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ある小企業のISO 15189認定取得までの道のり

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ある小企業のISO 15189認定取得までの道のり

SKC Occupational Health のクリニカルディレクターであるSu Chantry さんに、ご自身のISO 15189認定への道のりをお話いただきました。

> quality.org の英文記事はこちら

産業保健の仕事を始めたきっかけは何ですか?

もともと私は看護師をしていました。NHS(英国の国民保健サービス)を離職したあと、産業保健サービスを提供する民間会社に勤めました。そこで私は経験と教育を積み上げ、産業保健における専門公衆衛生看護の学位を修了し、5年前にNursing and Midwifery Council Register (看護・助産審議会) のパート3の資格を取得しました。

その後、私はSKC Occupational Health Consultancyを立ち上げました。現在は独立した産業保健の専門家として、大規模な商業的産業保健サービスを必要としない中小企業向けに、各企業に合ったカスタムメイドの職場の保健サポートを行っています。

私の基本的な役割は職場の健康とウェルビーイングであり、職場における健康問題のマネジメントや助言を行います。具体的には、身体的障害に関するアドバイス、企業の病欠管理の支援、ウェルビーイングやメンタルヘルス戦略の支援などを行います。私が行う新型コロナウイルスの検体採取サービスは、出張やスポーツ競技を行う上で移動が必要な私のクライアントを支援するために必要なものとして開始しました。F1のクルーなども私のクライアントです。

なぜISO 15189臨床検査室‐品質と能力に関する要求事項の認定取得を決断されたのですか?

私は品質が保証された新型コロナウイルス検査サービスを提供できるようになりたいと思いました。当初コロナウイルス検査は規制対象の活動からは除外されていましたが、2020年12月15日に法律が変わり、民間のコロナ検査提供者はすべてUKAS認定を受けなければならなくなりました。

英国政府の検査サービス提供者一覧に記載されるには認定取得が必要であり、一覧に記載されている認定提供者のみが英国国境当局に認められます。そうすれば、その検査が海外渡航に対して有効であることがお客様に保証されます。

> ISO 15189 とは?ー 臨床検査の国際標準化

認定を得るためのプロセスはどうでしたか?

私には品質保証マネジメントシステムの経験がまったくなかったので、ISO 15189の認定を得るまでのプロセスは非常に難しかったです。管理業務のための規格、並びに臨床及びビジネス/マーケティングのための規格の両方で要求される基準には、圧倒的なレベルの詳細さが求められます。認定プロセスは当初わかりにくいものでした。当初、英国保健省 (DHSC = Department of Health and Social Care) とUKASはお互いに行き違いがあり、最初のころ私は右往左往してしまい、明確なガイダンスを得られないと感じていました。

臨床面に関しては、規格の要求事項に合わせることはとても簡単でした。単に臨床基準やプロセスを一部書き直すだけで済みました。しかし、私には品質マネジメントシステムと組織的なアプローチが必要だということが明らかになりました。

いくつかの認定規格を満たすのにどのような資源が必要かに私は大きな衝撃を受けました。実働部隊のいないたった一人のディレクターには、それは大きな挑戦でした。それに比べて、産業保健サービスを提供する大規模な企業を経営するある同業者には認定及び監査部門で働くフルタイムの社員が8人います。

私には監査マネジメント及び品質管理の経験の持つ人の支援が必要でした。そして、私は職場の健康管理に特に関心を持つ認定審査員であり、私をサポートしてくれる同僚を見つけました。

認定プロセスには3つの段階があります。第1段階は、基本的レベルの文書の申請と照合です。第2段階は、規格に沿った枠組みにおける証拠の作成、収集及び照合です。これは、短期間で提出する必要があります。第3段階は審査です。

UKASはとても協力的でした。指導を必要とする人が大勢いることを認識していることから、UKASはウェビナーを開始し、DHSC の支援のもとモジュールトレーニングを実施しました。UKASが開発したウェビナーは教育用で、認定プロセスを概説するものでした。審査員が任命されると、UKASからは第3段階の準備に関する助言と指導が与えられました。

こういったプロセスにはまったく馴染みのない私の目から見ると、要求事項を読み、どうすれば質のよい検体採取サービスの提供を続けていけるのかを考えることは途方に暮れるようなことでした。

以前はISO規格をどうとらえていましたか、また、その他に認定取得を検討している規格はありますか?

私はずっとISO規格は大企業向けだと思っていました。

ISO 45001には付随する心理学的な枠組みがあります。職場内の心理学的なリスクマネジメントに関するものです。それは労働衛生マネジメントにぴったり整合しています。おそらく、それが次に私が取得したい認定です。なぜなら、自分の専門範囲内で私が提供できるものと専門的に整合していると今も感じているためです。

ISO認定を取得したことであなたのビジネスに改善や変化はありましたか?

品質マネージャーの支援を得て達成できたことをとても誇らしく思っています。膨大な時間とコミットメントが必要となる規格に個人経営の小さな会社が到達できたことに誇らしい気持ちです。

私は常に、サービス提供の品質と専門的技術に対してできる限り真剣に取り組んできました。認定を取得したということは、達成したその規格を用いて、マーケティングを行い、それを証明することができるようになったということを意味します。ウェブサイトを更新して認定を公表し、現在はマーケティングに以前より力を入れています。私はフィードバックの依頼をフォーマット化するプロセスをつくり、グーグルビジネス(Google Business)にも掲載しています。取得した品質規格がなければ私は決してこのようなことはしなかったでしょう。

認定取得は、私の事業の焦点とビジネスモデルを向上させるのに確実に役立ちました。もし皆さんがISOのような認定を取得されたならば、ビジネスの状況の中では臨床の基準よりも認められると私は思います。

新型コロナウイルスのパンデミック下でこの認定を成し遂げられました。パンデミックによってあなたにとっての産業保健はどのように変わりましたか?

臨床レベルでは非常に困難な状況でした。対面の臨床的な接触ができなかったため、私たちは自分たちの役割のひとつである健康の監視がまったくできなくなりました。私たちは業務をいくつか見直す必要がありました。例えば、呼吸器系の管理では、スクリーニング質問票を使った堅牢なリスクマネジメントアプローチが確立できるのに、全員を集めて肺機能検査を実施する必要があるのかどうかなどです。

第3段階の審査は丸1日かかり、とても緊張しました。リモートで実施されたため、簡単に時間割を組むことができました。審査員はバーチャルなプロセスを通して私の臨床業務を評価しましたが、誰かがクリップボードを手に座って業務を見ているよりはおそらく緊張感が少ないと感じました。

コロナの検体採取の臨床サービス提供に関しては、リモートで指導しながらセルフテストを実施するサービスを提供することができるようになりました。クライアントは30分のビデオ通話を予約し、私はバーチャルで指導を行います。

ISOの認定取得を考えている他の産業保健の企業にどんなアドバイスをしますか?

自分には必ずできると信じてください。プロセスに従い、プロセスの正当性を疑わないでください。そしてサポートしてくれる適任者を周りに置いてください。しかし、その活動がどんなに大変かを過小評価しないでください。それは本当に大変なのですから。

仕事をする際に用いることができる枠組みが必要です。取得活動を開始した当初、「ちょっとしたチェックボックスの作業のようだし、これならできる」と私は考えました。その後、同僚が加わり、私一人では決して達成できなかったレベルで枠組みを調整してくれました。

また、その規格が自分の提供するサービスにどうのように適用されるかに焦点を合わせなければなりません。なぜ自分はその認定を達成しようとするのか、理由付けがなければなりません。

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018