IRCA-マネジメントシステム審査員/監査員の国際登録機関 > 情報メディア > ソートリーダーシップ > 効率的なリーダーシップが競争力の可能性を解き放つ

効率的なリーダーシップが競争力の可能性を解き放つ

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
効率的なリーダーシップが競争力の可能性を解き放つ

quality.org の英文記事はこちら

Lead Auditor (主任審査員) のラスール・アイヴァジ (Rasoul Aivazi) 氏が、PDSA/PDCAサイクルはどのように組織の競争力の可能性を開くのかを検証します。

品質マネジメントとPDSA/PDCA サイクル

品質マネジメントは絶対的な理論的概念ではなく、積極的に取り組む意思のある組織にとって具体的な成果を約束する具体的なフレームワークです。

ISO 9001:2015品質マネジメントシステム-要求事項規格は、組織の大小を問わず、プロセスを最適化し、継続的な改善を確保するための方法に着目しています。

この領域で極めて重要な戦略は、PDSA (Plan、Do、Study、Act) サイクルであり、これはしばしばPDCA (Plan、Do、Check、Act) とも呼ばれます。前者はW.エドワーズ・デミング博士によるもので、後者はISO9001規格にそのルーツがあります。

特筆すべきは、日本ではデミングの影響が大きいにもかかわらず、PDSAではなくPDCAが根強く残っているということです。PDCAは「元祖」であり、今でもトヨタで使われています。しかし、デミングは、「チェック」が、自分が何をしたかをチェックするのではなく、チェックボックスにチェックを入れることと誤解されることがあったため、米国でのようにPDSA (Plan、Do、Study、Act) に変更しました。

この記事では、PDSA/PDCAとリーダーシップの相互作用を掘り下げ、統合されたリーダーシップの原則が組織の競争力をどのように高めるかを紹介します。

自分自身を成長させる

リーダーとしての卓越性 (excellence) への第一歩は、自分自身を成長させることです。現代の目まぐるしく変化するビジネスの世界では、流れや動き、発展がないことは組織の終わりを意味する可能性がありますから、リーダーは成長の動きの最前線に立つ必要があります。

組織がISO9001の潜在的な利益を享受したり、PDSA/PDCAサイクルを効果的に実施したりするためには、その組織のリーダーが適切なスキルセット、考え方、知識を備えている必要があります。個人の成長は、品質マネジメントにおける効果的なリーダーシップの基盤を形成します。

ここで重要なのは、PDSA/PDCAは、リーダーシップにおける自身の役割に関係なく、誰でも使えるということです。このことは、組織やそのリーダーが改善の方法を明示的または正式に承認していない状況でも当てはまります。個人は引き続き自主的に、PDSAに取り組むことができます。

トヨタのA3ストーリーボードのアプローチの重要な側面は、強化の可能性がある領域を特定するたびに、1人ひとりが改善サイクルを実行できるようにすることに重点を置いているということです。

「Plan」、つまり計画を立てることは、PDSA/PDCA どちらのサイクルにおいても最初のステップですが、それは単に目標を設定することではなく、ビジョンに関するものです。リーダーは、組織の目標と共鳴し、品質マネジメントとシームレスに統合するビジョンを明確に示さなければなりません。このようなビジョンは単独で生み出されるものではなく、継続的な学習、業界のトレンドからの洞察、そして自己認識の結果です。

積極的な参加が「Do」のフェーズの特徴です。ただ任せればよいという訳ではありません。リーダーは最前線に関わり、課題を理解し、プロセスの展開に参加する必要があります。これにより実施効果が高まるだけでなく、チームの士気も高まります。

しかし、振り返りのない行動は何の役にも立たず、まったく効果がありません。PDSAの「Study」のフェーズ、そしてPDCAにおける「Check」のフェーズは、単に結果を確認するためのものでなく、自己点検のためのものです。リーダーは、何が正しくて何が的外れだったかを理解する謙虚さと知恵を持たなければなりません。

この段階では、このサイクルの影響を受け、インプットを変える可能性があると思われる人たちに、あなたのアイデアを学び、共有してもらいます。このアプローチがうまくいく理由は、改善が合意され、実行に移されるまでに多くの人が関与しているため、変化が半ば当然のことと受け止められるからです。

人を育てる

卓越した協力的な文化を育むには、チームメンバ-1人ひとりを育てる必要があり、それがひいてはチームに力を与えることになります。リーダー 1人では変化を起こせません。

ISO 9001の真の力と効果は、PDSA/PDCAサイクルとともに、組織内の全員が自らの役割と責任を理解し、それを受け入れて初めて発揮されるものであり、これには学習する組織を作ることも含まれます。

協力的な環境は譲れない条件です。チームメンバーは、評価され、認められ、関与していると感じれば、積極的に貢献します。さまざまなタッチポイントから得られる洞察は、品質マネジメントプロセスの全体像を示します。

フィードバックは成長の礎です。組織が「Study」や「Check」のフェーズに進むにつれて、リーダーには建設的なフィードバックを提供する機会が与えられます。これは、改善点を特定するだけでなく、成果を称賛することで、チームが認められ、モチベーションが高まるためでもあります。

最後に、「Act」のフェーズは、先回りした変革マネジメント (change management) を象徴しています。リーダーは、前のフェーズで得られた洞察を、実行可能な戦略に確実に変換しなければなりません。効果的なコミュニケーションは、これらの戦略が理解され、受け入れられ、実行されることを保証します。

品質マネジメントにおける理論と実践の相乗効果

ISO9001とPDSA/PDCAの理論的枠組みには、本質的な相乗効果があります。しかし、本当の魔法は、これらがダイナミックなリーダーシップと結びついたときに起こります。そうなれば、サイクルは単なるステップではなくなり、継続的改善の文化を表すものになります。

リーダーシップとは、こうした理論的枠組みと実践的な実践との橋渡し役なのです。リーダーがまず自ら成長し、品質マネジメントの原則にコミットし、コラボレーションとフィードバックの環境を醸成するとき、サイクルは単なるステップから組織の規範と原則へと移行します。

まとめ

ISO9001、PDSA/PDCAに導かれた品質マネジメントの旅は、トランスフォーメーションをもたらす可能性があります。リーダーシップはこのトランスフォーメーションの岐路に立ち、これらの枠組みの力を引き出し、競争力を高めます。

品質マネジメントの真髄は、リーダーが自らを成長させ、他者の成長を促し、これらのサイクルの原則を組織のDNAにシームレスに組み込んだときに実現するのです。この相乗効果は、卓越性だけでなく、品質マネジメントにおける成功への持続可能な道筋をも約束します。

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018