適合性の門番から、卓越性の戦略的促進者へ

英国のManutan InternationalでGroup Quality Director を務めるディミトラ・コウツォチェラ (Dimitra Koustsochera PCQI) 氏が、品質部門が組織のレジリエンス向上に貢献できる理由を説明します。
品質部門はどう見られているか?
多くの組織において、品質部門はしばしば適合性のためのチェックポイント、つまり監査をマネジメントし、適合性を確保し、(検査の際や顧客からのフィードバックを通じて) バラツキの防止を担うチームと見なされています。私たちは皆、これらの責任が重要であることは認めています。しかし、これらだけに焦点を当てると、品質部門は促す存在ではなく制限する存在と見なされる危険性があります。
例えば、品質部門は、品質が悪い、または十分な規制書類がないという理由で製品サンプルを却下し、最終的に製品のリファレンスプロセスを遅らせるチームである認識されているかもしれません。しかし、品質承認は単に従わざるを得ない製品リファレンスプロセスの一工程ではないとしたらどうでしょうか。もし、製品の公開後に品質承認を受けたことによる本当の利点を品質マネジャーが理解し、どの製品マネジャーも強く望むようなものであるとしたらどうでしょうか。利点とは、例えば、顧客満足度の向上、より肯定的なカスタマーレビュー、売上の増加、そして利益率の向上などが挙げられます。
品質リーダーとして、私たちが目的をどのように伝えるかが、他部門機能からどのように見られるかに影響を与えると強く信じています。品質の重要性と影響は、不確実な時期にこそ試されます。例えば、サプライチェーンが混乱し、システムがパフォーマンスを発揮できず、顧客が不満を募らせ、最終的に売上が減少してしまう状況です。
クオリティプロフェッショナルは、リスク、プロセス、人などの変数間の相互作用をよく理解しているため、システム全体を見渡すことができます。そして、この理解によって弱点が危機に発展する前に予見でき、他の部門やトップマネジメントが事実に基づいて行動し、意思決定できるようサポートすることができます。
品質とレジリエンスの文化を根付かせる
構造化された堅牢な手順があるからといって、必ずしも組織がレジリエント (回復力がある) であるとは限りません。レジリエンスは、組織文化が継続的な学習、適応力、そして共有された説明責任を基盤とするときに生まれます。上記の特徴に基づいた組織文化に品質を組み込むことで、リスク意識や継続的な改善を品質部門だけでなくあらゆるチームの日常業務に統合することができるようになります。
実践的な応用例としては、以下のようなものがあります。
- 品質チームは、業務チームや営業チームと協力して共通の目標を作成できます。例えば、売上高を達成できない場合、達成を促す策のひとつとして、現在よりも短期間で製品をウェブサイトに掲載することが求められています。そこで、新製品の公開が遅れる要因となるプロセスを特定し、バリューストリームマッピング (VSM) などのリーンツールを用いて最適化する必要があります。
正しい製品文書の作成が遅延の要因となっている場合は、製品ファミリーごとに必要な証明書を事前に定義するルールを設けることを検討できます。これをサプライヤーに送る「見積依頼書」に組み込むことで、すべての関係者が初めから要求事項を明確に把握できます。このようにすることで、サプライヤーから誤った書類が送られるのを防ぎ、正しい書類が届くまで付加価値のないプロセスを繰り返す必要がなくなり、プロセス全体の遅延を回避できます。最終的に、品質目標がビジネス戦略やリスクの優先順位を確実に支援するようにすることができます。 - 別のアプローチとしては、ダッシュボードやストーリーテリングを使ってパフォーマンスやリスクを可視化する方法があります。こうすることで、意思決定者にとって意味のあるデータにすることができます。具体的な例として、物流センターのパフォーマンスとリスクのダッシュボードを見てみましょう。意思決定者が業務効率、配送のパフォーマンス、在庫の正確性を監視できるように支援する必要があります。主要な業績評価指標のスコアカードやゲージ、オンタイム配送や注文正確性などの指標を用い、パフォーマンス状況(目標達成、やや未達成、重大な問題)を色分けで示すダッシュボードを作成できます。
さらに、期間ごとのトレンドを示す折れ線グラフや、地域ごとの配送遅延およびリスクの重大度を示すヒートマップも活用できます。ダッシュボードを役員に説明する際には、データ、洞察、対策を結びつける簡潔なストーリーで語ることが重要です。 - 最後に、すべての役割において品質のオーナーシップを促すことで、レジリエンスは部門の課題ではなく、組織全体の責任となります。クオリティプロフェッショナルは、組織内の各機能にツールを提供し、継続的改善の文化を根付かせることができます。これにより、品質にバラツキが発生した際には特定のアクションが自動的に実行されます。
たとえば、組織の中心に顧客を置いている場合、顧客に問題が発生したときには、その都度、根本原因分析、5 Whys (なぜなぜ分析)、DMAICプロジェクトなどのリーンツールを用いて問題の根本原因を特定し、解決策をブレインストーミングし、影響や労力のマトリクスで優先順位をつけて、顧客の問題を一挙に解決できるようにすべきです。このアプローチは各部門の慣習とすることができます。顧客不満がない場合や問題が認識されていない場合でも、改善の機会を見つけるためにGembaウォークを活用することができます。
このように品質が組み込まれると、組織は危機的な状況にも対応でき、迅速に適応できるようになります。品質は、予測外の事態に直面したとき、チームが頼りとする一貫性と自信をもたらします。
品質をリスク管理の推進力として
リスクマネジメントとは、不確実性を予測し、それに対応するための準備をすることです。これは、監査、是正処置、プロセス設計、データ分析を通じてクオリティプロフェッショナルにとっては一般的なことです。これらの活動への期待は、運用レベルから戦略レベルへとシフトしています。
品質マネジメントシステムを企業のリスクマネジメントのフレームワークと連携させることで、クオリティプロフェッショナルは以下を実現することができます。
- 品質リスクとより広範なビジネスリスクとの相互依存関係を特定する
- トレンド分析や業績データを用いて新たなリスクに関する証拠に基づいた洞察をリーダーに提供する
- リスクに基づく思考を意思決定に組み込み、組織が迅速かつ自信を持って行動できるようにする
困難な時期には、この能力が極めて重要です。品質部門はバランスを維持するのを助け、クオリティプロフェッショナルはデータと構造によって組織を導くガイドとなります。
レジリエンスを築く
クオリティプロフェッショナルは進化し、適合性/コンプライアンスの守護者からレジリエンスの構築者へとシフトしてきました。不確実な世の中において、組織には持続し、学び、適応できるシステムが必要です。クオリティプロフェッショナルは、リスクが拡大する前にそれを可視化し、課題が発生したときには道筋を整え、そして危機が収束した後には学び取ることができます。
困難な時期には、品質こそが組織を支え、責任ある行動を促し、前進の準備を整えます。このようにして、私たちは品質を門番としてではなく、レジリエンスと成功を可能にする強さとして再定義するのです。











