あなたの品質マネジャーとしてのAI

The Access Group のガバナンスおよびコンプライアンス マネジャーである主任監査員の ルーシー・ウィドウソン (Lucie Widdowson PCQI) が、品質マネジメントにおける人工知能の活用について概説します。
品質マネジメントにおいて、人工知能 (AI) はいつの間にかますます無視できない存在となっています。それは決して突然、革命が起きたというのではなく、すでに使用されている多くのツールやシステムにそれとなく組み込まれてきたためです。誰に話を聞くかによりますが、AIは品質の職務の形を一変させるとも、廃れさせてしまうとも言われています。
実際には、どちらの立場もほとんどの品質部門がどのように機能しているかを反映していません。これまでの多くの技術と同様に、AIも慎重かつ状況を考慮して適用すれば本当に役立ちますが、同時に慎重な監督を必要とする新たなリスクも生み出します。
品質管理者、QMS (品質マネジメントシステム) 責任者、主任監査員や内部監査の担当者にとって、より重要な問いは「AIが自分たちの仕事に導入されるかどうか」ではなく、「本当に品質の成果を支える形でAIが活用されているかどうか」です。AI が事務作業の負担を軽減し、可視性を向上させる場合もあるでしょう。一方で、複雑さが増し、説明責任が曖昧になり、一見信用できるように見えるけれども注意深い精査が必要なアウトプットを生み出すこともあります。
アシスタントについて知っておきましょう
品質環境に導入されているAIツールのほとんどは、大きく2つのカテゴリに分類されます。第1のカテゴリは、文章の作成、要約、分析が可能な汎用言語モデルで構成されます。第2のカテゴリは、品質、運用、またはデータプラットフォームに組み込まれた専門的なアプリケーションです。どちらのカテゴリも潜在的な価値を提供しますが、どちらについても確実に実行できることと実行できないことを明確に理解する必要があります。
汎用モデルは、手順の見直し、監査報告書の構成、所見の要約、是正処置計画の支援などの活動をサポートする場面で、ますます使用されるようになっています。中には、長文の技術文書を扱う際に特に強みを発揮し、品質チームが膨大な方針群やレガシーシステムをより効率よく扱えるよう支援するものもあります。また、既存の生産性向上プラットフォームとうまく統合し、日常的な文書作成に費やす時間を削減できるものもあります。注意して使用すれば、これらのツールは一貫性と効率性をサポートします。批判的な視点を持たずに使用すると、表面的には洗練されていても、文脈的には不適切なアウトプットを生み出すリスクがあります。
言語モデルと並んで、AI対応の生産性向上ツールが日常的な品質業務の一部になりつつあります。文字起こしや要約ツールは、マネジメントレビュー、監査、インタビューに伴う手作業の負担を軽減します。アクショントラッカーは、フォローアップや説明責任といった、多忙な組織では実務的にしばしば課題となる領域をサポートします。データ分析プラットフォームは、AIによるトレンド分析や予測機能を備えるようになり、これによりパフォーマンス指標、プロセスのばらつき、新たなリスクを品質管理者が解釈する方法に変化が生じています。これらはいずれも専門家の判断に取って替わるものではありませんが、適切に活用すれば可視性を高めることができます。
ソフトウェアやデジタル製品の分野では、AIコーディングアシスタントはすでに広く定着しています。品質の観点から言えば、それらの価値はスピードよりも、一貫性、初期段階での欠陥発見、手直しの削減にあります。規制対象のシステムや安全性が重視されるシステムを監督するチームにとっては、これらの利点は適切なレビュー、トレーサビリティ、ガバナンスに完全に依存します。そうしたコントロールがなければ、リスクは単に移動するだけで、消滅しません。
より高度なアプリケーションは、専門化されたQMSプラットフォーム内にますます組み込まれつつあり、AIは予測的な不適合の特定、CAPA (是正および予防処置) ワークフロー、FMEA(故障モード影響解析)の開発、そして統計的工程管理をサポートしています。これらの機能は、プロセスが成熟し、データの品質が高い場合には予防的なアプローチを強化することができます。しかし、こうした基盤が弱い場合には、AIは既存の問題を解決するどころか、むしろ増幅させる傾向があります。
監督の徹底
ガバナンスは非常に重要です。ISO/IEC 42001:2023『情報技術−人工知能−マネジメントシステム』は、AIのマネジメントにPDCA (Plan, Do, Check, Act) 構造を適用することで、リスク評価、ライフサイクル管理、サプライヤーの監督、説明責任などの領域をカバーする有用なフレームワークを提供しています。すでにISO 9001やISO 27001のマネジメントシステムを運用している組織にとって、このアプローチは既存のガバナンス体制に自然に組み込まれ、並行した構造を導入せずにAI関連のリスクを規律ある方法でマネジメントする手段を提供します。
導入データでは、AIの活用は多くのセクター、特に製造業や運用環境においてすでに広く普及していることが示唆されています。しかし、これらの数値の裏にしばしば隠れているのは、結果が依然としてどれほどばらついているかということです。調査では、ほとんどの課題は技術に関するものというよりも組織に関するものであることが一貫して示されています。これは、設計上はしっかりしているように見えたマネジメントシステムを導入したものの、実際の運用で苦労した経験のある人には馴染み深いことでしょう。技術が意図した通りに機能したとしても、実は周囲のプロセスや行動、管理の在り方が価値の実現を左右しているということが多いです。
品質や監査の担当者にとって最も重要な懸念事項の一つが、ハルシネーション (hallucination = 幻覚) の問題です。AIシステムは、非常に理路整然として自信に満ちたアウトプットを生成することができますが、その内容が実際には事実と異なっていたり、文脈的に誤解を招いたりすることがあります。比較的低い誤り率であっても、正確性、証拠、トレーサビリティが不可欠な環境では問題となります。AIが生成した監査所見は検証が必要であり、提案された是正処置には専門家の判断が求められ、データの出力結果は元の情報と照らし合わせて検証しなければなりません。出力結果を確認する手間が、節約できた時間を上回る場合、効率性向上の利点はすぐに失われてしまいます。
規制上の許容性はさらなる検討事項をもたらします。AIが生成した、またはAI の影響を受けた文書は、人間が監修したものであるという明確な証拠がない場合、規制当局、顧客、または認証機関からの精査に耐えられないかもしれません。新たな法律や規制ガイダンスは、特に規制対象や安全性が重要なセクターにおける透明性、説明責任、リスクマネジメントをますます重視するようになっています。このような状況下では、ガバナンスが不十分なAIの利用は、リスクの軽減どころかリスクを生み出す可能性が高くなります。
共通のアプローチ
AIを効果的に活用している組織には、共通したアプローチがあるようです。それらの組織ではAIを意思決定者ではなくアシスタントとして扱い、明確な説明責任を維持し、その導入に経営層が継続的に関与するようにしています。AIは、パターン認識、データ統合、定型的な認知作業など得意分野に活用される一方、判断、優先順位付け、倫理的な意思決定は人間の責任として残されています。
導入を検討しているクオリティプロフェッショナルにとって、最も重要な問いは技術的なものではなく、実務的なものです。基礎となるデータは信頼できるのか?プロセスは自動化の恩恵を得るのに十分なほど安定しているか?どこまで検証が必要で、実施と説明の最終的な責任はどこにあるのか?大量で複雑性の低い業務は、専門家の判断や微妙な解釈が必要な業務よりも、一般的により大きな価値をもたらします。
AIは、現実主義、ガバナンス、そして専門家の判断への敬意をもって導入されるとき、品質マネジメントに真の機会をもたらします。適切に使用すれば、AIは事務的業務の負担を軽減し、見識を深め、品質管理者や主任監査員、内部監査チームが保証や改善、戦略的リスクに集中できるよう支援できます。AI はクオリティプロフェッショナルにとって代わるものではありませんが、責任を持って活用すべき場面と活用すべきでない場面を理解している人は、AIを無視したり過度に依存したりする人よりも有利な立場になるでしょう。
本記事は、専門家としての経験、同業者の見識、そして公表された研究を基にしています。AIは分析の対象として議論されていますが、判断や解釈、結論は引き続き人間主導で行われます。











