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デジタル時代に勝ち残る:サプライチェーンの生産性を高める4つの戦略

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デジタル時代に勝ち残る:サプライチェーンの生産性を高める4つの戦略

「競い合うのはサプライチェーンであって、個々の企業ではない (サプライチェーンマネジメントの提唱者マーティン・クリストファー Martin Christopher の言葉)」ということが30年以上にわたって喧伝されてきましたが、実際にはなかなかそうは行きません。ウォーリック (Warwick) 大学のJan Godsell教授は、なぜこれを達成するのがそんなに難しいのか、またなぜ今、進歩の兆しが見えてきたのかを述べています。

quality.org に掲載の英文記事はこちら

サプライチェーンの生産性が重要なのは、それが過去10年間に多くの先進国が直面してきた「生産性のパズル」を解くための鍵の一つだからです。(英国などの)先進国は、世界的な経済危機後に回復を果たしましたが、生産性は横ばいのままです。これが重要視されるのは、生産性(労働時間あたりに生み出される労働量として測定)が、長期的な経済成長とより高い生活水準の主な推進要因だからです。

生産性は通常、企業レベルで測定されており、より一般的には「効率」として知られています。企業内では、通常、機能 (部門) 別に効率性のレベルで生産性が監視され、さまざまな機能の目標と測定基準によって支えられています。一般的に受け入れられている適正マネジメント基準 (good management practice) では、これらの指標はSMART(specific=具体的、measurable=測定可能、achievable=達成可能、realistic=現実的、timely=タイムリー)である必要があるとしていますが、その範囲は各機能内に限定され、サイロ化 (孤立化、たこつぼ化) された思考の温床となっています。最終的な結果は(よくて)全体としては非効率的な組織の中の効率的な機能であるに過ぎない可能性が高いでしょう。

この非効率性は、サプライチェーンが顧客、サプライヤー、その他の組織へと広がっていくにつれて増幅していきます。サプライチェーン全体、端から端まで (エンドツーエンド) のデータが見えにくい上、これまで長らく分析や意思決定支援ツールが不足していたので、機能のこのサイロ化された見方を乗り越えるのは困難でした。

しかし、過去5年間で状況は変わりました。デジタル技術によるソリューションが出現し、これら両方の課題に対処できる可能性が出てきたのです。私たちは今、産業の進化の次の段階に臨んでいます。そこでは、生産性に大きな変革が訪れようとしています。それは、個々の企業ではなく、サプライチェーンが真に競い合うようになるからです (マーティン・クリストファー Martin Christopher、『Logistics and Supply Chain Management』)。

しかし、産業界はこの変化に対してどの程度の準備ができているのでしょうか?

ヨーロッパにおけるサプライチェーンのデジタル対応

2018年、ウォーリック大学のWarwick Manufacturing Group (WMG) は、JDA (ソフトウェア会社) と共同で、ヨーロッパの179の主要製造業者のサプライチェーンに対するデジタル準備状況を把握するための調査を実施しました。デジタルへの準備状況は4つのレベルで定義されました。

この調査でわかったのは、わずか13%の企業しか、レベル3の準備状況にないということです。レベル3は、高度な分析能力によって変化の激しいエンドツーエンドのサプライチェーン最適化状態を支え、機械学習 (machine learning = ML) と人工知能 (artificial intelligence = AI) の活用を開始している段階です。また、52%の企業がレベル2の準備を整えていました‐レベル2では機能の最適化をサポートするためのいくつかの専門的な分析ツールが活用されています。35%の企業は未だデータの可視化を実現しようとしている段階であり、圧倒的多数がレポートのために単純な分析ツール (例えば スプレッドシート) を使用していました。

2023年までに、レベル3の準備状態は2倍以上、31%になると予測されています。但し、準備の平均レベルは、2.3から2.8へと0.5ポイント増加するだけだと予測されています。見た目には、これは比較的控えめな改善と言えます。実際、この数字は、確立された作業方法や従来のシステムを克服する際に企業が直面する困難を表しています。機能ごとにサイロ化された組織から、エンドツーエンドのサプライチェーンの観点を持つ組織への変化を反映しているのです。

サプライチェーンのデジタル準備を改善するための4つの戦略

サプライチェーンのデジタル準備を一発で改善する方法はありません。技術革新のレベルと影響の大きさを考慮し、リスクをマネジメントするように設計した複眼的なアプローチが必要です。

出典: Godsell (2018)

1. 核となるサプライチェーンプロセスを最適化する

サプライチェーンは、計画、調達、製造、物流、返品の5つのコアプロセスで構成されています(業界標準:サプライチェーン活動参照モデル Supply Chain Operations Reference modelより)。現実には、多くの組織が、現在持っているデータをこれらのコアプロセス最適化のために活用できていません。

最適化は通常、企業資源計画 (Enterprise Resource Planning = ERP) システムの形式で存在するデータインフラストラクチャの構築から始まります。もっとも大切なのは、このデータの重要性を認識し、データの完全性 (インテグリティ) を維持するためのガバナンスプロセスを開発することです。次のステップは、そのデータを持つことが違いを生む可能性のある領域におけるデータ収集の能力を改善することです。そうすれば、高度な分析及び意思決定支援システムを利用して、効率性を改善することができます。これにより、組織が旧来のビジネスを維持するために現在保持しているものを、最大限に活用できるようになります。卓越したオペレーションの基盤を構築し、資金を投じて企業が新しい競争方法に投資できるようにします。

2. サプライチェーンにビジネスプロセス指向 (business process orientation*) を取り入れる

2つ目の段階は間違いなく最も困難なものですが、組織が機能ごとの最適化を超えて進むためには最も重要なものです。組織は、サプライチェーンのマネジメントを、新製品開発 (NPD = new product development) や顧客関係管理 (CRM = customer relationship management) と同様なエンドツーエンドのビジネスプロセスの一貫と捉え、重点的に取り組まなければなりません。そのためには、従来の機能に基づく構造、あるいはマトリックス組織の構造に、ビジネスプロセスの視点を取り込むよう組織構造を変更する必要があります。

ウォーリック大学WMG及びJDA による2016年の研究、『サプライチェーンの細分化 (セグメンテーション):欧州製造業にとって千載一遇のチャンス』によると、ビジネスプロセス指向を組織構造に反映しているヨーロッパの組織はわずか17%であるということです。機能ごとのリソースを活用しつつ、組織の壁を打ち破り、機能ごとの目標ではなく、戦略的な目標を中心に据えてビジネスを最適化しようとするなら、ビジネスプロセス指向を取り込むことは非常に重要です。

* Business process orientation は、デミング、ポーター、ダベンポートなどの研究に因って立つ概念で、企業は「プロセスビュー」を採用することによって全体的なパフォーマンスを向上させることができるとしています。

3. サプライチェーンのデジタルテクノロジー・トライアルのリスクの軽減

サプライチェーンの個々の側面を改善するために企業が利用できるテクノロジーはたくさんあります。これらのテクノロジーを安全にトライアルできる場所をつくることが重要です。調査を万全に行えば、失敗を減らすことはできるかもしれません。しかし、失敗から学ぶための適切なプロセスを備えているのなら、組織は「早く失敗する (fail fast* フェイルファスト)」ことを恐れてはなりません。デジタルテクノロジーを試しに使ってみる際のリスクを取り除く方法の1つは、トライアルの対象を明確にすることです。

リスクを最小限に抑え、最大限に学ぶためには、現在もっている能力を少しずつ伸ばしていく必要があります。今あるプロセスに新しいテクノロジーを用いてみる、あるいは従来のテクノロジーを新しい方法で利用してみましょう。しかし、両方同時に行うことは避けます。そうすれば、トライアルが成功しても、失敗しても、その理由は明確です。また、現在のテクノロジーに便益をもたらす応用方法が現状では限られている場合、トライアルを行うことは、新しいテクノロジー (例えば、ブロックチェーンや分散型台帳技術など) の学習曲線を上向きにする道を提供することにもなります。そうなると、テクノロジーにとって有益な応用方法が明らかになった暁には、先行者として優位な立場を確保するのに役立つでしょう。

* 「Fail fast, 早く失敗しろ (失敗は成功の母)」はシリコンバレーなどのベンチャー企業でよく用いられている標語。Google を成功に導いた方法論として有名。


出典:Ansoff (1957) から Godsell (2018)

4. 新しいビジネスモデルを探索する

私たちは、産業の進化の2つの段階の間の移行点にいます。移行は、価値を創造し、提供する方法を再定義する大きなチャンスです。環境及び社会的コストが消費主導型成長の経済的利益を上回り始めています。責任ある消費主義は、私たちに、より少なく、環境にやさしい製品やサービスを、公正に購入するよう促しています。これは、どうすれば「モノ」をできるだけ長く、可能な限り最高の価値ある状態で保持できるかということを、より広く共有し、検討することを促すビジネスモデルの再定義です。製品の提供から、サービスの提供へのシフトが見られ、サプライチェーンの設計の変更がこれを支えています。

デジタルテクノロジーは、これらの新しいビジネスモデルを実現するための重要な要素です。新しいビジネスモデルは破壊的であり、組織の短期的な成功をよりどころとする従来のビジネスモデルと直接対立するビジネスモデルとなることもしばしばです。小規模な組織にとっては、より俊敏な (agile アジャイルな) 組織構造の利点を活用する絶好の機会となります。従来型の大企業は、実際に実現可能なことを自由に追求できる組織を別個つくり、未来のビジネスモデルを構築することを検討しましょう。

私たちは変化―希望的には、よりよくなるための変化―の最前線にいます。その結果、デジタルテクノロジーを賢く利用することで、経済成長と生産性の新しいモデルを支えるためにサプライチェーンが競い合うようになるでしょう。

著者について: Jan Godsell氏は、ウォーリック (Warwick) 大学、Warwick Manufacturing Groupのオペレーション及びサプライチェーン戦略の教授です。

※IRCAの各詳細は下記よりご確認頂けます。

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