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ISO 9004 の目的と今後の方向性についての最新情報

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ISO 9004 の目的と今後の方向性についての最新情報

日本で開催したIRCA フォーラムやワークショップなどでもお馴染みのリチャード・グリーン (Richard Green) は現在、ISO 9004のこれからを検討する ISO TC176/SC2/AHG4 に参加しています。AHG4 内での投票の結果について、リチャードから最新情報が届きました。

ISO 9004の目的

ISO 9004は往々にして、ISO 9001とはあまり関係ないと思われています。ISO 9001が重要な品質マネジメントシステム規格として確実に定着している一方で、ISO 9004はこれまでほとんど重要視されることはありませんでした。2つの規格はともに1987年に策定されました。当時のISO 9004の目的は、どうしたらISO 9001をより効果的に実施できるかについての指針を組織に提供することでした。しかしながら、時が経つにつれてISO 9001との直接的なつながりが失われ、ISO 9004は独り立ちして別の成果、つまり組織の持続的成功を確保することを追求するようになり、今日に至ります。

ISO 9004が示しているのは、持続的成功を達成するには、組織は製品及びサービスの品質を向上させ顧客満足を維持する(つまり、ISO 9001の意図した成果を達成する)以上のことに注力する必要があるということです。これが事実であるのはご存じの通りです。需要の大きい革新的な製品を提供して市場をリードしていた企業が、変化にうまく適応できず倒産に追い込まれた例がたくさんあります。コダック、エンロン、ブロックバスター (米国のビデオ・DVDのレンタルチェーン店)、ゼロックスなどがその例です。また他にノキア、日立、 IBMなどの企業は事業を継続させるために大きな組織改革を強いられました。

持続的成功を達成するには、いくつかの要素を整合させる必要があります。ISO 9004によると、その要素は組織の使命、ビジョン、価値観、文化です。この4つが組み合わさって「組織のアイデンティティ」を形成するのですが、このアイデンティティが確立され、守られることを確実にする責任はトップマネジメントにあります。トップマネジメントはまた、「組織に本来備わっている特性が利害関係者のニーズ及び期待を満たす程度」として定義される「組織の品質」にも注力しなければなりません。ここから分かることは、ISO 9004では利害関係者が及ぼす影響の範囲はISO 9001よりもはるかに幅広く、その影響は組織全体、さらには組織が提供する製品及びサービスだけでなく組織が行うあらゆることにまで及ぶということです。

ISO 9004の核心にあるのは、継続的成功のパフォーマンスを判断するために組織が適用できる自己評価ツールです。成熟度のいちばん下のレベル(レベル1)の組織は、ある特定の活動をしなければならないということに気付いてはいるというレベルです。これは「基本レベル」です。いちばん上のレベルの(レベル5)の組織は、日常的に活動を行っているのみならず、積極的に、学習し、改善し、その領域でイノベーションを行っています。このレベルは、「ベストプラクティスレベル」です。

>ISO 9004:2018 – 品質マネジメント – 組織の品質 – 持続的成功達成のための指針

現在、組織がISO 9004の外部認証を取得することはできませんが、この状況は今後変わるのでしょうか?

AHG4会議とその結果

2021年の初め、ISO 9000ファミリー規格を担当するISO/TC176は、その戦略的計画グループ(SPOTG = Strategic Planning and Operations Task Group)に対し、ISO 9004を要求事項規格にして組織がISO 9004の認証を取得できるようにするという選択肢を検討するよう要求しました。これに対し、SPOTGはこの件についての検討と報告を行うための臨時作業グループ(AHG4)を設置しました。

第1回のAHG4会議は3月に開かれ、5月には第2回が開催されました。3月の会議で、グループメンバーによる投票を行う5つの案が提示されました。5つの選択肢とは以下です。

  • 選択肢A: ISO 9004:2018をタイプAマネジメントシステム規格 (MSS)* へと発展させる。つまり、指針ではなく「要求事項」とする
    *タイプA MSSとは、認証の対象となる要求事項を含むMSSのこと

  • 選択肢B: 指針としての現状のISO 9004: 2018を維持し、要求事項規格として新たにISO 9004パート1を策定する

  • 選択肢C: 要求事項を定めるパート1と、そのパート1の要求事項に対する指針としての現行のISO 9004のアップデート版で構成される、新たなISO 9004を策定する

  • 選択肢D: ISO 9004の追加要求事項としてISO 9001に新たなパートを追加する

  • 選択肢E: ISO 9004を現状のガイダンス規格のままで維持する


AHG4の対象分野の専門家52名が投票を要請されました。投票は、5(最も望ましい)から1(最も望ましくない)までの5段階採点で行われました。また、受け入れられない選択肢が複数ある場合は、該当の選択肢をすべて1にすることができました。

投票結果は以下の通りです。


順位 選択肢 点数
1 E:   ISO 9004を現状のガイダンス規格のままで維持する 98
2 D:  ISO 9004の追加要求事項としてISO 9001に新たなパートを追加する 65
3 B:  指針としての現状のISO 9004: 2018を維持し、要求事項規格として新たにISO 9004パート1を策定する 62
4 C: 要求事項を定めるパート1と、そのパート1の要求事項に対する指針としての現行のISO 9004のアップデート版で構成される、新たなISO 9004を策定する 55
5 A: ISO 9004:2018をタイプAマネジメントシステム規格 (MSS) へと発展させる。つまり、指針ではなく「要求事項」とする 37


備考:投票権を持つ52名の対象分野の専門家のうち、24名(46%)のみが実際に投票しました。

さらに5月の会議では、以下について投票が行われました。

選択肢1:ISO 9004を純粋な指針として維持するべきか
選択肢2:ISO 9004は何らかの形で要求事項を含めるべきか

この投票の結果は、選択肢1は83%選択肢2は17%となりました。この2回目の投票は会議に出席していた26名の投票権を持つ対象分野の専門家が行ったものです。

なぜ、この結果を期待外れと考える人がいるのでしょうか

ISO 9004をガイダンス規格のまま維持することに関しては多くの理由が提示されました。その中には次のようなものがありました。

a) 品質マネジメントシステム規格が2つ存在すると、エンドユーザが混乱する。

b) ISOは、タイプAマネジメントシステム規格を増やさないように努めている。

c) 成熟度モデルは審査することができない。

d) 内容を義務化しなくとも、この規格の普及率を高めることはできる。

e) 今、取り組まなくてはならない案件ではなく、注力すべきことはほかにある。

上記は数名の対象分野の専門家が示した正当な懸念ではありますが、どれも前進を断念する決定的な論拠と見なすべきものではありません。特に、要求事項ベースのISO 9004がもたらす利益と比べればなおのことでしょう。

今後の動向は?

AHG-4は間もなくTC 176 SPOGTへ報告書を提出します。AHG4は現状維持を明確に選択していますが、報告書では、最終判断の前に外部ステークホルダーとのさらなる検討作業を行うことをSPOGTに推奨する予定です。この投票に参加しているのが一握りの人であることを考えると、影響がとても大きいときは、そうすることが合理的と言えるでしょう。この報告書は今後2週間で (8月31日までに) 完成される予定で、少なくとも当面は、排除される選択肢はありません。

結論

世界は変化を遂げて第4産業革命へ前進しており、それに対してCQIがクオリティ4.0を定義して実施するための研究開発を強化する中、ISO 9001:2015の大幅改定はない、このISO 9004を純粋な指針として残す、という昨今の (ISOの) 決定は、規格が今日の組織に適している状態を確実に維持するためにすべきこととずれが生じているようです。世界は2つの品質マネジメントシステム規格を受け入れることができるのでしょうか?もちろんです。そして世界は2つのQMS規格から利益を得られるでしょうか?それは難しい質問ですが、筆者としては、絶対に得られると考えています。

9月8日にオンラインセミナーが開催されました  「ISO 9004 - a Standard in the ascendency」

CQI|IRCAの登録メンバーや審査員/監査員の自主学習グループのひとつ、台湾ブランチでは、9月8日に本記事の著者リチャード・グリーンが9004についてプレゼンテーションを行う、オンラインの無料セミナーが開催され、日本からも8名の参加者がありました。

リチャードからは、まず4月に行ったISO 9004 についてのウェビナー (日本語字幕付きの動画を公開中) の内容に基づく説明があり、その後、AHG4 で提示された5つのオプションについての説明と、今後、AHG4 からSPOG に上げられる報告について述べられました。AHG4 では、9004の要求事項化について反対の意見が大半を占めましたが、ISO としての決定の前に、より広いステークホルダーの意見を集めるべきという報告がなされたとのことです。
なお、要求事項化に前向きな国には、英国と日本も含まれるそうです。

最後に質疑応答があり、リエゾンAの団体として議論に参加しているCQI からの意見に反映させるため、要求事項化に賛成か、反対か、メッセージで参加者の意見を集めました。

※IRCAの各詳細は下記よりご確認頂けます。

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018