デミングの原則を適用して監査員を雇う意味

デミングと深遠なる知識

W.エドワーズ・デミングの深遠なる知識の原則 (principles of profound knowledge) は、熟練した良心的な監査員を雇用し、維持し、権限を与えることと極めて重要な関連性を持ちます。

統計学者として、また経営コンサルタントとして有名なデミングは、その先駆的な仕事を通じて、現代の品質マネジメントの基礎を築きました。同氏は、組織がプロセス、製品及びサービスを強化するのに役立つ、相互に関連した理論と原則を包含する「深遠なる知識 profound knowledge」という概念を導入しました。これらの原則は、熟練した監査員の採用と訓練に直接関連しており、結果として組織の財務の健全性にも影響を与えます。

深遠なる知識は、相互に関連し合う4つの要素から構成されています。システムに対する理解、変化に関する知識、知識の理論、そして心理学です。これらの原則が監査員に具体的にどのように適用されるかを掘り下げてみましょう。

深遠なる知識の原則

(a）システムの正しい理解: デミングは、システムを全体として捉え、すべての部分がどのように連動しているかを理解することの重要性を強調しました。

監査という文脈では、良心的な監査員は、組織のシステムの健全性は数値だけでは測れないことを理解しています。その数値を生み出すプロセスやシステムも重要です。良心的な監査員は、組織が効果的かつ効率的に運営されるよう、プロセスやシステムを改善する方法を模索します。良心的な監査員は、品質マネジメントシステム (QMS) を監査する際に、システム思考のアプローチをとり、システムの部分が効率的に連携していない領域を特定します。

しかし、あまり良心的でない監査員は、このようなアプローチをとらず、システムの個々の構成要素だけに注目する可能性があります。あるいは、数値だけに注目して、その根底にあるシステムやプロセスを理解せず、組織をリスクにさらしてしまうかもしれません。

(b）ばらつきに関する知識: デミングは、システムにおけるばらつきを理解すること、それがアウトプットの品質にどのような影響を与えうるかを理解することの重要性を強調しました。

良心的な監査員は、この原則を理解し、監査対象のQMSの変化や矛盾を特定するために利用します。

(c) 知識の理論: この原則は、組織がそのプロセスとシステムに関する知識と理解を継続的に向上させる必要性を強調しています。

良心的な監査員は、組織のQMSの健全性について情報に基づいた判断を下すために、組織のプロセスとシステムを学ぼうと努めます。より大雑把な監査員は、情報に基づいた判断を行うために必要な知識や専門知識を持っていない可能性があり、組織の品質システムに対する評価が不正確になる可能性があります。

デミングは、質の高いシステムを維持するためには継続的な改善が不可欠だと考えていました。良心的な監査員は、組織がQMSを継続的に改善し、改善すべき領域を特定することを奨励します。

(d) 心理学: デミングのこの原則は、組織改善の文脈における人間の行動とモチベーションを理解することの重要性を強調しています。デミングは、人間の心理を理解することがシステムをマネジメントし、改善する上で重要だと考えていました。

企業のQMSの健全性に関連して、良心的な監査員は、偏見や非倫理的行為の可能性を理解し、それらのリスクを軽減するための措置を講じます。

あまり良心的でない監査員は、自分の態度を効果的にコントロールすることができず、監査プロセス中に人を適切にマネジメントできないかもしれません。

総合的品質管理 (TQM) への影響

総合的品質管理 (Total Quality Management = TQM) とは、組織内の全従業員を巻き込み、プロセス、製品、サービスを継続的に改善することで、製品やサービスの品質を最適化しようとするマネジメント手法です。

製品やサービスの品質を確実なものとする責任を負う監査員がTQMの原則に従わない場合、TQMプロセス全体が危うくなり、組織全体のパフォーマンスが低下する可能性があります。

時間をかけて価値を高める

良心的な監査員は、効果的なISO 9001 QMSを実施、維持し、QMSが必要なISO規格を満たし、組織の品質目標を達成する上で重要な役割を果たします。

一方、雑な仕事をする品質監査員は、不適合を特定できなかったり、プロセスの継続的な改善に役立たなかったりすることで、QMSを危うくする可能性があります。その結果、製品やサービスの品質、顧客満足、そして全体的な業績に悪影響を及ぼすかもしれません。

良心的な監査員は、組織の継続的改善を支援し、QMSが戦略的資産となるよう支援します。あまり良心的でない監査員が関与すると、正反対の結果を招くかもしれません。

財務の健全性への影響

近道をして深く掘り下げない監査員は、いくつかの点で企業の財務の健全性に悪影響を及ぼす可能性があります。

監査員が組織のQMSの不適合や問題点を特定できなければ、組織は規格外の製品やサービスを生産し続け、顧客からの苦情や返品につながる可能性があります。その結果、最終的には収益と利益率の低下につながります。

第三者認証審査では、資格のない審査員をアップグレードするなど、虚偽または不正確な認証を提供した場合、あるいは、要求事項を満たすために必要な審査経験が不足している場合、被審査組織は、多大な財務的損失や風評被害のリスクに曝される可能性があります。

組織が契約を確保するのを虚偽の認証に依存している場合、認証が不正であることが判明すれば、法的措置や罰則に直面するかもしれません。

さらに、監査員が安全や品質のリスクの特定を怠った場合、組織は従業員、顧客、環境に害を及ぼす安全上の危険や品質上の問題に直面する可能性があります。

無能な監査員を避けるには

組織は、役に立たない監査員の利用を避けるために、いくつかの手段を講じることができます。

ステップ1: 身元調査の実施

監査員を雇う前に、資格証明書を確認し、推薦状をチェックして、その資格と評判を確認することが不可欠です。

ステップ2: 認定された認証機関を利用する

審査員が厳格な基準に従うよう適切に訓練されていることを確実にするため、公認されている認定機関に認定された認証機関とのみ取引を行いましょう。

ステップ3: 従業員のトレーニング

熟練した監査員と協力することの重要性と、不正行為を発見し報告する方法についての研修など、近道をする監査員を利用することのリスクについて従業員を教育しましょう。

ステップ4: 定期的な認証の見直し

認証を定期的に見直し、最新かつ有効であることを確認します。その際は、認証機関および審査員の資格も確認します。

まとめ

デミングの深遠なる知識の原則は、肩書を持ちながら、非効率的、あるいは不正な仕事をする人ではなく、良心的な監査員を雇用し、維持し、権限を与える際に大いに関連してきます。この原則を実行することは、QMS全体、財務的な健全性、組織の評判に直接貢献します。