強いリーダーシップと指揮、そしてプロセスのオーナーである異なる部署のマネジャーたちの部署を横断するチームワークの規範です。

国際港の所管当局やその他の外部の関係者が、私に連絡をしてきて、今回の移行達成についてお祝いの言葉を寄せてくれました。しかし、祝われるべきは私ではありません。私は、プロセスをコーディネートし、情報やアドバイス、ガイダンスを提供しただけです。本当のヒーローは、多岐にわたるチームの人たちです。

  • 港湾調整官は、審査の際のトップマネジメントの面談において、ポーツマス国際港の戦略的方向性と港湾において安全衛生がいかに重要であるかを実証しました。
  • フェリー埠頭管理者は、自身の業務を通じて、オペレーショナルマネジメントチームに日常の運用における貨物、自動車、乗客の移動、クルーズ船やRO-RO船 (貨物を積んだトラックやシャーシ(荷台)ごと輸送する船舶) 業務の取扱いにおける安全衛生を、セキュリティのレベルや顧客満足を維持しつつ、マネジメントする資源を提供しています。
  • 副港長は、港湾海事安全法へのコンプライアンスを維持しつつ、港湾内の安全衛生マネジメントプログラムを調整します。
  • 商業港技術管理者はすべての機器がすべての法令要求事項を確実に満たすよう全力投球しています。

私は、これらすべての人の名前を挙げたいと思います。なぜなら、彼らがいなければ、移行が成功することはなかったと思うからです。部署を横断するチームの文化、関与及びコミットメントなくして、移行を達成できる組織はありません。ひとりの人、あるいはひとつの部署のみで達成することはできないのです。

どのような種類の準備をされましたか。

JF: ポーツマス国際港はすでにISO 9001とISO 14001 を2015年版へ移行させていました。また、ISO 27001「情報セキュリティ」については2006年以来、ISO 22301「事業継続マネジメント」については2011年以来認証されており、OHSAS 18001の認証は2005年以来保持していました。ですから、組織として私たちは非常にシステム志向だと言えます。私たちは、附属書SL が発行され、これがISO 9001及びISO 14001 の移行の基礎として使われたときに準備をスタートしました。私たちは、附属書SL はISO 45001 への移行の準備の手段であると捉えました。ISO 45001 の草案と修正事項が発表され次第、これに沿って自分たちを教育し、最終的な基準はどうなるか、自分たちが感じたところに対し自分たちのチームの理解を積み上げていきました。

3月にISO が発行されるや否や、私たちはただちにオンラインで規格を購入しました。そして、私たちがこうなるであろうと予想していた要求事項と最終版で実際に提示されたものとのギャップ分析を実施しました。うれしいことに私たちの予想は大きく外れてはいませんでした。

新しい規格は、ポーツマス国際港の安全衛生の方針/手順に多くの変更をもたらしたのでしょうか。あるいは、すでに新しいISO 45001 規格の要求事項に十分準備ができていたのでしょうか。

JF: その逆で、私たちのシステムには価値のない、余分な情報がたくさん含まれていました。私たちは今回の取組みを文書化した情報を刷新し、最新の考えに沿ったものにするよい機会であると捉えました。重要なのは、私たちの方針が真にリーダーシップ、コミュニケーションと働く人の参加を反映するようにすることでした。私たちはすでに他の規格の移行の際に、組織の状況の観点から自分たちの利害関係者がだれであるかを洗い出していました。しかし、利害関係者の関与するリスクを見てみると、私たちのリスク評価は安全衛生ではなく、品質と環境のリスクに焦点を当てたものでした。ですから、これに対応する必要がありました。また、内部と外部の影響も異なりました。

新しい規格がもたらした主たる変更点は何でしたか。

JF: 組織の状況、リーダーシップ及び安全衛生に関する事項や規格が要求している事項に関する意思決定プロセスへのスタッフの参加です。

働く人との協議と働く人の参加です。これらの箇条に効果的に対応することにより、法的及びその他の順守義務、オペレーションの管理、緊急事態への準備及び対応とモニタリング、そしてコンプライアンスと改善の測定に対応することが可能になりました。

移行を目指す組織へのアドバイス
OHSAS 18001 からISO 45001への移行を今まさに遂行しようとしている企業に対してはどのようなことをアドバイスしますか。

JF: すでにISO 9001/14001の2015年版への移行を済ませていらっしゃる組織もあるかもしれませんが、ISO 45001に新しくこれから取り組もうとしている組織の方々にも、あるいはOHSAS 18001から移行しようとしている組織の方々にも以下のようにアドバイスします:

  • 安全衛生は組織の戦略的方向性をなす重要な一部であり、トップマネジメントにより導かれるものであることを忘れないでください。
  • 利害関係者を再検討してください。組織あるいは利害関係者に対するリスクは、品質や環境のものと安全衛生のものとでは異なるでしょう。
  • 安全衛生に重点を置いて、内部及び外部の影響を再検討してください。
  • 安全衛生に対する説明責任と責任は明確に定義されていなければなりません。
  • 人々を巻き込んでください。最終決定は、マネジメントがしなければなりませんが、働く人々はリスクと機会について、マネジメントの戦略に役立つ知識をもっています。私たちは、リスクマネジメントの活動を行い、レビューするときに、協議とコミュニケーションを通じて、これを達成しました。また、労働者の代表の出席する安全衛生委員会などのプラットフォームも私たちはもっています。また、フェリーとクルーズの企業、規制当局及び港湾の環境で働く他の組織からの代表者を招き、「港湾ユーザ安全グループ」フォーラムと名付けたフォーラムを開催しました。さらには、職場検査には働く人々からのメンバーに参加してもらっています。
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