IRCAジャパン リモート監査勉強会 フェーズ1活動報告
2020年6月29日に開催されたIRCAジャパンCPD推進イベント『リモート監査ウェブ月次会』をきっかけとして、9月より、IRCA登録メンバー有志による「IRCA ジャパン リモート監査勉強会」がオンラインで活動を開始しました。12月で議論の区切りを迎えたことを機に、これまでの議論内容やリモート監査体験のまとめをお伝えします。
リモート監査を巡る状況
リモート審査については、すでに2015年にはIAFから指針 (IAF ID 12:2015 Principles on Remote Assessment) が出され、先進的な認証機関等ではその手法やツールが検討/開発され、徐々に実施に移され始めていました。また、ISO 19011:2018 の附属書にはリモート (遠隔) 監査に関する項目がありました。しかし、2020年初頭の時点では、まだまだ人々はリモート監査を自分たちに関わりのあるものとして捉えることは少なく、一般的なものとは言えませんでした。
>CQI|IRCA ISO 19011:2018テクニカルレポート
ところが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、その状況が一挙に変わります。人の移動や対面でのやりとりが制限され、これまで当たり前のこととして、また必須のこととして行われてきた現地審査/監査を行うことが困難になったのです。そして多くの認証機関や企業がリモート審査/監査を検討し、また実施し始めざるを得ない状況となりました。
IRCA ジャパン リモート監査勉強会発足の背景
IRCAジャパンでは、リモート監査に関するより具体的な情報の提供や収集の必要性の高まりを受け、6月29日にオンラインCPD イベントとして、「リモート監査ウェブ月次会」を開催しました。この会には、想定よりも多数の方にご参加いただき、開催後のアンケートにもたくさんのご回答をいただきましたが、まだまだリモート監査自体が試行錯誤の段階にあること、何が大切なのか、そもそも何を検討する必要があるのか、どのような準備が必要なのか、リモート監査の目的は何か、リスクと機会にはどのようなものがあるのか等々の疑問が寄せられました。検討を始めるにあたり、ベストプラクティスの集積を含む、さまざまな情報の収集が必要という段階にあることは明らかでした。
リモート監査に伴うリスク及び機会 (あるいはその特定) や、手法などについてさまざまなガイドライン等が出てきていますが、現時点ではまだ定まった具体的な指標や基準やベンチマーキングがあるとは言えません。そして、リモート監査の状況 (context) を考えるときには、これからどんどん進むことが予想されるデジタル化、デジタルトランスフォーメーションを考慮に入れずにおくことはできません。
なぜなら、手軽に利用できるウェブ会議システム、あるいはユビキタスにアクセスできるネットワーク環境などをはじめとする情報テクノロジーが (絶妙のタイミングで) 発達し、普及しつつあったことが、リモート監査の実現可能性や実効性に大きく寄与していることは間違いないからです。仮に10年前に新型コロナウイルス感染症パンデミックが発生したとしたら、今のような監査慣行の変化は起こりえなかったでしょう。すでに私たちはデジタル化の世界に否も応もなく、一歩も二歩も足を踏み入れているのです。
また、デジタル化は単に監査の手法だけの問題ではありません。例えば人工知能化した機械による膨大なデータの集積、集約、分析や統合が可能になったこと、また、リモートワークの導入など、働き方が変化していることは、すなわち、監査の対象の変化も意味します。対象によっては現地監査の実施はそもそも不可能となる場合もあるでしょう。リモート監査 (監査する側がリモートにいる) のみならず、ヴァーチャル監査 (監査の対象が仮想環境にいる/ある) ということも起こってきます。
そして、これを受け、CQI|IRCAは、折に触れ発信してきたように、デジタル化した社会においてクオリティや監査のあり方はどう変わるのか、それが審査員/監査員及びクオリティプロフェッショナルの力量要求事項にどのように影響していくのかに焦点を当て、日本を含む、世界各国のクオリティプロフェッショナルと協力し、さまざま観点からのリサーチを開始しています。
>デジタルトランスフォーメーションとクオリティの関りに関する記事はこちら
IRCA ジャパン リモート監査勉強会の発足
そのような中、6月のリモート監査ウェブ月次会でプレゼンテーションとファシリテートを担当くださった、IRCAメンバーズサポーター 北村 弘氏 (日本電気株式会社 環境・品質推進本部) をはじめとした、有志の方、計7名 (第2回から参加の方も含む) が集まるIRCAジャパン リモート監査勉強会が9月に発足しました。
皆さんの顔合わせ及び今後の方向性を決めるプレセッションを含めると、これまでに、以下、3回のオンラインセッションが北村氏をファシリテーターとして行われました。
議事骨子
〇 リモート監査の議論に先立ち、DX時代に世の中が今後どう変わっていくかという世界観と、リモート監査の進化の方向感について共有した。
〇 参加者それぞれが自分たちの経験を話すとともに、この勉強会で検討したいことを提起しあった。
〇 その結果、DX時代の世界観という大きな絵を視野に入れながら、まずは喫緊のこととして、もう少し実務的なところのテーマである、現場の監査の取り扱い、リモート監査の標準化、そもそもリモート監査の目的は何か、現地監査との使い分けはどうするかといったことなどついて議論していくことになった。
〇 IRCAからは、リモート監査に関する、IAF、UKAS、APGなどの出しているガイドラインなどを次回までに共有する。
第1回 10月13日
議事骨子</br/>
〇 共有されたガイドラインについての意見共有
〇 現地監査とリモート監査の切り分けについて: 現地監査では何を見るのか、実際に現地で見ることの意味、現地監査の勘所、現地でしか確認できないことは何かについて話し合った。
〇 11月には複数の参加者がリモート監査を実施する、あるいはリモート審査を受けるため、次回は12月とし、各々の体験を持ち寄り、議論することとなった。
第2回 12月17日
議事骨子
〇 各々がリモート監査/審査で採用している手法や、気を付けるべきこと、準備事項、あるいは反対に、受査側として気を付けるべきことなどについて共有した。
〇 今回でひとまず、勉強会の区切りとして、これまでの議論内容やリモート監査体験をまとめ、IRCAジャパンのウェブサイトでIRCA登録メンバーと共有することとした。
〇 次回は2月初旬の開催を検討する。今後の世の中の変化を踏まえたより広い視点からのリモート監査のあり方について議論をするためのブレインストーミングを行う。
勉強会の詳細、討議の内容や、プレゼンテーション資料など
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