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遠隔適合性評価の利点と課題

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遠隔適合性評価の利点と課題

quality.org の英文記事はこちら

ナイジェル・クロフト博士 (Dr Nigel H Croft CQP FCQI) が、適合性評価やクオリティインフラシステムのデジタル化の利点と課題を検証します。

遠隔適合性評価は受け入れられているのか

20年前、遠隔審査やその他の遠隔適合性評価技術には、しばしば疑いの目が向けられました。例えば、マネジメントシステム審査に関するIAFの基準文書: MD4 (*日本語版はJABのウェブサイトから閲覧できます) の初版では、その使用範囲を限定し、乱用の可能性を回避することを目的とした措置も取られていました。

しかし、近年の情報通信技術 (ICT) の劇的な進化により、遠隔認定審査やマネジメントシステム審査は、新型コロナウイルス感染症の大流行でその活用が戦略的に必須となる以前でさえ、従来の方法論を補完する手段として支持され、高い評価を受けてきました。

他の分野では、遠隔適合性評価技術は長年にわたって使用されてきました。例えば、遠隔操作車両を利用した海底石油及びガス分野での検査、遠方の惑星での地質サンプルの採取及び試験、人材の遠隔評価などがあります。実際、最近の例としては、海外渡航前の遠隔ビデオ監視による新型コロナウイルス感染症のセルフテストの利用をご存知の方も多いでしょう。

また、規格、計測、認定、適合性評価、市場監視など、グローバルなクオリティインフラシステムのデジタル化に関しても同様の傾向が見られます。例えば、4例ほど挙げれば、機械判読可能な標準の導入、遠隔評価、ビッグデータ解析、分散型台帳技術 (DLT「ブロックチェーン」) などです。

遠隔適合性評価において克服すべき課題

国際連合工業開発機関 (UNIDO) は最近、すべてのクオリティプロフェッショナルが関心を持つべきこれらのテーマに関する2つの刊行物を発表しました。

1つ目の「Remote Conformity Assessment in a Digital World デジタル世界における遠隔適合性評価」は、発展途上国における遠隔適合性評価の機会、課題及び影響に焦点を当てていますが、その多くは先進国でも同様に適用できます。同文書では、マネジメントシステム、製品及び人員の認証、自主的な持続可能性基準に対する認証、有機認証、検査、試験、認定、ピア評価など、さまざまな適合性評価のシナリオを考察しています。

遠隔評価手法を用いるには、複数の要素を慎重に検討する必要があります。それらの要素には、評価に直接関与する組織間で制御できるものもあれば、評価が実施される外部の状況によって生じるものもあります。

遠隔評価手法に関連する利点ついて、潜在的なユーザーはその価値に容易に納得するかもしれませんが、特定の重要な要素が整っていない場合、効果的な実施への道は困難なものとなります。

UNIDOの発行物には、克服すべき課題として次のようなものが挙げられています。

  • 特に一部のセクターや経済圏における、適切なテクノロジーへのアクセス
  • 評価対象の地域や組織の一部における、インフラや帯域幅の不足
  • データの安全性についての懸念
  • 触覚や感覚の相互作用に依存する状況に対応すること
  • 適切なサンプリングの確保 - クライアントの指示によるものではない
  • タイムゾーンの違い
  • テクノロジーに精通したアセッサーを採用し、維持する


しかし、今や、適合性評価に対するグローバルなアプローチ全体が変化していることは明らかです。遠隔評価/審査は、グローバル経済の広範なデジタル化の中で、適合性評価に対するハイブリッド、または「ブレンドした」アプローチの一部として、今後数年間で重要な役割を果たすようになるでしょう。

持続可能な未来を形作る

UNIDOの2つ目の刊行物「Smart Quality Infrastructure - Shaping a Sustainable Future スマートクオリティインフラストラクチャ - 持続可能な未来を形作る」では、このような幅広い問題を取り上げています。産業界、クオリティ及びクオリティインフラ (QI) の取り組みとの密接な関係、そしてそれが時代とともにどのように変化してきたかを明らかにしています。デジタル化に関する現在のトレンドと課題を提示し、今後の展開についても示唆しています。

ある章では、「スマートクオリティ」とインダストリー4.0の共生関係を強調し、CQIのクオリティ4.0研究プロジェクトの一環として開発された概念について詳しく解説しています。戦略的なプロセスからより日常的な運用プロセスまで、あらゆるプロセスをPDCAサイクルを用いてマネジメントし、継続的な改善を推進することができます。デジタルテクノロジーは、これらすべてのプロセスに革命を起こすことができます。例えば、以下です。

  • 「Plan 4.0」では、ソーシャルメディア、ビッグデータ、予測分析を活用し、組織にとってのリスク及び機会の特定と優先順位付けを含む、世界的な傾向を調べることができます。
  • 「Do 4.0」では、チャットボットを含むロボティクスを製品やサービスの提供に活用できるほか、人工知能 (AI) や機械学習 (ML) を活用して、これまでにないレベルのトレーサビリティをDLT (分散型台帳技術) により実現して、リアルタイムの意思決定を行うことができます。
  • 「Check 4.0」には、リアルタイムのプロセス制御、アクセスが困難な現場のデータを提供するための遠隔検査技術 (ドローンや遠隔操作のセンサー、カメラ、車両) の活用、遠隔監査を容易にするビデオストリーミング、VR、AR、さらにソーシャルメディアやビッグデータによる顧客満足度の傾向分析などが含まれます。
  • 「Act 4.0」は、正確でタイムリーなデータの提供と分析に基づくデータ駆動型の意思決定プロセスの速度、及び AIやMLに (例えばモノのインターネット IoT 経由で) 相互接続された機器を通じて達成される、多くの場合、瞬時のフィードバックループによって大きく促進されます。
CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018