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産業界から見た監査の将来の価値

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産業界から見た監査の将来の価値

監査はこれからどう発展していくことができるかについて、CQP MCQI* (Chartered Quality Professional – Member)及びMIEAust CPEngであるCheekeong Lohが概論を述べます。

* CQP MCQI

>quality.org の英語記事はこちら

 私は産業における実務家として、地域や業界を問わず、製造業の組織が改善を達成するための支援を行ってきており、最近ではクオリティ4.0やスマートマニュファクチャリングに関する研究を行っています。仕事を通じて、インダストリー4.0、人口知能 (AI)、機械学習 (ML)、ブロックチェーン、モノのインターネット (IoT)、やバーチャルリアリティなどの新しいトレンドを興味深く見守ってきました。

研究するにつれ、次のような疑問が生じてきました。財務監査以外の、品質、業務改善及びデューデリジェンスなどの分野を推進する監査は、これらの新しいトレンドにどのようにフィットしていくのか?監査は依然として高い価値を保っているのか?監査はいずれ人工知能に取って代わられるのではないか?監査員の役割やスキルは将来的にも適切であり続けるのか?

未来が見える水晶玉をもっている人はいません。しかし、多くの場合、産業界の混乱は機会へとつながり、そこでは通常の方法とは異なるアプローチが必要です。審査/監査の未来のために必要なのは、この変化した環境における監査の価値を理解することです。これにより、今後、より強化すべき分野が明らかになります。

機会

監査の主な目的は、期待に対して独立した評価や検証を行い、最終的に望ましい結果に向けた改善へと導くことにあります。新しいトレンドには大きなチャンスが潜んでいます。以下に5つの重要な側面を説明しましょう。

1. Technology  テクノロジー

情報の取り扱い、コミュニケーション及び監査の実施におけるテクノロジーの価値が、最近のパンデミックによる渡航制限を経て、ますます顕著になっています。クラウドコンピューティング、SaaS (サービスとしてのソフトウェア Software as a Service)、オンライン会議のプラットフォームなどのソリューションが人気を博しています。現在のリモート監査のやり方とは別に、証拠やデータを安全なクラウドストレージにアップロードして、モバイルアプリの機能や監査前の質問票で利用することができるかもしれません。このようにして、監査の現地訪問前の基礎的な作業をカバーすることにより、監査員は現地で注意を払うべき点に集中することができます。また、業界データをベンチマークして、付加価値や改善の機会を特定するためのさらなる分析を可能にするソフトウェア機能を開発することもできるかもしれません。

2. Data science  データサイエンス

監査の定量的なアプローチとデータサイエンスの適用もチャンスです。監査の点数、図及び記述的統計、並びに定性的な報告は、特に第1者及び第2者監査では一般的です。これは、データサイエンスとビジネスアナリティクスを適用することにより、ソフトウェアのアルゴリズムを利用して分析を行うようにさらに拡大していくでしょう。監査の価値は、関連する監査所見や組織の主なパフォーマンス指標に照らした業務データの調査から知見を見出すことで高まります。例えば、生産性や能力計画に照らして機器の保全を予測分析するアプローチは一般管理費 に対してメリットがあるかもしれません。

3. Value-driven approach  価値に基づくアプローチ

上述した監査価値の向上を可能にする要因に加え、監査の価値は適合性重視から有効性と価値重視へと重点を移すことで向上する可能性があります。それぞれの組織にはそれぞれのニーズがあるので、標準化されたアプローチではなく、カスタマイズされた焦点が必要です。ある組織は、特定の要求事項への適合性を実証していても、持続可能性、苦情の取り扱い、不良の削減、資産の活用、新製品の導入及びデジタルトランスフォーメーションなど、特定の業務におけるパフォーマンスについて助言を必要としているかもしれません。一般的な適合性の検証に加えて、組織の目標や関心事に沿った、目標に立脚した評価を行うことで、組織のニーズにより応えることができます。焦点を絞ったアプローチに、強化したテクノロジーとデータサイエンスを組み合わせることで、価値と影響を最大限に高めることができます。

4. Small businesses and solopreneurs スモールビジネス*と個人起業家

デジタル技術やネットワークプラットフォームを活用してビジネスを展開するスモールビジネスや個人起業家 (ソロプレナー solopreneur) が増えています。スモールビジネスや個人起業家は、長々とした詳細な手法を導入するための資源や専門知識を持ち合わせていないことが多く、自分たちのビジネスモデルや資源のレベルに合った実用的なアプローチを好みます。この人たちはそれぞれのサービスの専門家ですが、自分たちの能力を認知してもらい、新規の見込み客を惹きつけるために、他の慣行や認証に関連する指導を必要とするのもよくあることです。通常の包括的なマネジメントシステム規格は、スモールビジネスや個人起業家にとっては、自分たちには当てはまらない、あるいは魅力がないように見えるかもしれません。なぜなら、規格はそれを維持し、実施するための資源をもつ大規模な組織に適しているように見えるからです。したがって、これからの規格は、スモールビジネスや個人起業家も使えるように、必須の部分をさらに絞り込む必要があります。スモールビジネスは新興の集団 (segment) であり、顧客に伝えるためのガイダンスや信頼できる認知方法を求めています。

* 規模は小さくても優良な先進的中小企業やベンチャー企業のことを指す

5. Reputation and trust 評判と信頼

私たちは、ソーシャルメディア、顧客からのフィードバックや口コミが当たり前となった接続された世界に住んでいます。認証機関を含む組織の評判 (reputation) は信頼を反映するという意味で重要です。これは信頼できる、独立した監査員についても同様です。今日では、個々の監査員の評判は組織と同じく、あるいはそれ以上に重要です。

異なる視点から見た監査員の役割

このような機会は、監査員の役割を別の視点から見てみるチャンスでもあります。以下の重要な要素は、上で述べたニーズに対応するために必要な監査員の姿勢と強化すべき点を示しています。

  • Add value  価値を付加する
  • Uplift morale  士気を高める
  • Detect potential risk  潜在的リスクを探知する
  • Investigate  調査する
  • Trace  追跡する
  • Objective assessment  客観的な評価
  • Report  報告する


ほとんどの要素は監査員にとって目新しいものではありませんが、今後、より強化していく必要がある2つの分野は「価値を付加する」ことと、「士気を高める」ことです。価値を付加することについては前述のとおりです。

「high tech, low touch ハイテク、ロータッチ*」という言い回しがありますが、これはテクノロジーでは実現できない人間的な要素を対比させたものです。監査員はきっぱりとした公平な存在であるべきですが、職務を遂行する際に人間的な要素を排除すべきということではありません。監査を受ける側が励まされ、自信がもてるように対応すべきです。監査後、被監査側は改善の機会を得て、結果はよりよくなると信じられるようにすべきです。監査の場にはそぐわないように思われるかもしれませんが、「士気を高める」ことの重要性はいくら強調してもし足りません。

* ロータッチは、ハイタッチ、テックタッチと対になったマーケティング用語で、大いに見込みのあり、個別対応を行うハイタッチの顧客ほどではないけれども、大多数を占める見込みの薄いテックタッチ層よりも見込みがあり、場合によっては個別にも対応する必要がある顧客層のこと。

将来

マネジメントの第一人者であるピーター・ドラッカーはかつてこう言いました。「The greatest danger in times of turbulence is not the turbulence; it is to act with yesterday's logic. 激動の時代における最大の危険は激動そのものではない、昨日の論理で行動することである」。

現在、私たちは間違いなく不確実性の世界に直面しています。CQI の力量のフレームワークは、クオリティプロフェッショナルに継続的な専門的能力開発のための計画を提供しています。

※IRCAの各詳細は下記よりご確認頂けます。

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018