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イベントレポート: OEA導入企業対象 組織とクオリティ 意見交換会

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イベントレポート: OEA導入企業対象 組織とクオリティ 意見交換会

去る9月25日、IRCAジャパンはOEA導入企業を対象とした「組織とクオリティ 意見交換会」を、コロナパンデミック以来、約4年ぶりとなる対面形式で開催しました。当日は、OEA導入企業のうち、9社から27名にお集まりいただき、英国から来日中のIRCAジャパン取締役 並びに CQIの Executive Director である Tally Singerのファシリテーションによるワークショップが行われました。

イベント概要
タイトル: 「OEA導入企業対象 組織とクオリティ 意見交換会」
開催日時: 2023年9月25日 (月) 14:00~17:00
場所: 海運クラブ 304会議室 (東京都千代田区平河町)
参加企業: Aramco Asia Japan、中外製薬株式会社、株式会社ディスコ、東海澱粉株式会社、日揮グローバル株式会社、日清食品ホールディングス株式会社、株式会社パスコ、株式会社ファミリーマート、よつ葉乳業株式会社 (50音順)
ファシリテーター: Tally Singer (逐次通訳あり)

今回のワークショップは、CQIがグローバル企業や品質に関連する専門機関との協力を通じて得た洞察を共有し、参加者の皆さんとクオリティマネジメントの専門家をとりまく状況の変化が与える影響について検討するという趣旨で行われました。

参加者の皆さんは到着すると早速お互いに紹介しあい、開始前からすでにネットワーキングが始まるという和やかな雰囲気のうちに、まず、ファシリテーターの Tally Singerより本日の目的は、第一に参加者の皆さんが楽しむこと、次に仲間づくりをすること、そしてご自身の意見や経験を皆さんと共有することであることが述べられました。続いて、CQI のミッション、ビジョン、価値観、クオリティ4.0 などのリサーチ活動などについて情報共有されたのち、今日私たちが直面する4つの重大な課題が提示されました。

  • テクノロジーは品質マネジメントにどのような影響を与えるのか?また品質マネジメントはテクノロジーにどのような影響を与えるのか?
  • 品質マネジメントは、組織がESGの責任と目標を達成するのをどのように支援することができるのか?
  • 品質マネジメントは、どのようにしてイノベーションとアジリティを可能にし、かつ顧客や利害関係者が必要とする成果をもたらすことができるのか?
  • 組織は、問題に対応するための適切なスキルをどのように確保するのか?


これらの課題が提示されたのち、日本の状況について各テーブルでディスカッションを行い、その結果、以下のような事項が提示されました。

  • テクノロジーが発展する中、品質保証、品質マネジメントシステムをどうやって展開していくかが課題
  • 焦点が製品の保証からビジネスの保証に移ってきている
  • 日本企業ではテクノロジーの導入が遅れているのではないか (過去に拘り保守的になっている)
  • テクノロジーが進んでも判断をするのは人間、そのデータがどういう意味を持つのか、その決断がどう次につながるのかを考える必要がある
  • 外部の予期しない変化への対応の難しさ―例えば、製品の種類によってはコロナパンデミック後急増した需要にすぐに対応できない場合がある、猛暑などの異常気象が製品の保管状況などに影響を及ぼす場合がある
  • 日本の製品はオーバースペック、法令を含め要求が細かすぎはしないか
  • 業種によっては手作業が多く、ロボティクスなどの活用が進んでいないが、これは日本特有なのか

その後、この課題を掘り下げるため、テクノロジーESGイノベーションとアジリティ (俊敏性)スキルという4つのテーマに沿って途中休憩を挟みながら、各テーブルでグループディスカッションを行い、参加者の皆さんのご経験や考えを共有いただきました。

テクノロジー

CQI の実施したクオリティ4.0のリサーチの結果、品質の専門家はこの分野において果たすべき主要な役割が2つあることが明らかになりました。品質の専門家は組織が新たなテクノロジーを導入し、活用する支援をしなければなりません。同時に、このテクノロジーを品質マネジメントの中で活用していく方法を見つけ出していくことも私たちの役割です。

問1: 日本の企業は新しいテクノロジーを品質マネジメントにどのように活用していくのか?
問2: 新しいテクノロジーは品質の専門職にどのような影響を与えるのか?
参加者から提示された事項
  • 検査の自動化、原材料や製品などのQRコードなどによるトレーサビリティの確保などはより一層の進化が期待される
  • 監査などにおいてのAI の活用は補助的なものに留まる
  • リモート監査は現時点ではまだ十分に機能しない
  • Teams で監査の会議室をつくり、監査部門以外にも開放したところ、期待を上回る多くの人が見に来た
  • デジタルトランスフォーメーションに必要なコストは業種によっては商品の値段に反映させることが困難
  • IT部門がデジタル化を進めているが、システム開発時に品質部門が関与し設計の検証を行っている
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環境、社会、ガバナンス (ESG)

CQI のメンバーに対して実施した調査によると回答者の92%が、品質と監査の専門家がESG目標の達成をサポートできることに同意または強く同意しています。品質の専門家は利害関係者の要求事項を理解し、持続可能性を確保するために調達プロセスをサポートし、品質と保証を最初から意思決定に組み込む必要があります。

問1: 品質マネジメントは戦略や目標設定においてどの程度配慮されているか?
問2: ESG の義務と目標を達成するために品質マネジメントはどのように組織を支援することができるのか?
参加者から提起された事項
  • なかなか自分事として取り組みが進みにくい
  • 環境に重点が置かれている
  • 同じ業界内で、環境に配慮したパッケージを採用したところ品質上不具合を生じたという事例があった。ESGの戦略や取り組みにおいても、最初から品質が考慮され、品質部門が関わっていくことが必須
  • 今後、ESG への取り組みを行わないと顧客に選ばれなくなっていくのではないか
  • 導入後のプロセスが適切であるか、例えば検証プロセスなど経営者が関与しているか
  • すでに人権や持続可能性について監査時に口頭での確認があるようになっている


イノベーションとアジリティ (俊敏性)

組織はどのようにイノベーションを俊敏に実施しながら、品質を維持することができるでしょうか?改善とは逸脱することなく、少しずつ変化することです。これに対し、イノベーションとはこれまでと全く違うことをする、従来の品質管理が目指す改善の積み重ねではなく、今までの枠を壊して先に進むことです。ですから、企業にとっての課題は品質をリスクに曝すことなく、どうイノベーションを起こしていくか、それから品質マネジメントがいかに川上から対応すること (シフトレフト) ができるかということです。

問1: 現状として品質マネジメントはどの程度イノベーションやアジリティ (俊敏性) に寄与しているか?
問2: あるべき姿として、今日、また将来にわたって品質マネジメントはイノベーションやアジリティに寄与していくべきなのか?
参加者から提起された事項
  • 生成AI の活用が進んでいるが、AIが作成したものを知識のある人間が見直すことが必要である
  • 経営者が積極的にイノベーションを促している
  • 品質確保の観点からはイノベーションを避けようとしているのではないか
  • 常にイノベーションマインドがある組織だが、開発段階にQAが入ると開発スピードが遅くなる、どうやって折り合いを付け、関与していくのかが課題
  • あるべき姿としては、品質部門がイノベーションや俊敏性に関与すべき


スキル

2022年12月に行ったCQIメンバーの意識調査では、回答者の75%がクオリティプロフェッショナルは新しい知識、技能及び行動を身に付けない限り、クオリティプロフェッショナルの将来が危うくなるということに同意または強く同意すると回答しました。品質マネジメントにおける私たちの役割が今後も続くようにする必要があります。そのためにはクオリティプロフェッショナルの提供する価値を身をもって示していかなければなりません。

問: 品質マネジメントの技能並びに力量について所属する組織はどの程度懸念しているか?
参加者から提起された事項
  • 懸念していない企業はないのではないか
  • 従業員の多様化が進んでいくとスキルの維持が問題となる
  • 自分たちはスキルは重要であると認識しているが、実際に上層部など所管部署以外でスキルが重要視されているかは不安がある
  • 品質保証部でもサプライヤーの指導などが行える力量ある要員が不足している
  • 他部門では品質管理は重要視されているが品質保証は軽視されているのでは?


閉会に当たりTally Singerから

クオリティプロフェッショナルは価値を生み出し、自分たちの生み出す価値をほかの人たちに売り込んでいかなければなりません。そして、本日の議論で明らかになったように、新しいテクノロジー、ESGやイノベーションへの対応は難しい課題ではありますが、私たちに自分たちの価値を売り込んでいく新たな機会を与えてくれていると言えます。

この会の終わりに当たり、冒頭で述べたように、本日のセッションは、皆様にとって答えではなく、新たな疑問、新たな課題を見出す機会になったでしょうか?楽しむこと、仲間づくりをすること、意見を共有することという本日の目標は達成されたでしょうか?


参加者アンケートから

◆短い時間であったがクオリティプロフェッショナルの関与がこれまでと違う形式になりつつある情報をもらえてとても良かった。
◆品質マネジメントシステムの価値を提供していかなければならない、というメッセージを受けて、そのアピールもしていきたいと思うようになりました。
◆特に『シフトレフト』、プロジェクトの企画段階から品質管理を取り入れることの重要性についてディスカッションができて良かったです。業界は違えど、QMSが積極的に参加する必要性を感じました。
◆お蔭様で、自分の会社の業界と全く異なった業界の方と接する事が出来ました。
◆普段関わらない他業種の業務内容や対応への知見を広げることが出来ました。
◆未来へ向けた視点の参考となりました。
◆クオリティマネジメントに関する新たな知見や監査への取組み方を思考する良いきっかけとなった。
◆久々となる集合形式での適度な研修参加となり、楽しんで学べたのではないかと考えております。IRCA活動の価値をより一層、アピールして高めていくためにも、新しい仲間をもっと増やしていくことが必要と考えます。そのためにもコミュニティが図られる研修等イベントを引き続き企画頂きたいです。

IRCAジャパンから

3時間という短い時間でしたが、普段接することはない他業種の方たちが同じテーブルに座り、それぞれの成果や課題を話し合うことができたことは、参加者の皆様にとってだけでなく、IRCA 及びCQI にとっても貴重な機会となりました。引き続き、このような機会をご提供していきます。

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018