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ISO 45001の今後の動向 - 新しいタスクグループとその役割

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ISO 45001の今後の動向 - 新しいタスクグループとその役割

2021年12月に行われたISOによるレビューの結果、ISO 45001の早期の改訂は見送られました。しかし、早くもISOにおいて労働安全衛生マネジメントシステムを担当する技術委員会TC283 により新しいタスクグループが設立されました。改訂見送りによる影響と新しいタスクグループの役割を見ていきます。

ISO 45001のこれまで

ISO 45001 - 労働安全衛生マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引」が初めて発行されたのは、2018年3月でした。ISO 45001 の基本的な内容の多くは、その前身である英国規格 OHSAS 18001を踏襲していますが、強力なリーダーシップ、働く人のより多くの参加、健康 (特にメンタルヘルス) への配慮などが強調されています。

OHSAS 18001からISO 45001への移行期間は、当初3年とされていましたが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響を受け、国際認定フォーラムが6ヶ月の延長を決定しました。その移行期間も2021年9月30日についに終了しましたから、OHSAS 18001からISO45001への移行を希望するすべての組織が移行を完了しているはずです。

移行期間が終了するとほぼ同時に、45000シリーズの規格維持を担当するISO委員会であるTC283が、45001の更新についてどのような行動を取るべきかを決める投票が開始されました。規格は5年ごとに「体系的レビュー systematic review」が行われ、規格を更新するか、現状のまま維持するか、廃棄するかが決定されます。

ISO 45001の体系的レビューの結果

ISO 45001の投票は2021年12月初旬に終了しました。委員会のリーダーたちは刷新を希望していましたが、結果的には圧倒的多数の国家標準化団体が規格をそのまま維持することを希望していることが明らかになりました。この決定により、早くても2030年まではISO45001に変更が加えられない可能性も出てきました。つまり、次の投票が行われるまでに5年、その後、新版を修正して発行するまでに3年かかるからです。OH&Sの慣行、プロセス、技術が「現実世界」で急速に変化していることを考えると、ISO45001がどんどん無用の長物になってしまう危険性は十分にあります。

ISO 45001を巡る新たな動き

この点については、TC283のリーダーたちにはいつでも新しい投票を開始する権限がありますが、それが賢明かという点からは、変化に対する現在の反対の度合いを考えると、時を置かずに改訂を納得させるのは難しいでしょう。その代わりに、「TG6 - Preliminary work for future revision of ISO 45001 (ISO 45001の将来の改訂に向けた予備作業)」という新しいタスクグループを設立し、次の体系的レビューが終わるまでは行われない作業を今から行うことを決定しました。この作業には以下が含まれます。

  • ISO45001の初版のDIS2 (国際規格案2) に寄せられた約1500件のコメントのうち、議論されなかったものをレビューする

  • 体系的レビューの投票時に寄せられたコメントをレビューする

  • 2021年のユーザーアンケートに寄せられたコメントをレビューする

  • より包括的となるよう、より明確な表現を使用できる分野について、ISO 45001をレビューする

  • ISO 45001が小規模組織に適しているかどうか見直す

  • TG4*でのテーマ設定作業で明らかになった重要課題をレビューし、それに対応するための文章を起草する

  • 改訂された附属書SLに沿った予備的な草案を作成する


これらの作業を事前に行っておくことで、実際に規格を刷新する際には、より迅速に作業を進めることができます。そうなれば、スケジュールが4年ほど前倒しになり、2026年にはISO45001第2版が登場するというのが、現在、考えられていることです。

*TG4で議論された課題に関する記事
>>ISO 45001/ ISO 9004 の将来へ向けての議論が始まっています

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018