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ISO 9001 – 聖域と万能薬

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ISO 9001 – 聖域と万能薬

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 Vince Desmond
 CEO, CQI IRCA


CQI IRCAのクオリティ専門誌 Quality Worldの2025年冬号から、ISO9001の改訂にあたって、クオリティについて今一度考察するCQI IRCA のCEO ヴィンス・デズモンド のコラム My Agenda の日本語訳をお届けします。

CQIの規格チームは、登録メンバーの意見をISO 9001の改訂プロセスに反映させるため、精力的に取り組んできました。ISO規格に関わる業務は、とりわけ国際的な調整力が問われ、気の抜けない場面が大半を占めます。そうした中で働いてきたチームに感謝の意を表します。一方、改訂された草案のリリースを受け、SNS上では「移行」に関するさまざまな意見や支援の申し出が飛び交っています。今こそ、一度立ち止まって考えるべき時ではないでしょうか。

クオリティの分野には数多くの侵さざるべき聖域があります。ISO 9001は優れた考え方です。ISO 9001認証も意義ある仕組みです。しかし、単にチェックマークを付けて回って、形式的に適合するだけであれば、パフォーマンス向上に効く万能薬とはなりません。

幸いなことに、優れたクオリティプロフェッショナルやクオリティを重視するリーダーたちは、この点をよく理解しています。ビジネスで成果を上げ、それを改善していくためには、クオリティを実現する能力を組織が育てていく必要があるということを認識しているのです。さらに、優れたクオリティプロフェッショナルたちは、文化、気候変動、デジタル化、リスクなど、以前からISO 9001への追加が議論されてきた、いわゆる「新しい」トピックについても、必要に応じて対応してきました。

実際、長い改訂プロセスを経てきたISO 9001は、ベストプラクティスをまとめた歴史的な記録とも言えます。そして、皆さまのようなクオリティプロフェッショナルやCQIのようなクオリティ関連の組織には、運用環境を俯瞰し、クオリティの成果に影響し得る要因を見極める役割があります。

優れたクオリティの専門家たちは、すでにリスクを広い視野で捉え、長期的な観点から評価しています。専門家たちは、気候変動や地政学的動向により、業務運営、サプライチェーン、市場におけるクオリティにどの程度の影響が及ぶのかを把握しています。そして、顧客の要求事項や欧州グリーンディールのような規制によって、製品やサービスの持続可能性にどのような影響が及ぶのかも理解しています。さらに専門家たちは、「デジタルトランスフォーメーション」の取り組みがクオリティの面でも確かな成果につながるように支援しています。クオリティパフォーマンスをより的確に、より早期に把握する上で、生成AI、さらにはエージェントAIがどのように役立つのかにも目を向けています。クオリティを支える社会的な仕組みと技術的な仕組みの双方について、評価と整備を進めています。何よりも、次の改訂で「何を考えるべきか」が示されるのを待ったりはしません。

移行の進め方を心配するよりも、規格策定者とマネジメントシステム評価が、どうすればより迅速かつ効果的に機能するのかを理解しようと努めるべきです。

2025年6月のQualityライブで基調講演を行ったマイケル・メイネリ教授 (Professor Michael Mainelli) は、競争力を高めるためにも、規格は無料で提供され、かつデジタルで利用できるべきだと提言しました。CQI統合マネジメントネットワーク*では、パフォーマンスを発揮してリスクを軽減するための包括的なシステム思考について検討しています。CQI監査ネットワークは、戦略的に重要なクオリティの成果に重点を置き、デジタルツールを活用して組織のクオリティを実現する能力とクオリティの文化を検証することで、マネジメントシステム監査の将来像を検討しています。また、CQIデジタルトランスフォーメーションネットワークでは、クオリティの専門家がデジタルトランスフォーメーションの推進にどのように貢献できるかを検討しています。これらはすべて、2025年11月のワールド・クオリティ・ウィークのテーマである「先を見据え、異なる角度から考えよう」という理念に沿った取り組みです。
*ネットワーク: 統合マネジメントシステムや監査など、特定のテーマについて学び合い、共有し合うCQI IRCAのメンバー同士のネットワークグループ

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