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目標を正しく設定・周知することの意味 – 実行なくして成功はない

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目標を正しく設定・周知することの意味 – 実行なくして成功はない

目標設定は、ビジネス計画及びプロジェクト計画の策定において非常に重要な活動です。しかし、設定した目標が個々の階層の目標に正しく展開されず、目標達成のための活動が実行されなければ、机上の空論に終わってしまいます。どうしたら失敗せずに確実に達成できるでしょうか? (Quality World 6月号より)

目標を設定し、周知することにより、企業は上位の合意を確認し、スタッフは組織のミッションを十分に意識することができるようになります。組織としての目標を各部門/スタッフの具体的な成果目標へと落とし込むことにより、組織が何を目的としているのか、成功を達成するために何をやらなければならないのかが明確になります。組織としての目標を伝達し、落とし込むための体系的なフレームワークには、グーグルも採用している目標管理手法 OKR (Objectives and Key Results) などさまざまな方法があります。しかし、組織のミッションと整合する文化を組み込むために必要な実施戦略と効率戦略を十分に理解した上でこれを実施している組織は多くはありません。

これは、常に文化の衝突を目の当たりにしてきたクオリティの分野で特に顕著かもしれません。例えば、シューハート (物理学者、技術者、統計学者)、ジュラン (工学者)、そしてフェイゲンバウム (品質管理のエキスパートにしてビジネスマン) は継続的改善とプロセス開発、信頼性と再現性の概念を掲げ、クオリティの運動を推進しました。これまで、トヨタやモトローラといった企業ではこれら先達の取組みを、統計的なエンドツーエンドプロセスの分析を通して、大量生産における製品及びサービスクオリティを強化するために導入し採用してきました。しかしながら、最近では、多国籍企業がお粗末なガバナンスのために、自らの評判を傷つけている例が珍しくありません。

目標を実施するときには、下記の簡単なステップを適用することにより、組織に対する世評を強化する、積極的なリーダーシップと成功する文化を促進することができます:

  1. SMART に働く: 「Specific 具体的に、Measurable 測定可能な、Achievable 達成可能な、Relevant 関連した、Time-limited 時間制約がある」ことを示す、SMARTに働くという概念は、企業のニーズに合うように常に進化しています。これは効果的なツールであり、成功への集中と動機づけを促進します。SMART は標準化したプラットフォームを目標設定の定義に与えます。
  2. 成果物により裏付けられる目標: 最上位の目標を小さな受け入れやすい形に分解することは、より具体的な全体像を描き、上から下へと展開されてきた成果物目標を個人や部署に合うものにするのに役立ちます。これを行動計画と整合させれば、進行中もしくは計画中の活動に沿って、効果的に伝達することができます。
  3. リスクに基づく考え方: もっとも重要なのは、成功達成に影響を与える課題を理解することです。理解すべき影響にはプラスのものもマイナスのものも含まれます。私たちは、規模に関係なくすべての成果物のライフサイクル全体を通して、これらの側面を検討しなければなりません。創造性と柔軟性を制限することは、成功の可能性を制限することにつながります。
  4. 組織レベルから部門レベルに落とし込む: 従業員が組織の目標を理解し、自分はどのように組織の成功に寄与できるかに落とし込むのはかなり難しいことかもしれません。ミッションと組織の目標を部門や個人のレベルに効果的に伝達することは、従業員に明確な視点と自信を与えることになります。しかし、解釈が間違っていれば、効果的な実施はできません。
  5. 目標達成を称賛し、正しく評価する: 目標達成を常に正しく評価することにより、前向きな反応が保持され、達成のための推進力が保たれます。たとえ、簡単に伝えたり、評価したりということであっても、非常に効果があります。

これらの要素を考えることにより、最新のISO 9001:2015 の箇条5リーダーシップと箇条6の上位構造の計画への適合を示すことができます。組織、タスクや課題の規模や複雑さに関係なく、共通のアプローチに融合することが極めて重要です。

よく組み立てられ、周知された計画を合意された測定可能な目標に適用することは、チームと組織の意識を確かなものにし、自信を与え、エンゲージメント (積極的な関与) を促進します。すべての人が、成功達成に寄与することに対して説明責任を負っています。つまりすべての階層でお互いに説明責任があるということです。さらに、測定により、成功を阻む制約やリスクを理解することができるようになり、マイナスの事象の影響を制限したり、予防したりするための反応時間が決定的に改善されるでしょう。

クオリティはもはや生産コストに限定した話ではありません。継続的な改善は、ビジネスの成功、専門職に不可欠な文化、慣習となり、そしてももっとも重要なのは、私たちが影響を与え、支えるべき「生活の質 QOL」の原動力となっているということです。これこそ、究極の成功の物差しではないでしょうか。

本稿はCQI|IRCA の発行する専門誌「Quality World 2018年6月号」のコラム Experts Uncut 欄に掲載されました。著者のアンドリュー・ベッツ (Andrew Betts, PCQI, BSc(Hons))は化学製造企業であるピュロライト社 Purolite のSite Quality Lead です。

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