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トータルフードチェーンを把握し、最適な業務改善を試みる

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トータルフードチェーンを把握し、最適な業務改善を試みる

プロフィール

●氏名: 小澤 喜久夫
●所属企業:小澤事務所
●取得資格:IRCA登録(QMS&FSMS)、消費生活アドバイザー
●専門領域:食品

参画活動の概要と動機・目的

品質保証と言う考え方を初めて知ったのは1995年でした。当時在籍していた日本リーバ(現ユニリーバジャパン)では、本社品質保証部(オランダ)より全世界の関連部署に品質保証システムの導入が通知されました。製造した製品を抜き取り検査して品質を確認する品質管理とは異なり、製品設計の段階から安全な食品を設計する、製品の危害を低減する製造工程を明確に管理する、工程で安全を作り込むという考え方に大きく共感しました。ユニリーバアジア太平洋地区の食品安全監査員としてグループ内工場監査を行うと共に、自社工場でのHACCPの導入を行いました。それ以来、ISO9001、ISO22000、FSSC22000、製造元第二者監査に関わってきました。

食品は非常に多くのバラエティーが存在するため、その製造工程も多岐にわたります。食品の製造工程は単位操作として科学で整理できる部分と、原料が農産物などであるが故に経験を必要とする部分があります。同じ食品であっても地域や国が違えば、製造方法が異なる事もあります。食品製造はローテク&ハイスキルという事もできます。化学工学で単位操作を研究した強みと、多くの食品製造や第二者監査を通して工程中の微生物危害や製造装置の偏差に起因するリスクを低減させた経験を、社内のノウハウとして蓄積してきました。

食品安全に特化すれば、製品のリスクは、設計の段階、原材料、製造工程、包装工程、保管配送、作業員の衛生管理など様々な所に存在します。これらのリスクから真のハザードを特定し、それらを許容可能なレベルまで低減する仕組みを構築する事が食品安全に繋がります。そのために、原材料供給業者への監査、受入検査、適正製造基準、作業手順書、工程内検査、製品検査などの手順を明確にした仕組みを作ります。しかしこれだけでは十分では無く、決められた仕組みが製造現場で手順通りに実施されているかを確認することが必要です。製造現場での手順の実施確認は、簡単では無く、自社工場やこれまで監査を行った製造元でも盲点になっている例が多く見られました。製造現場に食品安全を定着させるには、仕組み作りに加え、工場や会社の経営陣が食品安全に優先順位を与えることも必要不可欠です。

現状のご自身の活動及び、IRCAメンバーへのメッセージをお願いします。

現在はQMSや及びFSMSの審査員として活動しています。大企業の場合は、多くの社員が講習会を受講し、コンサルタントと契約してマネジメントシステムやHACCPを作り上げていく場合が多い。しかし中小企業では予算や人的資源の制約があり、なかなか外部の応援を頼みにくいのが現状です。食品衛生法の改正によるHACCP義務化を契機に、多くの業界団体が手引書を作成している事は、中小企業における食品安全を広く普及させるためには歓迎すべきことです。

業務遂行時に発生した良い点を水平展開する、課題を解決、改善するために原因を特定、対策をとる、あらかじめリスクを予測してそれに備える、などは日常の業務である程度普通に行われている事と考えます。これを仕組みとして組織的、あるいは系統的に行い、業務の質を継続的に向上させる事がマネジメントシステムであると理解しています。そのためには、自部門の業務を理解するのみでなく、他部門の業務との繋がりを理解する、さらにその他のステ-クホルダ-との繋がりを理解する事が必要になります。これは会社の業務全体のみならず、原料から消費までのトータルフードチェーンを把握し、そこから最適な業務改善を試みる事を意味します。しかし言うは易し、行うは難しです。そのために、IRCAジャパンの月次会などの活動を通じて、自分の知識や経験、食品安全の考え方などやメンバーを議論しながら、互いに高めあう機会を持てる事、を期待します。

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