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完全なデジタルトランスフォーメーションに必要なのは従業員の積極的関与

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完全なデジタルトランスフォーメーションに必要なのは従業員の積極的関与

近年、デジタル技術の発展に伴い、社会のさまざまな基盤が著しい速度で変化しています。「IT の浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念であるデジタルトランスフォーメーション (digital transformation) は単なるテクノロジーの発展のみでは実現できません。
ミッター・ヴェドゥ 教授 (Mitter Vedu, FCQI = Chartered Fellow at CQI) はデジタルトランスフォーメーションが組織に与える影響を検証し、デジタルトランスフォーメーションによるメリットを享受するためには従業員のエンゲージメント (積極的な関与) が重要であることを指摘するとともに、従業員のエンゲージメントを確立し、価値観、ビジョンを共有したチームが目標に向かって進むためのフレームワークを提示しています。

quality.org に掲載の英文の記事はこちらから

デジタルトランスフォーメーションとは?

今日、多くの企業、とりわけ中小企業は、完全なデジタルトランスフォーメーション (CDT=complete digital transformation) を目指しています。これらの企業は、オペレーションにパラダイムシフトをもたらすデジタル技術を早くも取り入れています。ここ数年、デジタルディスラプション (digital disruption デジタル技術による創造的破壊) による競争が再燃し、ビジネス戦略の中心にイノベーションが据えられ、新しい市場が開拓されています。

モバイル、クラウド、そしてビッグデータは業界の流行語となり、マシンツーマシン (M2M = machine to machine)、モノのインターネット (IoT = Internet of Things)、人工知能 (AI = artificial intelligence)やアナリティクスといったさまざまなニューエイジのデジタルツールが次なる牽引役と目されています。ビジネスプロセスマネジメント (BPM) やさまざまな製品が市場においてますます注目を集めています。しかし、テクノロジーそのものが必ずしも進歩を保証するわけではないということをリサーチは示しています。テクノロジーは社会の構造を増幅させます。変化のためにテクノロジーを活用するには、組織の人的及び文化的特質をよく理解しなければなりません。デジタル機器への依存は家庭においても、職場においてもしばしば人的なつながりの欠如と結び付けられますが、デジタル機器の利用はチームワークがうまく行くかどうかに関して、成功要因、阻害要因、そのどちらにもなり得るのです。

人の関与の重要性

かつてトヨタ自動車の5代社長、豊田英二は「仮にひとつの決断をしても、経営トップは単なる旗振り役にすぎない。その振った旗にみんながついてきてくれなかったらダメだ」と言いました。デミング博士は「仕事への誇り pride of workmanship」を注ぎ込むことを原則とすることを提唱していました。ウィンストン・チャーチル記念財団による1993年の産業/教育分野のフェローシップ受賞者であるグレイアム・ウィルソン博士は、かつてパフォーマンスのクオリティを3本足の椅子にたとえました。3本の足とは、製品、プロセス、そして人々です。人々の関与がなければ、製品 (とサービス) とプロセスはどちらも最良にはなりえないと言います。製品あるいはサービスの卓越性 (excellence) のための必須条件は、熱心にプロセス改善に取り組む人々です。CDTに熱狂的に取り組む人々の中には、イノベーションと成長に関する人的要素を無視している人もいるようです。顧客/ステークホルダーのサービスに関して自発的なイノベーションの能力が最適に利用されるのでなければ、熱心に取り組む従業員のいない情報技術は有効でないプロセスを慣行化するだけのことになります。

今日、テクノロジーは垂直軸だけはなく、組織のあらゆる要素を横断して拡散しています。伝統的なビジネス組織からデジタル組織への移行が目の前に迫っています。インテリジェント・オブジェクト (人間の周囲のさまざまな『モノ』にマイクロコンピュータを組み込んだもの)、クラウドベースの情報システムや、複雑で膨大なデータを分析する能力によって差別化された、正しい情報を必要なときに入手できたとき、意思決定はどのように行われるだろうかというのは、適切な質問です。

従業員のエンゲージメント (積極的関与)

経営者が抱える問いは以下のようなものです。 どうしたら、従業員がビジョンと価値観を自らのものとし、価値観を実現するようになるか? どうしたら、人々が変化を受け入れるようになるか? 我が社の従業員は、この波によりどのような影響を受けるか、乗り越えるためには何が必要かを理解しているか? この変化に十分な力を注いでいるか? これらができていないようなら、もう遅いかもしれません。記録のシステム (systems of record) が積極的関与のシステム (systems of engagement) へと移行したとしても、それだけではこの変化には十分ではありません。単なるオートメーション化はデジタル化ではありません。人にやさしい組織にするためには、従業員はインテリジェンスのシステム (systems of intelligence) を身に付けなければなりません。デジタルビジネスの成功は、顧客体験を向上させるプロセスベースのマネジメントのフレームワークに依存しますが、従業員にはこのフレームワークに熱心に参加するための知識と意欲が必要になります。

世界は人とマシンのパートナーシップに移行しつつあり、従業員にとって、どのような職務かということはもはや心に響きません。仕事を魅力的にするのは、よい報酬、成長の機会や作業環境といった要素です。働くのに最良なのは、多様な人材を受け入れ、公正であり、明らかに開放的であり、序列によって動かされることなく、変革の機会を提供する企業です。開放的でフラットな組織では、人員の離職率はうらやましいほど低いです。インクルージョン (inclusion = 多種多様な価値観や考え方を持つ個人ひとり一人の能力や経験、スキルを活かし、個人・組織ともに活かすこと)、開放性、そしてイノベーションが求められ、所属意識とお互いに補い合う多様性があってこそ、人々はチーム環境の中で活躍するのです。

このような状況では、従業員のエンゲージメントを得るための系統的なアプローチがぜひとも必要です。

デジタルトランスフォーメーションを進めるときには、従業員のエンゲージメントを深めることも同時に進めなければなりません。そうでないと本末転倒になります。従業員のエンゲージメントは理解するためのコミュニケーションから始まる一連の努力の結果です。理解することは、チームの団結力につながります。チームの団結力は、内部あるいは外部の顧客への成果となるチームの目標へのコミットメントを促進し、自信を与えます。そうなると、従業員は、組織全体の戦略的目標へ積極的に関与するようになります。活動のこのサイクルでは、マネジメントのための大きな学習サイクルが形成されます。詳細サイクル (4C2E)サブサイクル (GAMER) (ESCAPE) を下記に示す「従業員エンゲージメントのフレームワーク」 (表 1.0) に表します。

改善を持続させるためには、チームが合意した標準的な作業手順の中で、あらゆるプロセスの改善の努力が必要であることを認識することが重要です。多くのプロセス改善の努力が無駄となっていますが、ほとんどは下記の3つの理由が原因です:

  1. 文書に頼りすぎている
  2. 手順が品質マネジャーに委ねられてしまっている
  3. 改善案後の維持計画がない

プロセスオーナー/管理者のサポートが基本的な要件なのは言うまでもありません。たくさんの組織でこのアプローチがうまく機能しています。

著者について

ミッター・ヴェドゥ教授 (Professor Mitter Vedu, FCQI) はシックスシグマのブラックベルトであり、過去50年にわたり、スイスとインドで戦略的クオリティに関与してきました。

表 1.0 - 従業員エンゲージメントのフレームワーク
チーム形成の権限をもつリーダー/プロセスオーナーのための大きなエンゲージメントサイクル (4C2E)
1. Communication コミュニケーション: 実行可能な限り、チーム設定においてビジョン、価値観、目的及び目標を策定する
2. Comprehension 理解: ビジョン、価値観、目的及び目標を達成するための従業員の役割の理解と力量を高める
3. Cohesion 団結: チームとそのリーダーがリーダーを含むチームの各メンバーの役割を進化させる
4. Commitment* コミットメント: チームが活動できるようにするために明確なマイルストーンを示す「結果と手段の原則」を使用し 、重要なマイルストーン達成に対しては価値を認め、知らしめる
5. Empowerment** 権限付与: 顧客にサービスし、満足度を向上させるためには、自分で判断できるという気持ちをもたせる
6. Engagement 積極的関与: チームの各メンバーは、原則の範囲内で、自らの方向を決定する感覚を培う
7. Review and Recycle 振り返りと循環: 学習と改善のサイクル
*規則的なアクションを方式化したサブサイクル (GAMER):
1. Goal 目標: チームのすべての目標は測定可能でなければならない
2. Action plan 実施計画: 定期的に簡単にモニタリングできる実施計画を策定する
3. Method 方法: 簡単に記憶できる行動計画を実施するための段階的な方法/経路を決定する
4. Execution 実行: 体系的に上記の方法を用いて計画を実行する
5. Result 結果: 目標を達成したら、測定し、検証する
6. Review and recycle 振り返りと循環: 学んだ教訓を列挙し、次のサイクルに反映する
**プロセスの段階の改善/再設計のサブサイクル (ESCAPE):
(スイムレーン・フローチャートやバリューストリームマップを用い、チームとして各段階を精査する:
1. Eliminate: 顧客 (プロセスのアウトプットを受ける人) にとって価値のない段階であれば除去する、そうでなければ、
2. Simplify: 目標達成の観点から適切でない、不要に複雑な段階を排除し、段階を簡素化する
3. Combine: 1人のメンバーがほかのメンバーに渡すことなく処理できるよう複数の段階を組み合わせる、あるいは
4. Automate: 反復される要素がある場合、デバイスや機械学習のアルゴリズムを用いて、段階を自動化する、あるいは
5. Parallelise: 段階を並行化する。つまり、相互に独立した他の段階または複数のステップと同時に実行できるようにする、及び/もしくは
6. Error-proof: 意図しないエラーを防ぐために、デバイスまたはダイアログボックスを利用したポカヨケ策を講じる
7. 達成した結果をレビューし、持続可能なやり方で満足のいく改善が達成されるまで、学んだ教訓に繰り返し立ちかえる

※IRCAの各詳細は下記よりご確認頂けます。

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