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ISO 45006 – 労働安全衛生マネジメント – 感染症の予防及びマネジメント – 組織のための一般指針

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ISO 45006 – 労働安全衛生マネジメント – 感染症の予防及びマネジメント – 組織のための一般指針

はじめに

2020年12月に『ISO/PAS 45005– COVID-19パンデミック下の安全な働き方のための一般指針 General guidelines for safe working during the COVID-19 pandemic』が発行され、無料で配布されたことを受け、TC283/WG5は、ISO/PAS 45005をより一般的な規格となる『パンデミック下の安全な働き方』として書き直すこととしました。つまり、このPAS 45005と並行する新しい 『ISO 45006 – 労働安全衛生マネジメント – 感染症の予防及びマネジメント – 組織のための一般指針 Occupational health and safety management — preventing and managing infectious diseases – General guidelines for organizations』を作成することが決定されたということです。

>>ISO/PAS 45005 労働安全衛生マネジメント – COVID-19パンデミック下の安全な労働のための一般指針

>>ISO/TC 283 – 労働安全衛生マネジメント関連最新情報

2020年末にはISO 45006の予備草案 (preliminary draft) が作成されました。これは現在、WG5のメンバーに回覧されており、3月4日までコメントを募集しています。この記事は、その予備草案の内容に基づくものです。

ISO 45006はなぜ必要なのか

感染症の危険性は、職場での健康、安全、ウェルビーイング (身体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態) に対する大きな課題として認識されるようになってきています。ISO 45006は、在宅勤務を含むすべての環境において、感染症が働く人やその他の関連する利害関係者に及ぼすリスクに対応しています。健康、安全、ウェルビーイングに影響を及ぼす可能性のある感染症は多岐にわたっており、疾患の性質によって非常に軽度のものから、非常に深刻なものまでさまざまです。

ISO 45006の指針を実施することにより、組織は感染症に関連するリスクから働く人やその他の関連する利害関係者を保護するための効果的な措置を取ることができるようになります。組織は、体系的なアプローチを用いて感染症に関連するリスクに対処していることを実証し、さらに、組織が変化する状況に効果的かつタイムリーに適応できる枠組みを確立していることを証拠立てることができるでしょう。

規格の構造

開発のこの初期の段階は、ISO 45006にISO 45001の構造を反映することから始まりました。組織の状況 (箇条4)リーダーシップ及び働く人の参加 (箇条5)計画 (箇条6) で最初の検討事項があり、そのあとに規格の主要な目的である感染症の予防とマネジメントに関する主題についての箇条があります。

箇条 7では、組織は働く人の身体的な健康だけでなく、アウトブレイク (感染拡大の勃発) 時に働く人の精神的な健康とウェルビーイングを支援するためのプロセスを実施し、維持すべきことを記しています。この側面は、働く人の労働安全衛生への取り組みにおいてしばしば見過ごされており、ISO 45003 (職場における精神的な安全衛生―指針) の開発の背景となる主要な推進力の1つとなっています。

>> ISO 45003 – 職場における精神的な安全衛生―指針

箇条 8 資源は、アウトブレイクに関連するリスクをマネジメントするために十分な資源を提供しなければならないとしています。これには、インフラや環境への配慮から、PPE (個人防護具)、トレーニング、予防接種などの予約された医療を受けるための時間単位休などが含まれます。

箇条9では、アウトブレイク時の組織、その組織で働く人、その他の関連する利害関係者間のコミュニケーションについて規定しています。だれが、いつコミュニケーションを取り、何を伝えるべきか、どのようにコミュニケーションを取るべきかに加えて、この規格では視覚的なサインやシンボルの使用や、そのようなプロセスを実行するための適切な時期を検討する必要性など、コミュニケーションプロセスに含めるべき検討事項を規定しています。また、職場への入場に関するコミュニケーションや、アウトブレイクが進行した場合における働く人への継続的なコミュニケーションの必要性にも対応しています。

箇条10では、計画段階 (箇条6) で特定された感染症の発生に起因するリスクに対処するために、優先順位を定めた管理策を確立し、実施するよう組織に助言しています。理想的には、そのようなリスクを排除することが望まれますが、それが不可能な場合には、技術的な配慮 (換気、間仕切り) を導入することができます。これが不可能な場合は、在宅勤務や物理的な距離をおくなどの管理上の措置が提案され、優先順位の最後の選択肢としてPPEの提供が行われます。

箇条 11では、伝染性疾患の管理策について述べています。規格の用語と定義 (箇条3) では、伝染性疾患は、「人から人へ伝染する伝染性感染症」と定義されています。管理策は、ISO 45006の実質的な部分を形成しており、集団感染のある地域での職場への出入り、組織の管理下にある職場間の移動、作業区域及び作業台、共用部分の使用、トイレの使用、職場での会議及び訪問、配達、在宅勤務、他の人の家での勤務、複数の場所での勤務 (例えば運転手、配達人、修理に携わる人など、職場が固定していない人)、不特定多数と接触する仕事、及び業務に関連した移動が含まれています。

対照的に、箇条12は、非伝染性疾患の管理に焦点を当てているため簡潔です。非伝染性疾患とは、「環境中の発生源への曝露によって感染する感染症」と定義されています。ここでは、水道や空調の供給で使用されている機器やシステムの予防的なメンテナンスチェックに重点が置かれています。

箇条13では、3つ目の管理策が概説されています。これは、風土病に関するものであり、働く人が仕事をする場所、または業務を行うために移動する必要がある場所で適用される管理策です。ここでは、組織は、予防接種の必要性、昆虫や動物との接触を防ぐなど、存在する可能性のある事項に関する助言を、働く人に伝えることになっています。

箇条14では、あらゆる感染症の状況における個人の衛生管理の重要性をハイライトし、手洗い、作業面の頻繁な清掃と消毒、使用済みのPPEの適切な廃棄などの基本的なことを強調しています。箇条15では、引き続きPPEについて、マスクやフェイスカバー、保護手袋、防護服の使用を促進し、生物学的リスクに対する保護となることを認めています。

箇条16では、感染症の疑いのある、または感染症と確認された症例をマネジメントするためのプロセスの導入と維持を提案しています。組織とトップマネジメント双方に対して、状況の最初の確認とリスク評価、及び時間の経過に従い継続的に状況を管理するための行動が規定されています。これらは組織が管理する職場だけでなく、他の状況下で働く人の疾病の管理にも適用されます。ISO 45006は、これらのプロセスにはスクリーニング、試験、接触者の追跡、及び検疫が含まれるべきであると示唆しています。

箇条 17では、組織がどのように効果的に感染症を予防し、マネジメントしているかに関する「パフォーマンス評価」を扱っています。これは、エピデミック (特定の地域での感染拡大) またはパンデミック (世界的な感染拡大) の状況で特定された国の指標の使用を含め、予防的及び事後的なパフォーマンス指標の使用を促進するものです。マネジメントレビューのみならず、関連する外部の利害関係者への報告も推奨されています。

ISO 45006は、感染症に関連したリスクをマネジメントする能力を組織が決定し、開発することを推奨する箇条18の改善で締めくくられています。

まとめ

ISO/PAS 45005を下敷きに、すべての感染症に適用可能な汎用規格を作成するという決定は、下敷きとなる規格が完成したのちに自然的に発生したものかもしれませんが、それ自体が拡大を続けるISO 45000シリーズにおいてISO 45006が貴重な追加規格であることに変わりはありません。

新型コロナウイルス感染症に注目が集まっている今、現下の新型コロナウイルス感染症との戦いののちも世界に存在し続けるであろう感染症がほかにも多数あることを忘れがちです。この新しい規格は、開発の初期の段階においても、疾病に起因する緊急事態に対処するための事業構造をどのように構築すればよいのか、組織をマネジメントする人々に実用的なアドバイスを提供しています。ISO 45006の開発が進むにつれ、より強力で、よりバランスの取れた文書になっていくでしょう。

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018