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認知バイアスがもたらすアウトソーシング (外部委託) への影響

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認知バイアスがもたらすアウトソーシング (外部委託) への影響

認知バイアスは、アウトソーシング (外部委託) 先のサプライヤー (供給者) に関連して、サプライチェーンマネジメントに深刻な影響を与える可能性があります。インドのウィリアムヘア (William Hare) 社の主任監査員兼シニアマネージャーであるクリシュナン・ラクシュミナラヤン (Krishnan Lakshminarayanan) CQP MCQIが、よくある事例を検討し、それらを回避する方法について考察します。

quality.org の英文記事はこちら

戦略的アウトソーシング (外部委託) とは?

アウトソーシング (外部委託) の戦略は、組織の成功の全体的なパフォーマンスにおいて重要な役割を果たします。企業は、必要なすべてのスキルセットを自社内で確立するために苦労しなくても、戦略的にアウトソーシング (外部委託) を選択して、すぐに活用できる専門知識を活用し、最終的に相互に有益なビジネス関係を実現しています。

あらゆる産業分野で、アウトソーシング (外部委託) が盛んなのは、主に次のことを促進するためです。

  • 製品・サービスの付加価値を高める。
  • 新しい/使ったことのないリソースや専門知識を活用する。
  • 組織にもたらされるリスクを軽減する。


アウトソーシング (外部委託) のマネジメントがうまく行くかどうかは、組織とサプライヤー (供給者) の関係をどのように処理するかに大きく依存します。つまり、サプライヤー (供給者) の問題に対してどのような意思決定がなされるかによって変わってくるということです。多くの場合、これらの決定は、組織内のさまざまな階層のさまざまな個人によって行われます。

行動経済学の視点から

個人として、あるいは大きな集団の一員として、さまざまな状況下でどのように意思決定を行うかを理解するために、「行動経済学 (behavioural economics) 」を考えてみましょう。

行動経済学は、人間の脳内の行動とその意思決定プロセスへの影響についての洞察を与えてくれます。行動経済学により、バイアス、または認知バイアスと呼ばれる影響があることが明らかになりました。認知バイアスは人間の脳に非常に強い影響を与え、ひいては意思決定に直接影響します。 このようなバイアスはいくつかありますが、本記事では、アウトソーシング (外部委託) プロセスとサプライヤーマネジメントに特に焦点を当てて、いくつかの想定シナリオを参考にしながら、3つの例について詳しく理解していきたいと考えています。より多くのバイアスを示す表は、この記事の最後にあります。

直近バイアス (Recency bias)

説明: 直近の活動に重きを置く。

アウトソーシング (外部委託) プロセスとの関連性: あるサプライヤー (供給者) から最近供給された製品が故障した場合、組織は直ちにそのサプライヤー (供給者) からの調達を停止することを決定する。

シナリオ1: サプライヤーから提供された機器が試運転の一環として行われたテスト中に故障した場合。その結果、そのサプライヤー (供給者) への発注は4か月間行われなくなった。この間は、同様の機器を他の業者に発注している。

シナリオ2: ある組織の部長が、最近委託したサイトを訪問する。部長は、いくつかのステンレス製締め具が腐食していることに気付いた。帰ってきた部長は、この失敗を購買チームに伝え、購買チームはそのサプライヤー (供給者) への発注を中止した。

分析: 上記の事象はいずれも、直近バイアスの典型的な例である。このサプライヤー (供給者) からの調達は、これまで何度も成功していたが、直近で失敗したため、購買チームは調達を断念した。

なぜそれらの製品が故障したのか、詳細な分析は行われていない。根本的な原因分析が行われるべきだった。その結果、サプライヤー (供給者) のサービスと関係があるかもしれない、あるいはないかもしれない他の根本的な問題、例えば、試運転時のミス、不安定な現場の状況など、あるいはサプライヤーの品質に関する本当の問題などが明らかになったかもしれない。このような分析によってのみ、根本的な原因が明らかになり、さらなる対策につながる。

推奨される対処法:

  • 故障は、確立された方法によって徹底的に分析されるべきである。
  • サプライヤー (供給者) の過去数年間のパフォーマンス評価を、意思決定チームが回覧できるようにする。これにより、購買チームが直近の問題、苦情や拒絶反応に影響されることがなくなる。

想起バイアス (Recallability bias)

バイアスの説明: 長く印象に残る過去の出来事

アウトソーシング (外部委託) プロセスとの関連性: サプライヤー (供給者) が提供した製品が原因で発生した問題で、組織の顧客から大きなペナルティーを受けた。

シナリオ1: ある組織が加工工場に製品を供給している。サプライヤー (供給者) から供給されたスペア部品が故障し、工場の操業が全面的に停止した。エンドユーザーに多額のバックチャージがかかる。

シナリオ2: 性能保証のパラメータが達成されず、性能銀行保証(サプライヤー/供給者が顧客に供給した品目の性能に対して発行する保証)の取り消しによって、顧客が組織に巨額の負債を負わせた。

分析: どちらの事故も、組織に深刻な財務的影響を及ぼした。その結果、同サプライヤー (供給者) への発注は行われなくなった。

ここでも、効果的な根本原因分析をすることによって、問題の本質とその原因が正確に明らかになったはずだ。想起バイアスは、購買チームに強い影響を与え、それ以上の調達を止めてしまった。

推奨される対処法: 故障は、確立された方法によって分析されなければならない。このような大きな問題は、異なる部門の利害関係者の立会いのもとで議論される必要がある。議論は公平であるべきだ。顧客からの苦情検討会、不適合検討会などの場を設けることもできる。

現状維持バイアス (Status quo bias)

バイアスの説明: 「今は何も変えるな、もっと複雑にしよう。」

アウトソーシング (外部委託) プロセスとの関連性: サプライヤーのパフォーマンスが芳しくない場合でも、 組織は新しいもの、 未知のものに不安を感じるため、 サプライヤーを変更しないという決定することがある。

シナリオ: これは、アウトソーシングで直面する最も一般的なバイアスである。このようなバイアスが多く発生し、組織は「それに耐える」ことを選択する。

分析: このような場合、組織は、パフォーマンスが要求事項どおりでなくても同じサプライヤー (供給者) に発注し続けることになる。その場合、サプライヤー (供給者) のチームは消極的になり、さらにパフォーマンスが悪化する。

推奨する対処法: 確立されたすべてのプロセス/サプライヤー (供給者) を、可能な改善と継続の適切性を確認するために、定期的なレビューの対象とすべきである。そこから生じるすべての事項は文書化され、意思決定を支援するために経営陣に提示されるべきである。リーダーシップチームは、改善のための提案を受け入れるべきである。

次の表は、その他の認知バイアスについて、アウトソーシング (外部委託) に与える影響と、そのようなトラップを回避する方法を簡単に説明したものです。

  バイアス 詳細 アウトソーシングへの影響 回避する方法
1 アンカーリング
(Anchoring 先に与えられた数値に囚われること)
組織に投げられた数値を重視しすぎる。 サプライヤー (供給者) ランキングを数字で表示することで、判断に影響を与える場合がある。 ランク付けのプロセスは、すべての影響因子とすべての利害関係者の意見を考慮して確立されるべきである。
2 サンクコスト
(Sunk cost)
すでに資源に損失を与えている活動への投資を続ける。 アウトソーシングしたプロセスが期待通りの結果を出していない。しかし、組織は、すでにこのプロセスに多くの投資をしているため、このプロセスを継続することを決定する。 確立されたすべてのプロセスは、専門家による定期的なレビューを受け、可能な改善、改善の継続の方法、継続の適性を確認する。
3 過信
(Over confidence)
過信して決める。 最近業績がよくないが、部門長の1人がそのサプライヤー (供給者) に特別な信頼を寄せており、サポート/プロモートし続けている供給者。 契約条件の強化。すべてのステークホルダーにリスクを周知徹底する。事実に基づいた透明性の高い意思決定を行う。
4 グループ思考
(Groupe think)
意思決定プロセスに複数のメンバーが関与しながら、インプットが少しかない可能性。 経営トップや影響力のある人が「あのサプライヤー (供給者) はずいぶんよくなった」と言うと、他の人は分析もせずにすぐにそれに賛成してしまう。 リーダーは、参加者全員に主体性を持たせるべき。すべての提案を書き留める率直な話し合いを徹底する。
5 満足化
(Satisficing)
私たちの脳は、完璧な解決策を探すのではなく、受け入れられる解決策を探す。 購買チームは、新しいサプライヤー (供給者) の検索を遅らせたり、停止したりすることができる。 組織は、すべての活動において、必須のプロセスとして継続的な改善を行わなければならない。
6 確認
(Confirmation)
確認できる情報を集め、確認できない情報は無視、回避する。 サプライヤーのエラーについて議論しているとき、数人の参加者がサプライヤーのために話し始め、サプライヤー (供給者) に反対意見を述べる参加者はほとんどいない。 組織は、より事実に即した客観的証拠に基づいて判断しなければならない。
7 錯誤相関
(Illusory correlation)
実際には関係がない2つの変数間の関係について、結論に飛びつくこと。 サプライヤー (供給者) は推進者の家族と親しいようだ。 思い込みを防ぐ。
8 類推による推論
(Reasoning by analogy)
状況を評価し、過去に見た類似の状況になぞらえる。このような類推は、違いを軽視し、類似性に注目したくさせる。 サプライヤー (供給者) の良し悪しを、過去の類似したサプライヤー (供給者) の行動から判断する。 類似点をリストアップする。相違点をリストアップする。既知、未知、推定をリストアップする。次に、状況を分析、検討し、決定する。
9 逸脱の常態化
(Normalising deviance)
逸脱が当たり前と見做される。予期せぬことが予期したことになり、そして、予期したことは受容される。 サプライヤー (供給者) のミスについて議論する会議で、「このサプライヤー (供給者) は何度も正しく供給している。そういうことも時々ある」と言う従業員はほとんどいない。 リーダーは、そのような「耳触りのよい」答えを奨励すべきではなく、失敗の適切な分析を行うようにしなければならない。
10 あいまいな脅威
(Ambiguous threats)
問題を予防することが十分に認識、重視されていない。 非常にシステマチックで危機が起こらないようにするサプライヤー (供給者) と比べ、「危機管理」を好むサプライヤー (供給者) が簡単に選ばれがち。 サプライヤー (供給者) を評価をする際は、計画を立て、計画通りに実行することを重視する。

まとめ

このようなバイアスは、仕事でもプライベートでも、私たちが下すすべての決断に影響を与えますが、ここではアウトソーシング (外部委託) プロセスにおけるバイアスの影響に焦点を当てました。このような脳の行動パターンを知ることは、私たちがプロフェッショナルとして、事実に基づいた意思決定をするために必ず役に立ちます。これをきっかけに、顧客管理、従業員管理など、他の分野でも同様の影響を検討することができればと思います。専門的にマネジメントされているサプライヤー (供給者) は、組織の長期的なサポーターとなる傾向があり、効果的なサプライチェーンマネジメントのための強力なサプライヤー (供給者) チームを確保することができます。

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