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ISO 21500 - プロジェクトマネジメントの手引 パート2

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ISO 21500 - プロジェクトマネジメントの手引 パート2

ISO 21500に関する前回の記事では、プロジェクトマネジメントをこれから始めようという組織だけでなく、すでにプロジェクトマネジメントを行っている組織に対してもこの規格が提供するメリットについて検討しました。また、ISO 21500 の構造を概観し、この規格は、4つの箇条と1つの附属書から成り立っていますが、実質的な内容は箇条3「プロジェクトマネジメントの概念」と箇条4「プロジェクトマネジメントのプロセス」で述べられていることを見てきました。
今回は、プロジェクトにおける役割と責任、プロジェクトの制約の釣合いをとることと、プロジェクト関連要員の力量の確保を中心に、これらの2つの箇条の要素をより詳細に見ていきます。また、ISO 21500の対象群と関連するプロジェクトマネジメントプロセスも見ていきます。

プロジェクトにおける役割と責任

プロジェクトに関わるそれぞれの人が、自分は何をすべきかということを理解していることが重要です。プロジェクトにおける役割には、例えば、プロジェクトマネジャー、プロジェクトスポンサー、及び顧客があります。これらの人、それぞれにやらなければならないことがあります。

ISO 21500は、プロジェクトの目的を実現するために必要な活動をする側 (プロジェクト組織) と、プロジェクトを指示し、管理する責任をもつ側 (プロジェクトガバナンス) を区別しています。プロジェクトマネジャーの役割は、前者の中にあるのに対し、プロジェクトスポンサーは後者に含まれます。これら2つのグループの外側にあるのは第3のグループであり、「その他のステークホルダー」ということになります。その他のステークホルダーはプロジェクト組織でも、プロジェクトガバナンスにも含まれませんが、プロジェクトの実施により直接的、あるいは間接的に影響を受ける存在です。このグループには通常、顧客、サプライヤー、従業員、株主、特定利益集団、規制当局あるいは金融機関が含まれます。ISO 21500では、プロジェクトマネジメントオフィス (PMO) も、このその他のステークホルダーのグループに入れられています。このグループは、プロジェクトマネジメントの実施とその実際の実施を支援するためのものです。その他のステークホルダーの役割には、プロジェクトをどのように実施すべきか、使用すべきツールの方法とテクニック、プロジェクトマネジメントスタッフのトレーニング、プロジェクトプログラムのマネジメントと、例えばプロジェクト監査やレビューなど、プロジェクトの保証活動に関するガイダンスの提供が含まれます。

プロジェクトの制約のバランスをとる

ISO 21500は、プロジェクトの実施において、プロジェクトマネジャーはあらかじめ課せられた制約の枠内で活動することが要求されます。通常、3つの制約があります。

  • 時間―合意されたプロジェクトの期日
  • コスト―合意されたプロジェクトの予算
  • スコープ―プロジェクトの成果物が何であるかについての合意

これらの制約は、作業の開始前にすべて合意され、ベースとなっているために、最初はバランスが取れています。しかし、ひとたびプロジェクトが始まると、これらの制約の1つ以上について圧力がかかります。例えば、プロジェクトの進行が遅れれば、期日に合せるために追加のスタッフを雇うといったことが起こり得ます。そうすれば、時間は管理下に戻りますが、今度はコストに対する圧力となります。そうではなく、多くを提供しないという決定を下すこともできます。その場合は、時間は取り戻せますが、今度はスコープに悪影響が出ます。

時間、コスト及びスコープは集合的に「三重の制約 triple constraint」と呼ばれます。また、ISO 21500はその他の制約も提示しています。これには、プロジェクトの資源の限られた利用可能性、安全に関する制約、リスク制限の要素、生態学的な影響や法律、規則及び規制が含まれます。

プロジェクト関連要員の力量の確保

ISO 9000:2015 は、力量を「意図した結果を達成するために、知識及び技能を適用する能力」と定義しています。もしプロジェクトが意図した成果を出そうとするなら、プロジェクトにインプットを提供する人は、意図した成果を達成する力量がなければならないということは明白です。ISO 21500は、プロジェクトチームに要求される3つのタイプの力量 (JIS Q 21500 で使われているcompetence の訳語はコンピテンシ) を特定しています。技術面の力量、行動に関する力量と状況に関する力量です。

技術面での力量には、プロジェクトをどのようにマネジメントし、管理するかについてのテクニック、プロセス及び適用される管理策に関する知識及び技能が含まれます。

行動に関する技能は、他のプロジェクト要員及びより幅広いステークホルダーのコミュニティとのやりとりにおいて、どのように振る舞うべきかに関連します。望ましい行動には、リーダーシップを示すこと、はっきり自己主張できること、批判的なコメントも受け入れることができ、人々と積極的に交わることが含まれます。状況に関する力量は、プロジェクトがプロジェクト外の世界とどのように影響し合うか、「より大きな絵」にどのように嵌るかを理解することに関係します。すべてのプロジェクトチームメンバーのそれぞれの力量を決定し、欠けている力量があれば、代替の要員を採用する、または既存の要員の再トレーニングや技能開発を通じて、補う対策を行うことが重要です。

ISO 21500 の対象群と関連するプロセス

ISO 21500で特定された39のプロジェクトマネジメントプロセスは、2つの異なる視点から見ることができます。39のプロジェクトマネジメントプロセスは、属するプロセス群 (立ち上げ、計画、実行、管理、終結)、または属する対象群 (統合、ステークホルダー、スコープ、資源、時間、コスト、リスク、品質、調達、コミュニケーション) のいずれかに関して考えることができます。これらの関係性は附属書 A で図解されています。

これらのプロセスはすべて、インプットを有用なアウトプットに変換するものであり、アウトプットは他のプロセスのインプットとなることもあります。

附属書 Aの図1は、統合プロセスはプロジェクト憲章の立ち上げ開発から、プロジェクトの終結、及び教訓の習得まで、プロジェクトのすべてのフェーズを通じて機能することが示されています。統合は、プロセスの競合する制約と要求事項を、残りの対象群間の相互関係とともに確実にマネジメントすることと関連します。

ステークホルダープロセス

ステークホルダーのプロセスでは、プロジェクトのステークホルダーの最初の特定とその後のマネジメントがカバーされます。このプロセスは、プロジェクトが確実にステークホルダーの満足を満たすために、プロジェクトに影響を与えたり、プロジェクトにより影響を受けたりする人々のニーズと期待を理解することに関するものです。

スコーププロセス

スコープのプロセスでは、必要な作業 (そして重要なのは行う必要がない作業) を定義します。このプロセスでは、プロジェクト、プロジェクトの境界のためのベースラインを提示します。このベースラインを守ることが重要です。プロジェクト開始後、プロジェクトに追加の要求が出されると、スコープの「クリープ (管理できない変更)」が生じます。こうなると、実行可能であったプロジェクトが、当初の品質、コスト及び時間の制約内で実行することが不可能になる可能性が出てきます。

資源プロセス

資源のプロセスは、プロセスを実行するために必要な人員、材料、施設及びインフラストラクチャが整っていることを確認するプロセスです。プロジェクトチーム (プロジェクトの活動を遂行するすべての人) とプロジェクトマネジメントチーム (プロジェクト組織の一部で、プロジェクトの要求される成果を達成するための特定の責任をもつ) は区別されます。

時間プロセス

時間のプロセスでは、プロジェクトが期限内に完了するようマネジメントするために必要なすべてのステップを確実に実施することに重点が置かれています。時間のプロセスはすべて計画段階に集中しています。ここでプロジェクトのクリティカルパスが、ワークブレークダウンストラクチャ (WBS =プロセスの作業を階層で分解し、まとめたもの) で特定された活動の期間とその完了までの論理的順序に従い、決定されます。また、プロジェクトの中間地点でのマイルストーンも含め、プロジェクトの終結日が決定されるのもこのプロセスです。

コストプロセス

コストのプロセスは、プロジェクトの適切な予算の設定、プロジェクトの特定の活動へのこの予算の配分、及び追加の資金調達に対する要望や要求を含む、その後のコストマネジメントに関連します。

リスクプロセス

リスクのプロセスでは、リスクの特定、評価、対応及び管理に重点が置かれます。すべての事業活動と同じく、プロジェクトにも固有のリスクがあります。内部及び外部の不確かさの影響により、プロジェクトがマイナスにもプラスにも影響を受ける可能性があります。これらのプロセスは決して1回行えばよいということではありません。洗い出したリスクは、割り当てたリスク対応が適切であることを確認するために、定期的に見直す必要があるでしょう。また、新たなリスクが発生する可能性はいつでもあり、これもマネジメントしなければなりません。

品質プロセス

品質のプロセスは、最初にプロジェクトの品質要求事項を特定した後、これらの要求事項が満たされているかを決定するための取決めを確立するために設定されます。プロジェクトの品質要求事項が合意されれば、要求される品質の達成を客観的に確認するために、適用可能な標準や評価基準を特定します。

調達プロセス

調達のプロセスは、プロジェクト外部からの製品、サービスや資源の取得をカバーします。これは、何が必要かと供給者候補を特定するところから始まります。供給者候補のリストから、供給者評価に基づいて、実際に使用する供給者を任命します。その後、これらの供給者が必要なものを、必要なときに適切な品質とコストで確実に提供するようにマネジメントする必要があります。そうでない場合は、対処しなければなりません。

コミュニケーションプロセス

コミュニケーションプロセスでは、プロジェクトのステークホルダーの情報とコミュニケーションに関する要求事項を確立します。この要求事項が決定された後、必要な情報が効果的に伝達されることを確実にするための取決めを設定します。ステークホルダーが、何が伝達されるか、あるいはどのように伝達されるかについて不満がある場合は、これを解決する必要があります。

まとめ

PRINCE2、プロジェクトマネジメント知識体系ガイド、アジャイルプロジェクトマネジメントを含む、たくさんの利用可能なプロジェクトマネジメントの方法論、グッドプラクティスやモデルがありますが、それでもISO 21500は世界初のグローバルに認められたプロジェクトマネジメントの規格としての地歩を確立しています。ISO 21500は、どのようにすべきかではなく、何をすべきかに重点をおくことにより、組織が自分たち独自のプロジェクトマネジメントシステムを設計、策定し、規格で特定された領域に対処すれば、システムが堅牢になる枠組みを提供しています。

パート1はこちらから

執筆者について: 本記事の執筆者 、Kingsford Consultancy Services 社の代表取締役であるRichard Green氏は、IRCA のQMS プリンシパル審査員、CQI のCQP (Chartered Quality Professional) MCI、British Computer Societyの Chartered IT Professionalであるとともに、英国商務局 (OGC) の開発したPRINCE 2 のProject Management Practitionerであり、コンサルタント、あるいは各種セミナーの講師として活躍するほか、ISO 19011 をはじめとするさまざまな規格の策定にも参加している。また、2017年と2018年にはCQI の国際クオリティ賞の審査員も務めている

※IRCAの各詳細は下記よりご確認頂けます。

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