顧客の要望を展開するための尺度
CQI のウェブサイト quality.org から、収集したお客様の声をどのような尺度を使って、どのようにプロセスに展開するかを検討する記事をご紹介します。
quality.org に掲載の英文記事こちら
クオリティを構成する要素 (品質特性) で重要なものは顧客要求事項に関連しています。顧客要求事項を満たすためには、顧客要求事項を満たすようにプロセスを設計し、計測することができなければなりません。すなわち、自分たちのプロセスに顧客を紐づける必要があるということです。
顧客要求事項と自社のプロセス間の因果関係を発展させれば、どのプロセスを測る尺度を改善すべきか、またどれに対応すれば結果の尺度と顧客満足が改善するかを確認することができます。
正しい尺度を策定するプロセス
1. 顧客の声 (VOC) を捉える
- お客様自身の言葉で語られる要求事項を捕捉するため、聞き取りやアンケートを利用しましょう: 例えば、「ご注文されたピザはいかがでしたか」
- お客様自身の声を1つの考えにまとめる単純な表現に変換し、それをオペレーション上で定義するようにします。例えば、「ピザは熱くなければね」 → 「熱い」 = 「校正済みの非接触型赤外線温度計で測った、配達完了時点でのピザの中心部の温度」ということになります。
- お客様の言葉を言い換えたデータ (この場合は「熱い」) を分類し、大見出しを付けます。
2. 顧客のニーズをプロセスに展開する
さて、お客様の要求事項を手に入れたので、それを製品及びサービスの特性と尺度に結びつけなければなりません。そのためには、2つのマトリックスを使います。最初のものは、お客様の言葉と特定された結果の尺度の関係を定義するものです。2つ目は、結果の尺度とプロセスの尺度の関係を示すものです。
a. 結果尺度 (RM) – VOC の関係のマトリックスの作成
- 顧客要求事項が満たされているかをチェックするために現在使っている結果の尺度をリストアップする
- 顧客要求事項と結果尺度の関係をマトリックスを用いて明確にする
- さらなる結果尺度が必要な顧客要求事項をすべて特定する
b. プロセス尺度 (PM) – 結果尺度 (RM) の関係のマトリックスの作成
- どの要求事項がお客様にとってもっとも重要であるか、改善が必要な結果尺度はどれかを特定する
3. マトリクスを作成する
このマトリクスを表示の仕方には2種類の確立された方法があります。2つのL型マトリクスで示す方法とT型マトリクスですが、私の好きなのはT型マトリクスです。T型マトリクスには、顧客の声 > 結果尺度 > プロセス尺度 (VOC → RM → PM) 間の主要な関係性を1つの図の中で見ることができるという利点があります。
マトリクスを作成するときには、関連性の強さを表現する記号を使いましょう。これは関係するプロセスに関するご自身の経験に基づく主観的なものであるということを忘れないように。
これで、因果関係をロジックチェーンで表現して、顧客フィードバックに影響を与えるプロセスで測定すべきものを評価することができるようになります。プロセス尺度を改善することにより、結果尺度も改善され、ひいては顧客フィードバックを改善することになります。
余計なものを測定していませんか
ご自身の測定がお客様の声に紐づけされていないなら、本当にそれを測定する必要があるのかを一度ご自身で振り返ってみてください。内部顧客に必要な測定と外部顧客に必要な測定は異なる (効率vs 効果) ことに気付くかもしれません。
測定が不十分なときは、それぞれの顧客からのフィードバックに直接結びつく新しい尺度をつくりましょう。可能であれば、まず小規模からテストしてみて、それから全体に展開しましょう。
● すべての言葉や尺度がオペレーションにおいて定義されているようにしましょう。そうすれば、間違って解釈する余地はなくなります。そうでなければ、実施は極めて困難です。
● 数字ではなく記号を使いましょう。数字を使うと、人々は数字に振り回されてしまいます。
● 必要に応じ、主観的な評価をデータで検証しましょう。
お客様を忘れてはいけません!
お客様に積極的にアプローチしていけば、正しい尺度を選ぶためのプロセスは最高の結果をもたらすということを覚えておきましょう。そうして初めて、どの尺度を選べばよいのかがわかるのです。
執筆者について: 執筆者のDennis Crommentuijn-Marsh 氏は、PMI社のPractice Head Data Analytics and Insights部門の主任コンサルタントです。