食品安全の国際間コミュニケーションを担う専門家育成の重要性を考える
プロフィール
氏名: 渡辺敏雄
●所属: ⾷品安全サポート代表
●取得資格: IRCA登録FSMS プリンシパル審査員、JRCA登録EMS 主任審査員、FSPCA登録PCQI
●専門領域: ⼀次産品及び⾷品製造加⼯における⾷品安全・コンプライアンス、環境・サステナビリテイ
●業界活動: GFSI JAPAN分科会メンバー JFS規格設⽴準備委員会メンバー
農林⽔産省主催FCP(フードコミュニケーションプロジェクト)ファシリテーター
内閣府⾷品安全委員会⾷品安全モニター
参画活動の概要と動機・目的
2021 年まで総合商社及びそのグループ会社において約20 年間⾷品安全業務に従事してきました。その間国内外の⾷品業界では多くの⾷品事故・事件等が発⽣する中、例えば⾷品製造加⼯をその主なセクターとした⾷品安全に関する国際認証規格も、ISO22000 やGFSI(Global Food Safety Initiative)各承認規格等が誕⽣し、我が国はじめ世界中の組織に現在進⾏形で導⼊され、また拡⼤しています。
(※上記各規格⽂書共、主にGMP・HACCP・MS 3分野の要求事項より構成されています。)
⾃⾝は様々な⾷品安全業務に従事、特にその中でも国内外のグループ企業や取引先サプライヤー等の⾷品製造施設を対象とした第⼆者監査に⻑年注⼒(国内外合わせ約1,000件の監査実績、内約3割が海外の⾷品製造施設)してきました。
(※海外サプライヤー監査の際、特にアジア圏や欧⽶の現場でIRCA の認知度を幾度も確認できたことが記憶に残ります。)
その為2007 年にはIRCA にFSMS 審査員補登録、その後2016 年に主任審査員昇格、また2017 年には所属組織がIRCA OEA制度を導⼊、組織における当該分野の監査員等⼈材育成の仕組み構築を推進することとなりました。
以前、厚⽣労働省主催「輸⼊⾷品の安全性に関するリスクコミュニケーション」に登壇の機会を頂いた際、聴講者より海外における第三者認証の実情や国際間における第⼆者監査に関すること等多数の質問をいただいた記憶が残ります。我が国は⾷料輸⼊⼤国と⾔われ久しい中、⾷品安全の確保また維持向上はさらに重要性が増し、特に監査の現場のみならず、様々な場⾯における双⽅の⾷品安全に関する国際間コミュニケーションの担い⼿となる専⾨家⼈材の育成が必要であると、強く感じています。
また前後しますが、1990 年代に⽶国⻄海岸の⽔産加⼯企業(⼯場)に出向の際、⾷品等に関する規格・基準の策定を⾏う国際的な政府間機関CODEX 委員会が1993 年にHACCP(参考)を世界に向け発⾏、その後1995 年に⽶国連邦政府FDA(⾷品医薬品局)が⽔産加⼯など業種指定ながら⽶国内で販売される製品の製造施設を対象にHACCP の義務化を公布しました。
当時⽇本ではまだHACCP の専⾨家⼈材が⾏政機関を含む産官学で希少な中、⼯場現場の品質管理や⽣産管理担当者で⽶国の州⽴⼤学(ルーツはほとんどが農業⼤学)卒のスタッフは、皆が既にHACCP を⼤学のカリキュラムで修得済みで私の良き先⽣として、またFDA 発⾏の原⽂を基にHACCP を現場で学ぶといった貴重な経験をしましたが、⼀⽅⾃⾝を含み我が国の⾷品安全分野における専⾨家⼈材不⾜を当時も痛感した記憶が鮮明に残ります。
(参考︓1960年代⽶国アポロ計画の宇宙⾷製造プロセスにおける製品の安全性確保を⽬途に、⽶国NASAによりHACCP
システム開発が進められたことがその始まりと⾔われています。)
以上⻑くなりましたが、今回IRCA メンバーズサポーターに登録させていただく中で、当該分野の継続的な⼈材育成に微⼒ですが貢献できればと考えております。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
現状のご⾃⾝の活動及び、IRCA メンバーへのメッセージをお願いします。
活動状況
現在はフリーランスとして、クライアント組織における未然予防によるリスク低減や継続的改善をベースに⾷品安全分野におけるコンサルテイング活動を実施しております。(以下主な活動を記載)
- 組織のQC・QA部⾨に所属する監査員⼈材育成サポート
- FSMS/EMS分野の第⼆者監査業務受託
- ISO他各規格の認証取得に向けた組織及び製造現場の仕組み構築サポート
また先記記載、GFSI より2018 年に「組織における⾷品安全⽂化の醸成」が定義され、さらにはCODEX 委員会において 2020 年にHACCP ガイドラインが久しぶりに改定され、その中で⾷品安全へのマネジメントコミットメントとして「組織における⾷品安全⽂化の醸成」が定義されました。上記私の活動の中において、これら「⾷品安全⽂化の醸成」といった視点に関しても、関わる各組織との遣り取りを進めているところです。
メッセージ
今から20 年以上前、当時私の専⾨分野の先輩より「監査員の⼒量はその⼈の⼈間⼒(総合⼒)そのものである。」と繰り返し指導を受け、その⾔葉が今も体に染み付いています。また監査員に求められる資質として、例えば、ISO19011:2018、7.2.2項「個⼈の⾏動」において13 項⽬にわたる「監査員の特質」が明記されています。⾃⾝も折に触れ振り返ると、その内幾つの特質が⾝につき、また対応できているのか、いつも反省するばかりです。古い諺「千⾥の道も⼀歩から」ではないですが、⽇々の業務、⼀つ⼀つの監査を⼤切にされ、⾃⾝の⼈間⼒を磨き上げて頂くことを期待しています。