初心者のためのパフォーマンス・マネジメントツール・ガイド
パフォーマンスをマネジメントするためのツールにはどのようなものがあるのでしょうか。クオリティエクスパートの助けを借りて、パフォーマンスの測定、マネジメントと改善のためのツールのうち代表的なものをいくつかご紹介します。
Robert Langkjær-Bainによるquality.org に掲載の英文の記事はこちらから
Benchmarking
ベンチマーキング
ベンチマーキングは、組織が、自身の個別のオペレーション間の、あるいは外部の組織との詳細な比較を行うことで、優れた姿はどのようなものかを見つけ出すために利用できます。
ローブ・コンサルタンシー (Rove Consultancy) のQM プログラムリーダーのクリス・スミスは、「実際にリンゴとリンゴを比較しているのか、あるいはリンゴとナシを比較しているのか」が問題だと言います。特に外部との比較をするときにはこれは重要です。「正しいデータを入手していると思っても、いくつかのカギとなる質問を始めると、それほど正しくない情報との比較になっているということに気付くことがあります。連携している企業から提供されたデータの透明性を確認する必要があります」。
KPIs
主要業績評価指標
現代のビジネスにおいて、主要業績評価指標 (KPI = key performance indicator) はいたるところで使われています。問題は、KPI は役に立っているのかということです。
テンプルQMS (Temple QMS) の取締役であるボブ・ヒューズ CQP FCQI は、組織の戦略と結びついていないKPI は役に立たないと言います。企業は、「この事業は今後5年間で何を達成しようとしているか」を自ら問いかける必要があります。
例えば、特に実態を反映するKPI のひとつとして、発行したクレジットノート (売上に関する取引の減額、例えば値引き・返品などに対して発行する伝票の一種) の値があるとヒューズは言います。「クレジットノートが品質マネジメントにフィードバックされることはあまりありません。何に対して出したのか、品質マネジメントシステムのどの部分がよくなかったのかを検討する必要があります」。
また、組織は、各KPIについてだれが説明責任をもつのかを明確にし、さらに、あまりたくさんのKPIを設定しないようにすべきだとスミスは言います。「KPI は諸刃の剣ともなります。いくらやる気があっても、すべてのボックスにチェックを入れることはできません。KPI は最低限にし、コアとなるビジネスプロセスと最終的にビジネスに価値を与えるものに絞るべきです」とスミスは言います。
Performance appraisals
パフォーマンス評価
効果的なパフォーマンス評価を行うために重要なのは、単に評価を行うことではなく、どのように行うのか、そして、特に肝要なのは、次に何をするのかということです。スミスは言います、「私は多くのマネジャーがパフォーマンス評価のプロセス行っているのを見ています。反対の立場に立ってみると、マネジャーたちはこのプロセスに本当はそれほど身を入れていないと感じるかもしれません。パフォーマンス評価が正しく行われ、目標などについて相互に合意するチャンスがあれば、これはうまくいったと言えますが、単にマネジャーが急いで行うのであれば、パフォーマンス評価によってやる気がそがれることもあるのです」。
ヒューズはこれに合意し、「もしあなたが評価の際に会話に反応しなければ、次のときには評価は時間の無駄と思われてしまうでしょう。なぜ (自分に望まれていることが) できなかったのかを説明するはめになっても、何もしないよりもましです」と言います。
Mission statements and vision statements
ミッションステートメントとビジョンステートメント
会社のレゾンデートル (存在意義) を示すステートメントはますます世間に広まっており、これは組織が、自分たちは単なる利益以上のものを追及しているということを世界に示そうとしているためです。
スミスは、理想的には、これらの大局的な戦略のステートメントはKPI も含めたすべてに影響を及ぼすべきにもかかわらず、ときにはどちらかというと単なる「マーケティングツール」として使われている場合があると言います。
これらのステートメントを単なるリップサービス以上のものとするためには、ステートメントの背後に「これを支えるもの」がなければならないとヒューズは言います。言葉を行動に変えるためのある種の投資、プロセスあるいは活動です。
ISO 9001:2015 の認証をもつ企業について言うと、これらのステートメントはほぼ要求事項と言ってもいいかもしれないとヒューズは言います。なぜなら、規格には「戦略的方向性」の概念が正式に記されているからです。「これはトップマネジメントから始まるものであって、そう呼びたいのであればミッションステートメントと呼んでもよいのですが、重要なのは、企業は自分たちの品質マネジメントシステムに実際に何を求めているのかということです。これを理解すれば、自分たちがしようと思っていることの有効性をマネジメントすることができます」。
Management dashboards
マネジメントダッシュボード
マネジメントダッシュボードを使えば、事業がどのように行われているかを分かりやすく、視覚的に、最新の状況の概要を提示することができます。
スミスは、マネジメントダッシュボードが、非常に有益に使われている例をたくさん見てきたと言います。特に同時に多数のプロジェクトを走らせている企業については有益です。「むろん、すべてはインプットされた情報なりのよさしかないわけですが、ダッシュボードがうまく機能すれば、これは非常によいものとなります」とスミスは言います。
しかし、ダッシュボードを維持し、更新するのには労力が必要だということを肝に銘じる必要があります。ライブの画像表示を使用している場合は特にそうです。そして、常に最新の状態を維持することができないなら、ダッシュボードは、望むのとは逆の効果をもたらす可能性があります。
Lean management
リーンマネジメント
継続的改善とムダ取りの原則に基づくリーン哲学は世界中のビジネスに大きな影響を与えています。「一般的に、リーンに興味を持つ人は多いです」とヒューズは言います。
リーンは、大量生産のビジネス、特に「数秒の節約でもコストが大幅に削減できる」製造業で、もっとも有用ですとスミスは言います。重要なのは、皆の賛同を得ることです。「人々に適切なトレーニングを行い、皆が関与する限り、リーンマネジメントはすばらしいプロセスだと言えます」。