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適合性を超える監査

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適合性を超える監査

quality.org の原文記事はこちら

メネカ・デヴィ・ンガリヤンバム (Meneka Devi Ngariyanbam) 氏は、IRCA登録の Lead Auditor であり、アラブ首長国連邦のラアス・アル=ハイマに所在する Petrogear Oilfield Equipment Manufacturing LLC のQHSEマネジャーです。彼女がISO監査とAPI Q1の整合性について検証していきます。

監査はこれまでも常にプロフェッショナルとしての生活の一部でしたが、時間が経つにつれて、単なるチェックリスト作業以上のものであることを学びました。QHSEマネジャーとして、私は製造環境においてISO 9001、14001、45001に基づく監査を行ってきました。現在は、当社のAPI Q1 (石油および天然ガス業界向け製品を製造する組織のための仕様規格) を当社品質マネジメントシステム (QMS) に導入するプロジェクトを主導しています。つまり、監査が如何にして実際の改善やチームワーク、そして意識向上を促すかを目の当たりにしてきたのです。

組織内でAPI Q1とISO 9001の統合を始めたとき、両者は似た基礎を持ちながらも、API Q1の方がリスク、緊急時対応計画、重要プロセス管理についてより深く踏み込んでいることにすぐ気付きました。これら2つのシステムが互いに孤立せず連携できるように橋渡しするのは、困難であると同時に大きなやりがいがある仕事でした。

ISOとAPIのバランスを探る

製造会社の多くは、既にISO 9001に精通しており、ISO 9001 が品質マネジメントのための強固な枠組みを提供しています。しかし、API Q1はさらに一歩踏み込み、サプライチェーンの信頼性、製品適合性、溶接や熱処理などの特殊工程を含む、石油及びガス業界特有のリスクに焦点を当てています。

したがって、私の課題は、当社のISOに基づく品質マネジメントシステム (QMS) が単なる「チェックリスト作業」にならず、API Q1のより深い期待に本当に応えるものであることを確実にすることでした。例えば、ISO 9001は組織にリスクの特定と対応を求めていますが、API Q1では責任と文書化を明確に定めた体系的なリスクアセスメントと緊急時対応計画作成プロセスが要求されます。例えば、ISO 9001は組織にリスクの特定と対応を求めていますが、API Q1では責任と文書化を明確に定めた体系的なリスクアセスメントと緊急時対応計画作成プロセスが要求されます。これらを整合させるために、手順を再設計し、従業員を教育し、両方のシステムで機能するテンプレートを作成しました。

監査を学習の機会へと変える

最初は、内部監査は適合性を確認するための作業のように感じていました。証拠を集め、チェックリストを埋め、不適合を発行するだけです。ですが、改善の姿勢で監査に取り組み始めてから、すべてが変わりました。

ある内部監査で、CNC (コンピュータ数値制御) 機械の予防保全記録が不完全であることを発見しました。それを単なる不適合として対応するのではなく、私たちはメンテナンスチームと一緒に、その原因を理解しようと話し合いました。問題は不注意ゆえではなく、メンテナンス計画にAPI Q1のトレーサビリティと校正の連携の要件が明確に記載されていなかったことにありました。一緒に計画を見直し、より視覚的な記録形式を作成しました。次の監査では100%の適合性が認められ、認識も向上しました。

このような瞬間は、監査が欠点を探すためのものではなく、チームが新たな視点でシステムを見るための対話であることを再認識させてくれました。

抵抗を乗り越え、認識を高める

API Q1の統合において最も難しかったことのひとつは、すべての部署に新しい要求事項がなぜ重要なのかを理解してもらうことでした。各部署はISO 9001には馴染みがありましたが、APIは余計な作業に感じられたのです。目的を明確にするため、説明を繰り返したり、小規模な研修を行ったり、石油及びガス業界の実例を示したりしなければならないこともありました。

ここで経営層の支援が大きな役割を果たしました。トップマネジメントがレビュー会議に参加し、プロセス規律の重要性を強調し始めると、他のチームも自然と従うようになりました。時間が経つにつれて、「やらなければならない」から「これは私たちの改善に役立つ」へと文化は変化しました。

もうひとつの苦労の種は、文書管理と変更管理でした。API Q1では厳格なアプローチが求められ、すべての更新に正当な理由付け、レビューとトレーサビリティの確保が必要です。ISOとAPIの両方の要求を満たす、シンプルで制御されたシステムを作り上げるには努力が必要でした。最終的には、明確なフォーマットとコミュニケーションにより、変更管理が製品の品質と顧客の信頼を守ることを全員が理解するようになりました。

監査の過程で得られた教訓

このプロセスを通じて、ISOとAPI Q1を整合性を取ることは単なる重複ではなく、統合であると学びました。重要なのは、両方の規格の意図を満たすひとつのシステムを構築するということです。

この取り組みから得られた最大の教訓のいくつかは次のとおりです。

  • 監査は点検のツールではなく、改善のためのツールである。監査員がプロセスを理解し、チームの課題解決を支援することに注力したとき、最も良い成果が生まれる。
  • 意識が主体性 (オーナーシップ) を生み出す。人々が要求事項の背後にある目的を理解すれば、自然とそれに従うようになる。
  • 経営層の関与は譲れない条件である。目に見える支援がなければ、どんなに優れたシステムでも定着するのは難しい。
  • 是正処置は、症状ではなく実際の原因に結び付けられたときに最も効果を発揮する。指摘事項を早急に終了させるのではなく、システム強化に活用しよう。

適合性を超える監査が重要な理由

今日、内部監査を行う際には、ISOであれAPI Q1であれ、それらを別々の作業とは見なさなくなりました。両方のシステムは互いに強化し合います。ISOは取締役会にマネジメントのフレームワークを提供し、API Q1はより深いリスク管理とプロセス管理でこれを強化します。

適合性を超える監査は、当組織が認証を維持するだけでなく、よりよいコミュニケーション、より強固な部門横断的連携、そして継続的改善の真の文化の実現にも貢献しました。また、監査員の役割が単にギャップを指摘することにとどまらず、学習と変革を促す役割も担っていることを私に示してくれました。

クオリティプロフェッショナルとして、私たちが最も大きな影響力を発揮するのは、すべての要求事項に目的があることを人々が理解する手助けをするときです。その理解が深まると、適合性は自然についてきて、改善は共有された責任となります。

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