進化するテクノロジーとクオリティ
さまざまな領域において、AIやブロックチェーンなど新たなテクノロジーの波が押し寄せています。クオリティの世界ではどうでしょうか。今後、どのようなことが起こってくるのでしょうか。コンサルティング、テクノロジーサービス及びデジタルトランスフォーメーションのグローバルリーダーであるキャップジェミニ (Capgemini) 社に属するソゲティ (Sogeti) 社に、同社が発行した最新のワールド・クオリティ・レポートについて、またデジタル技術とクオリティに関する職務の関係についてCQIのアリシア・ディマスがお話を伺いました。
quality.org に掲載の英文記事はこちら
キャップジェミニ社のワールド・クオリティ・レポート2018の主な調査結果
- 組織が利用するアプリケーションの76%はクラウドベースのものとなっている
- 何らかの形でIoTと連携する企業の割合は、昨年の83%から今年は97%にまで増加している
- 回答者の60%は、すでに自分たちのポートフォリオにブロックチェーンを利用している、もしくは次年度に使用開始する計画であると答えている
- 回答者の 57%が、QA と試験のためにAIを利用するプロジェクトを実施している、もしくは今後12か月以内に実施する計画がすでにあると答えている
クオリティプロフェッショナルとデジタル技術
クオリティプロセスのデジタル化がどんどん進んで行く中、品質保証 (QA) と試験の役割はどのように変わっていくのでしょうか。
ソゲティ社は、ワールド・クオリティ・レポートの第10版でこの問いに対する見解を展開しています。2018年9月に発表された調査結果が示すのは、品質保証及び試験において、セキュリティ、モノのインターネット (IoT) 及びブロックチェーンなどのデジタル技術の専門知識の必要性が差し迫ったものになっているということです。
ソゲティ UK のCOO、ダレン・クープランド (Darren Coupland) は、品質保証の専門家が「新しいテクノロジーと新しい働き方に遅れず付いていくためには、常にスキルをアップデートしていく必要がある」と言います。
これらの新しいコンセプトの1つにブロックチェーンがあります。キャップジェミニ社の調査では、企業はますますブロックチェーン技術を利用するようになっており、調査の回答者の半数以上が、すでに自分たちのポートフォリオにブロックチェーンを使っている、あるいは次年度に使用を開始する計画であると答えているそうです。
「このレポートでは、人々がセキュリティ、データインテグリティと信頼性の観点から、ブロックチェーンを使用していることが示されています」とクープランドは言います。しかし、他の新技術同様、クオリティプロフェッショナルがブロックチェーン技術を用いて適用とソリューションの妥当性確認を行う力量を身に付けようとするなら、学習し、経験を積むために、ある程度時間を掛ける必要があるだろうとも言います。
レポートによれば、人工知能 (AI) も品質保証 (QA) の分野で存在感を増しています。では、クオリティプロフェッショナルは、AI に職を奪われることを心配するべきでしょうか。
ソゲティUKの副社長であるゲイリー・ムーア (Gary Moore) は、AI はクオリティプロフェッショナルにとって脅威ではないと言います。「それどころか、AI は品質保証のプロフェッショナルにとって、大きな機会を与えてくれると思っています。AIを利用すれば、プロセスに価値を付加しない作業に無駄に時間をとられることなく、クオリティプロフェッショナルとして行うべきことを実施し、正しい結果を得ることに集中することができるようになります」。
「多くの産業で、AI とロボットが人々から職を奪うのではないかという恐れが広がっています。しかし、われわれは、AIやロボットは、QAを改善するために必須のツールと捉えています」とクープランドは言います。「顧客の視点から見て、機能の点についてもそれ以外の点についても継続的に進化せず、よりよい価値を与えない試験サービスにお金を使うほど悪いことはないと思います。AI やコグニティブ (Cognitive=認知、IBMのワトソンが一例) ソリューションなどの新しい技術を採用し、試験の実施方法を変え、よりよい価値を提供し、顧客体験を保証しながら、市場投入までの時間を短縮するようにするのが私たちの使命です。これらのツールを最大限に利用するためには、コンサルタントがこれらのテクノロジーに習熟しており、ツールを適切に使いこなせなければなりません」。
実際、企業はこれらの新しいテクノロジーがビジネスにもたらす機会で優位に立とうと、デジタルテクノロジーに対する投資を増やしています。リアルタイムの更新、ダッシュボード、メトリクス分析やその他のデジタルツールによって促進される顧客重視の姿勢もまた、企業間でより一層一般的になりつつあります。これはクオリティプロフェッショナルにとって、新たな課題であるとともに、追求すべき機会でもあります。
「ワールド・クオリティ・レポートは、新たなデジタル世界によって、企業がどのように顧客に働きかけることができるようになったかを極めて明確に示しています。エンドユーザの満足度を確保することが、品質保証部門の要求事項の点からは最重要のフィードバックでした」とムーアは言います。また、自分のデータに関する人々の懸念が高まる中、信頼性がデジタル技術にとって重要な要素となっており、そこでも品質保証が使われるのだとムーアは付け加えます。
品質保証のプロフェッショナルとテクニックは変化しなければならず、デジタル技術によって運営される新しい世界に適応する必要があります。そして、繰り返しの多い時間の掛かる作業を肩代わりすることにより、これらの新しいテクノロジーはクオリティプロフェッショナルの仕事を容易にし、クオリティプロフェッショナルが今日期待されていることを超え、機械と人間とを差別化するスキルに集中することができるようになります。