審査員が被審査/監査側になるとき
マーク・ウォルシュ (Mark Walsh CQP MCQI) が、審査員が審査される側となった場合にどのような問題に注意すべきかを詳しく解説します。
審査/監査を受けることは、多くの個人や企業にとって緊張し、困難を伴う経験です。綿密な調査、書類審査、そしてその結果は、大きなストレスを生む可能性があります。では、自分自身が資格を持った審査員でありながら、審査/監査を受けることを想像してみましょう。
ISOに特化したコンサルタントの多くは、システムを開発し、実装し、保守するだけでなく、審査員の資格を持っていることも少なくありません。ここでは、審査/監査プロセスの両サイドに立つ立場からの視点を共有したいと思います。
不安感
審査員の資格を持つ者として、自分の仕事を審査/監査されるのは不安を伴います。外部審査/監査員による詳細な審査/監査の対象となるだけでなく、内部監査においても、おそらく外部審査/監査時以上に、あなたの仕事は詳細な調査の対象となります。
多くの会社と同様、コンサルティングサービスを提供している場合、一般的な重要業績評価指標 (KPI) は、外部審査/監査でのパフォーマンスです。なぜ自分は外部審査/監査からの不適合リストを提示しているのか、理由を顧客に説明することを想像してみてください。審査員として、少なくとも審査/監査に関して何をカバーすべきかを承知していなかったことをどう説明しますか?
防御モードに入る誘惑も避けなければなりません。審査員によって要求事項の解釈が異なることは非常によくあることであり、そのような場合、一方の当事者が、自分たちの解釈が正しいと主張し、防御的になる可能性があります。
自己評価
審査/監査を受ける際に直面する課題のひとつが、自己評価です。私たちは審査員として、定められた基準に照らした審査/監査、ベストプラクティス、正確な記録 (監査員のメモなど) の重要性などに精通しています。しかし、これは審査/監査業務以外で行われる業務に必ずしも反映されるとは限りません。私たちの仕事に対する個人的な先入観や感情的な思い入れは、時として判断を鈍らせ、自分の仕事を評価するときに、他人を評価するときのように厳密になることが難しくなります。
重要なのは、審査員に受け入れられるということを基準に通常の仕事を展開しないということです。何人かが間違いなく陥っている罠だと私は恐れています。
独立性と専門家としての懐疑心
独立性と専門家としての懐疑心を維持することは、審査員にとって極めて重要です。しかし、私たちが審査員でありつつ同時に審査/監査を受けている場合、このバランスを取ることがより重要になります。審査員である私たちは、審査員としての役割と被審査/監査側としての役割を分け、専門家としての誠実さを損なわないように努めなければなりません。そのためには、規律ある考え方と、他の審査/監査に適用するのと同じ綿密な調査をもって自らの監査を扱うという取り組みが必要です。
洞察力と理解力の強化
すでに資格をもっている審査員が審査/監査を受けることの利点のひとつは、プロセスを直接経験することで得られた洞察力と理解力が高まることです。私たちは、審査員と被審査/監査側の双方が直面する課題を深く理解することができます。このユニークな視点により、私たちは両当事者に深く共感し、審査/監査プロセスを通じてコミュニケーションの改善、相互尊重、理解につなげることができます。
利益相反の緩和
審査/監査を受けている間、資格を持つ審査員は潜在的な利益相反に留意しなければなりません。私たちは客観性を維持し、個人的または専門的な先入観が監査の完全性を損なわないようにしなければなりません。これは、審査員としての役割と個人的または職業上の利益とが相反する可能性がある状況に対処する際に、特に困難となる可能性があります。これらをマネジメントするには、透明性とオープンなコミュニケーションが最も重要になります。
継続的な専門能力開発
審査/監査を受けると同時に資格をもつ審査員であるという経験は、私たちに継続的な専門能力開発の機会を与えてくれます。私たちは、自らの審査/監査経験から学び、改善の領域を特定し、審査員と被審査/監査側が直面する実際的な課題について理解を深めることができます。これは、審査/監査を実施するための独自のアプローチを洗練させるうえでも、審査/監査を受けるための準備をするうえでも、非常に貴重なものです。
まとめ
結論として、審査員を審査/監査すること、審査員として審査/監査されることは、厳格さの強化、専門的洞察力、コミュニケーションの向上といったメリットをもたらします。しかし、客観性、潜在的な利益相反、防御的な行動に対処する必要性などを慎重にマネジメントする必要もあります。これらの課題を効果的に乗り越えることで、審査/監査プロセスを誠実に実施し、審査/監査業務の継続的な改善に貢献することができます。